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現場も週休2日へ,業界一丸で始まる取組み

業界全体が最優先で取り組む課題

人口減少により産業間の人材獲得競争が激しさを増している。建設業では今後10年以内に,高齢技能者を中心に約100万人の大量離職が発生すると見られ,労働力不足が深刻化する見通しだ。

政府は昨年3月28日に,「長時間労働の是正」と「非正規雇用の処遇改善」を二本柱とする「働き方改革実行計画」を打ち出した。これにより,現在残業時間上限規制の適用外となっている建設業は,改正労働基準法が成立すれば施行後5年間の猶予期間を経て,罰則付き上限規制の適用範囲となる(災害復旧・復興は例外)。

日建連では時を同じくして昨年3月に「週休2日推進本部」を設置。建設現場の土日閉所(休業)を原則とする週休2日制の実現に向けた検討に着手した。同12月には「週休2日実現行動計画」を策定し,会員企業に最優先の課題として取り組むことを呼びかけている。

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図版:建設投資,許可業者および就業者数の推移

建設投資,許可業者および就業者数の推移
*国土交通省HPより(2016年)
建設投資額は2010年度の約41兆円から2016年度に約52兆円まで持ち直したが,建設業就業者数は減少が続いており,今後高齢技術者の離職にともないこの動きはますます加速すると見られている

*1 投資額については2013年度まで実績,14・15年度は見込み,16年度は見通し
*2 許可業者数は各年度末の値

*3 就業者数は年平均。2011年は,被災3県(岩手・宮城・福島)を補完推計した値について2010年国勢調査結果を基準とする推計人口で遡及推計した値

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週休2日定着へのアクションプラン

「週休2日実現行動計画」は2017~2021年度を対象に,建設現場における週休2日取得を実現するためのガイドラインとなる。日建連ではまず,この行動計画の基本フレームを示し,2019年度末までに4週6閉所以上の実現を目指す。その過程では,2018年度に「毎月第2土曜一斉閉所運動」を,2019年度に「毎月第2・第4土曜一斉閉所運動」を実施。段階的に施策を進め,2020~2021年度に計画されている「全土日一斉閉所運動」で週休2日を確実に定着させるプランだ(適用困難事業所は例外)。これらの周知・準備期間を経て,今年度から計画に沿った具体的な取組みを始めた。また,日建連をはじめとする建設業関連13団体でも,「2019年度末4週6閉所以上」という中間目標に向けた「統一土曜閉所運動」を共催,今年度からスタートをきった。建設現場の週休2日が当たり前のものとして社会に認知されるよう,施工者が生産性向上の自助努力を重ねることを第一義とした,業界一丸の取組みである。

*特殊な事情により週休2日の導入が困難な事業所

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図版:日建連 週休2日実現行動計画の基本フレーム

技能者の処遇改善と生産性向上

「週休2日実現行動計画」では基本フレームに加え,9項目の「基本方針」を掲げている。そのなかには週休2日を定着させるため「技能者の総収入を減らさない」「生産性をより一層向上させる」など,処遇改善や生産性向上に関する項目も盛り込まれている。技能者の6割以上が日給制とされており,稼働日の減少にともなう収入減が週休2日実現の課題となるからだ。週休2日による年収減少分の補てんや安定的な収入のための日給制から月給制への雇用形態の転換を促す。

また,工期延伸をできる限り抑制するため,会員企業は生産性向上に向けて一層の努力を行うとともに,個々の企業では解決困難な取組みを積極的に推進していく。

図版:建設業における長時間労働の実態

建設業における長時間労働の実態
*『ACe』2018年2月号(日建連)より。
厚生労働省「毎月勤労統計調査」(事業規模30人以上の調査)をもとに図化
他産業の労働時間が減少傾向をたどるのに対し,建設業は年間2100時間前後で推移。全産業平均と比べ300時間超の長時間労働となっている

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2018年度の日建連の推進策

こうしたなか,日建連は4月27日,都内で開いた定時総会で建設業就業者の高齢化が顕著であることについて,「働き方改革と生産性革命を強力に推進し,担い手の世代交代に確固たる道筋をつける必要に迫られている」と表明。「週休2日の実現」と「建設キャリアアップシステムの普及・推進」を今年度の二大事業に位置づけ,業界の命運をかけて取り組む姿勢を示した。

「建設キャリアアップシステム」とは,国土交通省が構築する「技能者の資格,社会保険加入状況,現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する仕組み」のこと。技能者が能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備し,将来にわたって建設業の担い手を確保するのが目的だ。今秋運用が始まり,5年で全ての技能労働者(約330万人)の登録を目指している。

図版:高齢者の大量離職の見通し

高齢者の大量離職の見通し(中長期的な担い手確保の必要性)
*国土交通省HPより(2016年度)
総務省「労働力調査」をもとに国土交通省で算出

官民連携で週休2日を推進

昨年3月17日,第9回働き方改革実現会議で安倍総理は,「業界の担い手を確保するためにも(中略)施主の協力を含めて全政府的なバックアップが必要となりますので,関係大臣,産業界の全面的な協力をお願いしたい」と述べている。これにより,官民の連携もさらに積極化した。国交省では今年3月20日に「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し,「長時間労働の是正」「給与・社会保障」「生産性向上」の3つの分野で,推進策を打ち出した。建設業界内の自助努力に加えて官民発注者の協力も求めながら,今後は国と建設業界が一体となって具体的な取組みを進めることになる。また,今年度の国交省各地方整備局と日建連による意見交換会では,「週休2日実現に向けた環境整備」を中心に討議が行われた。

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図版:技術者・技能労働者の週休2日取得実績の割合

技術者・技能労働者の週休2日取得実績の割合
*国土交通省「週休2日に向けたアンケートの実施結果」(実施期間:2016年11月28日〜12月7日)をもとに図化
ゼネコン技術者の週休2日確保の割合は協力会社技術者,技能労働者の2倍超だが,全体として依然低い水準にあり,休日が少ない建設現場の実状が窺われる

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