生産性向上を担う
土木現場のICTツール開発
photo: 大村拓也
からさわ・あつし/長野県出身/建設工学専攻修了
土木管理本部 生産性推進部 生産情報グループ 課長代理
2005年入社。海外土木事業本部(当時)配属。2年間の国内研修制度により東京土木支店での設計・現場管理業務を経験したのちに,フィリピン・セブ南開削トンネル工事やアルジェリア東西高速道路での現場業務に従事。2015年から約2年間外環道市川中工事。2017年土木管理本部土木技術部に異動し,ICTを使った技術開発や生産性向上技術に関する情報収集と展開の業務に携わる。2018年4月より現職。
ちぎら・えいすけ/神奈川県出身/工学部土木工学科卒業
土木管理本部 生産性推進部 生産情報グループ 課長代理
2007年入社。東京土木支店の東村山浄水場JV工事や多摩平浄水所工事などの現場で躯体・仮設工事を担当。2010年土木部技術グループで約10現場の設計に関する現場支援業務や入札対応を実施。社内応援として土木設計本部都市グループで9ヵ月間,外環道国分工事の詳細設計業務に従事。同工事の現場業務を希望し,2012年赴任。主に一般道路の切廻し工事を担当する。2017年から土木管理本部土木技術部生産性向上グループ,2018年4月より現職。
みどりかわ・たつや/埼玉県出身/経営システム工学ソフトウェア工学研究室卒業
土木管理本部 生産性推進部 ICT・CIM推進室
2013年入社。ITソリューション部施工ITグループで,作業間連絡調整システム「e-現場調整Pro」の展開活動に従事。2014年事務システムグループで人事システム構築プロジェクトに参加し,マニュアル類の整理,システムテスト,説明会実施,稼働後の問合せ対応を担当する。2014年中部支店建築部建築工事管理グループで生産性向上に寄与する。ITツールやiPadなどの導入支援を経て,2018年4月より現職。
現場に即したICTツールの開発
「簡単・便利と現場の人に思ってもらえる実用的なツールを開発していきたい」。2018年4月,土木管理本部内に新設された生産性推進部生産情報グループの柄沢篤志課長代理は,国土交通省が推進する「i-Construction」への対応として土木現場の生産性向上に資する技術開発を行っている。国内外の現場に従事した柄沢さん自身の経験をもとに開発してきたICTツールとして,土留め支保工など電波障害となる支障物が多い場所でも1人で測量を行うことができる「ワンマン測量技術」,画像認識技術を使った「高度監視カメラでの安全監視システム」などがある。
「仕事とプライベート時間のメリハリを大事にするようにしています」と語る柄沢さん。いまは,週末に子どもと一緒に出かけて,楽しんでいる姿を見ることが一番の幸せという。
個人の経験値をデータベース化
現在開発中の「生産性指標管理システム」は,歩掛情報やコスト情報,創意工夫などを「工種ツリー」と呼ばれる階層構造にしたものに,作業要素を細かな単位で紐づけし,それをデータベース(DB)化して全社的に共有しようとするものだ。例えば,型枠を組む場合,何人,何日掛かるかといった歩掛は,これまで個人の経験値として蓄えられてきた。そういった歩掛やコスト,安全などに関する情報を収集し,「工種ツリー」に紐づけて要素化・数値化して展開するためのシステム開発,その情報収集の仕組みづくりを行っている。
その情報の収集・DB化を担当しているのが柄沢さんと同じ生産性推進部生産情報グループの千明英祐課長代理だ。データ収集対象の現場とのやりとりや情報の整理,実績収集分析・展開のためのシステム開発をメインの業務としている。千明さんは実績を収集するため,全国の現場を回った。「支店や工種によって考え方・捉え方が違うことを実感した」という。それをどうやってDBに落とし込むかが腕の見せどころだ。「できない理由を挙げるのではなく,実現可能にする方法を考えることが重要」だと意気込みを見せる。
「新入社員のころ,現場でとった歩掛は自分の財産になると先輩から言われました。その歩掛を具体的な数値でDBに蓄積し,個人ではなく“会社の財産”とすることができれば,若手社員が未経験工種の見積や施工計画・管理をする際の貴重な参考情報になるはず」と千明さんは語る。
週末は2歳の子どもとともに家族で過ごす時間を大事にしているという千明さん。写真は携わった外環道国分工事完成の見学会に家族で参加したときのもの。将来は現場所長を務め,孫に完成した構造物を自慢するのが夢。「Yes, and」の精神でスパイラルに意見を膨らませ,活気あるチームづくりを目指す。
ドローン・画像認識をキーワードに
数理系社員の緑川達也さんは,生産性推進部のICT・CIM推進室に所属している。「常に利用者をイメージしてシステムを開発することが重要となるので,現場に関してわからないことは柄沢さんや千明さんによく質問します」。
ICT・CIM推進室では,新しいシステムを開発・構築する際にITベンダーとの間に立って技術面での調整を行い,全社で活用するツールの展開役を担う。また,少しでも現場の生産性向上につながるよう,日進月歩で進化するICT技術の調査・発掘に余念がない。
現在は,「ドローンや画像認識をキーワードとして,関連した技術の開発・運用に従事している」という緑川さん。造成地のドローン測量や空撮した画像の解析による3D図面の作成技術,特定のものだけを検出する認識技術などの開発を行っている。「そうやって蓄積したデータをどのように活用していくかが重要です」と,これからの展開方法を検証中だ。
「知識は幅広くもつことで何かの拍子につながることがある」をモットーとする緑川さん。趣味としてドローンなどいろいろな資格取得にチャレンジしている。〈事業成功の秘訣20ヵ条〉の“仕事を道楽とせよ” を実践中。
「つなぐ」という役割
緑川さんは,実際の技術開発を行う外部ベンダーと土木系社員との橋渡し役も担う。「土木現場のニーズを把握したうえで,ベンダーの持つ最新技術を調査・収集し,マッチングを図っています。技術をつなぐことの大切さを実感できますね」。
ICTやCIMによる生産性の推進には,もうひとつの大きな任務があると柄沢さんは考えている。「大切なのはいろいろなところをつないでいく役割です。例えば,現場と管理部門間やセクション間などを生産性向上という横串でつないでいくことが重要です」。
千明さんは,施工の自動化が飛躍的に発展している土木現場での「土木現場の工場化」を日々感じている。「工種の幅が広い土木において,生産性向上という旗印のもと各部署で展開する技術開発のベクトルを同じ方向に導いていきます」。
生産性向上の追求は,土木のものづくりにかかわる人々と多様な技術をつないでいく役割を担っている。