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photo: Nobuo Iseki

第7回
(仮称)大宮桜木町1丁目計画

スマート工事事務所で働き方に変革を

鹿島スマート生産のモデル現場である「(仮称)大宮桜木町1丁目計画」には,
様々な機能を備えた“スマート工事事務所”が設置されている。
デジタルツールなどを活用し働き方の変革に挑み,“スマート”を追求する姿をレポートする。
あわせて,この現場をモデルに,全社業務変革を推進するスマートワークWGの取組みを紹介する。

【工事概要】

(仮称)大宮桜木町1丁目計画

  • 場所:さいたま市大宮区
  • 発注者:OK大宮開発合同会社
  • 設計:当社関東支店建築設計部
  • 用途:事務所
  • 規模:S造(CFT柱) 13F 延べ20,682m2
  • 工期:2021年10月~2023年5月

(関東支店施工)

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地図
図版:完成予想パース(北東側)

完成予想パース(北東側)

(仮称)大宮桜木町1丁目計画(さいたま市大宮区)は大宮駅に近い好立地におけるオフィス開発で,規模は地上13階,S造(CFT柱),延床面積2万682m2。外観は「空の翳(かげ)」をテーマに,黒の濃淡と明暗で上品かつ繊細な表現を可能とするグレースケールの配色が施される。大宮のシンボリックな存在となることが期待される西口再開発のリーディングプロジェクトだ。スマート生産のモデル現場であり,外部に向けたプロモーションも担う。

現場を統括する峰廣大雅所長は,「この現場の所長でありスマート生産のプロジェクト推進者として,生産性向上や働き方改革の実施に向けて多くの建築生産プロセスを変革し,次につなげたいと考えています。2024年の時間外労働時間の上限規制に向け,現場運営を合理的に進めることで生産性を上げ,労務を削減し“時短”を図ることが強く求められています。そのためには,社員の意識や行動を見直し,ITの活用などで具体的な方策を決めていくことが大事です」と話す。

図版:スマート工事事務所は8連大型モニタと遠隔会議システムを備え,各種会議や遠隔製品検査など柔軟に対応できる

スマート工事事務所は8連大型モニタと遠隔会議システムを備え,
各種会議や遠隔製品検査など柔軟に対応できる

photo: Nobuo Iseki

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図版:様々なパターンに変化する会議室

様々なパターンに変化する会議室

施策1ペーパレスへの挑戦

「会議資料の印刷は一切やめました」と峰廣所長は明言する。発注者との定例会議や協力会社との災害防止協議会などあらゆる会議資料をペーパレス化した。代替として,図面や書類データをPCやスマートデバイスで共有できるChex(チェクロス)を活用し,出席確認も「デジタル名簿」としてペーパレスを図っている。また,事務所内の書類回覧もワークフローの電子化を進めており,品質関係書類,施工計画書・要領書,請求書,図面などは,KSSフォルダ※1とPDFを活用している。「ペーパレス化の効果は顕著です。紙の出力と配布だけでかなりの時間を費やしていましたが,それがなくなり,修正が発生しても差し替える手間が省けるようになりました。電子回覧により,自席以外でも確認できるため,働く場所を選ばずに対応が可能です。まだペーパレス・電子回覧ができていない書類をどこまでデジタル化できるか試行錯誤しながら進めていきたいと思っています」(峰廣所長)。

※1 Kajima Smart Shelfの略で,現場の共有フォルダを活用して業務を見える化するもの

施策2ABWの導入とテレプレゼンスシステムの活用

スマート工事事務所として,どこでも仕事ができる環境づくりを目指している。いわゆる時間と場所を自由に選択できるABWの働き方だ。「時短のために,いかに移動時間を減らせるか。Teams会議の積極的な活用はもちろん,ここは事務所と現場が約400m離れているため,現場に直接出勤することも可能としています」。

