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message 最終局面を迎えるにあたって

3号砂防堰堤の完成をもって,赤谷地区の対策工事はいよいよ最終局面を迎える。
発注者と施工者,それぞれの立場から現場を率いるおふたりにメッセージをいただいた。

赤谷での10年間を振り返って

関西支店
赤谷工事事務所
江口健治 所長

赤谷工事は繰り返す斜面再崩壊や豪雨による出水など,過去に類を見ないリスクを内包する難工事です。この10年間,不休で進めた緊急対策工事に始まり,度重なる台風被災を乗り越えて2019年には下流域までの抜本対策の重要な施設が完成し,現在,最後の砦となる3号砂防堰堤工事では砂防工事として初めて自動化施工を導入し,無事に砂防堰堤本体工を4月に構築できました。ご指導いただいております国土交通省の皆様や,過酷な条件下で本工事にご協力いただいている関係会社の皆様に改めて厚く御礼申し上げます。

社会資本整備などの物づくりに携わりたいという思いから建設業界を志し,これまで道路工事や河川工事などの様々な工事を担当してきましたが,これほど物づくりの難しさと責任を日々感じながら,安心・安全づくりに取り組んできた工事はありません。

赤谷工事では仕事を通じて社会へ貢献する機会を与えられ,我々建設業に携わる者としての社会的使命を改めて実感しております。

一方で,自分たちがつくり上げた構造物が目の前で被災するような,自然の脅威を目の当たりにするのも初めてでした。本当に心が痛む思いもしてきましたが,何よりも重大な二次災害を起こさず対策工事を進められていることは,関係の皆様方の努力の賜物であると心より感謝しております。

  • ・決心せよ! 今日一日の無災害
  • ・ひとつひとつ心を込めた物づくり

鹿島が推進するこのスローガンを,毎日工事関係者一同で誓いあい,近隣住民の方々や関係者の皆様のご期待に応えるべく残りの対策工事を進めてまいります。

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集合写真(2021年12月撮影)。前列右から5番目が押味会長,左から4番目が江口所長

砂防工事における全国初の取組み

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国土交通省近畿地方整備局
紀伊山系砂防事務所
山本悟司 事務所長

紀伊山系砂防事務所では,2011年の紀伊半島大水害を契機として,大規模斜面崩壊や河道閉塞箇所などの砂防工事を実施するとともに,近畿地方整備局 大規模土砂災害対策技術センターの一員として,紀伊山地をフィールドに,深層崩壊の発生メカニズムの解明,砂防に関する技術開発などに取り組んでいます。

奈良県五條市の南端に位置する赤谷地区は,奈良県十津川村栗平地区につぐ2番目に大規模な深層崩壊(崩壊土砂量約1,138万m3)が発生し,2011年の紀伊半島大水害以降も度々崩壊の拡大を繰り返すような非常に危険な現場です。赤谷地区の工事は,災害発生当初の河道閉塞の緊急対策以降,鹿島建設に担当していただいています。

これまでに,赤谷川と川原樋川の合流点より上流に向かって渓流保全工,1号砂防堰堤,2号砂防堰堤と整備を進めてきましたが,いよいよ崩壊地直下にある3号砂防堰堤を施工するにあたり,工事中に崩壊拡大による二次災害のおそれがあることから,立入規制区域を定めて工事を実施することとしました。全国の砂防工事の現場では,危険な場所が多く,二次災害のおそれがある場合には,無人化施工(遠隔操作)を積極的に採用してきました。しかし,無人化施工の場合は,有人施工と比べて,安全は確保できるものの,どうしても施工性が劣ってしまいます。そこで,砂防工事としては,全国初の取組みとして自動化施工を採用しました。自動化施工の実施にあたっては,工事の発注をECI方式で実施し,優先交渉権を得た鹿島建設が独自に開発した自動化施工技術を設計段階から反映させています。赤谷地区で実施した自動化施工は,事前に定めたプログラムに従って,コンクリートブロックの設置や砂防ソイルセメントの敷均し・締固めなどの作業を,無人の重機が自動で実施することができ,安全に配慮しつつ施工性を向上させることができました。

赤谷地区での工事は,非常に危険な現場での難工事でしたが,国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所と鹿島建設とが,発注者,施工者,それぞれの技術力を結集しました。官民連携により工事を進めたことで,無事に3号砂防堰堤本体工事までの基幹的な砂防堰堤の整備は完了し,最終段階に差しかかっています。引き続き,安全な施工かつ早期の完成に向けて取り組んでいくとともに,赤谷地区で実施した自動化施工技術がさらなる発展を遂げ,他の工事現場でも活用されることを期待しています。

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図版:現場全景(2022年4月撮影)

現場全景(2022年4月撮影)

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