工事事務所では,3連マルチプロジェクタで現場の情報を投影することにより遠隔モニタリングを可能とする。また,現場にいる社員と事務所をつなぐコミュニケーションツールとしてテレプレゼンスシステム「窓TM※2を取り入れた。あたかも同じ空間にいるかのような感覚で,まるで対面で会っているように会話ができる特長をもつ優れものだ。「本社デジタル推進室からの提案があり試験的に導入しました。率直に良いツールだと思います。実物大に近いこともあり,直接本人と話している感じです。コミュニケーションも取りやすいので現場との移動時間が削減され業務の時短に直結します」と峰廣所長は新ツールの評価を語る。

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敷地内に事務所を設置することができない現場や広大な敷地の現場,山岳地などの土木現場などでも効果が期待できるだろう。

※2 ソニーグループR&Dセンターが開発したシステム

図版:現場の施工管理状況やWEBカメラ映像,天候などを映す3連マルチプロジェクタ

現場の施工管理状況やWEBカメラ映像,天候などを映す3連マルチプロジェクタ

図版:テレプレゼンスシステム「窓」。目の前にいるような感覚で会話ができる,「音」「感覚」を追求したコミュニケーションツール

テレプレゼンスシステム「窓」。目の前にいるような感覚で会話ができる,
「音」「感覚」を追求したコミュニケーションツール

photo: Nobuo Iseki

図版:木の雰囲気を取り入れることで,気持ちを切り替えられるカフェコーナーOKカフェ

木の雰囲気を取り入れることで,
気持ちを切り替えられるカフェコーナー“OKカフェ”

photo: Nobuo Iseki

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Column

業務改革に向けたスマートワークWG

業務改善を実現するサイクル・仕組みによって鹿島グループの働き方改革を目指すべく“スマートワークWG”※3が本社で立ち上げられた。あらゆる産業でデジタル化による業務効率化が急速に進む中,現場や部署の優れた取組みを水平展開し,全社的に浸透させる。IT業務の省力化・効率化,現場の労働環境改革とペーパレス化の推進,業務自動化(RPA※4開発)の増進支援を中心に取り組んでいる。

※3 主な参画部署は経営企画部,デジタル推進室,グループ事業推進部,ITソリューション部,土木管理本部,建築管理本部

※4 RPAは,Robotic Process Automationの略で,ロボットにより仕事の一部を自動化させる仕組み。一定のルールに基づきデータを入力すると自動で遂行させることを可能とする

図版:左からデジタル推進室の國近京輔リーダー,中川康子担当

左からデジタル推進室の國近京輔リーダー,中川康子担当

当現場がテレプレゼンスシステム「窓」を導入したのは,WGからの提案で労働環境改善の一環だ。「大事なのは,提案をするだけではなく,それをフォローすること,具体的な成果を挙げ,現場の皆さんがデジタル化したいと思ってくれることが重要です。その気持ちから,私たちが目的としている,情報が『自動的に集まる→誰でも見える(可視化)→標準化される→展開される』というサイクルをつくるドライブになりたいと考えています」と語るのはデジタル推進室の國近京輔リーダー。

「今はこの現場で活用できそうなツールを提案し,既存のシステムをカスタマイズしてどう活用できるかを模索しています。各部門のハブとなり,現場のデジタル化を土建事務問わず,全国に水平展開できる活動を目指しています」とデジタル推進室の中川康子担当は意欲を示す。

スマートワークWGでは,随時RPAやAIOCR※5などデジタルツールを提案し,現場に寄り添ったフォローをすることで,現場の効率化につなげる施策を着実に進めている。

峰廣所長は「定期的に現場に来て話を聞いてくれています。うまく協調し新しい働き方を創出していきたいです」とスマートワークWGとの協働に期待を込める。

※5 画像データのテキスト部分を認識し,文字データに変換する光学文字認識機能OCR(Optical Character Reader)に加え,AIにディープラーニングさせることで,文字認識率を向上させたもの

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図版:現場にAIOCRの説明をするデジタル推進室

現場にAIOCRの説明をするデジタル推進室

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