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技術の鹿島 その飛躍の場

長い時間をかけて行われる研究技術開発。
実地で検証を繰り返し,改良されて新たな付加価値を生み出す。
この建替計画でも多くの新技術が採用されている。
技術はさらなる飛躍を遂げていく。

新技術の実証の場

当社は自社関連施設に新たな技術を積極的に採用している。実地検証することで技術をスパイラルアップできるからだ。本館では,研究棟で24件,実験棟と合わせると40件を超える新技術が採用されている。先進的で高い技術力を誇るものだけでなく,今後の進展が期待される開発途上の技術も積極的に採用。データ収集を行い,「実験・実証の場」としてさらなる検証を続けている。「技術のライブ・ショーケース」の役割も担い,来訪者が技術を体感できるよう見学ルートにも選定されている。

プロジェクトチームで「技術の鹿島」を指揮した技術研究所建築環境グループ三浦克弘上席研究員はいう。「研究棟はオフィスですから居住環境に関する新技術を多く採用しています。評価・検証を繰り返して次の技術開発につなげていきます」。

写真:三浦克弘上席研究員

三浦克弘上席研究員

居住環境が知識創造をもたらす

近年の環境配慮を背景に,当社が開発する居住環境に関する技術には,省エネ性能を考慮した技術が多い。特にエネルギー消費量の多い照明・空調設備の省エネ化は欠かせない課題だ。「省エネ効率を重視しながらも,居住性低下により知識創造を損なわないよう,新たな視点で開発に取り組んでいます」と三浦上席研究員。空調では,平面的な気流が平滑な面に付着する特性“コアンダ効果”を利用し,フラットスラブの天井面に吹出し気流を付着させるダクトレス空調を開発した。ダクトレスにすることで搬送動力を大幅に削減し,省エネを実現する。室温と温度差がある気流は室内全体を空調するのが難しい。コアンダ効果が持続するように吹出し口にフラップをつけるなどの工夫を施した。技術検証では,煙による可視化と風速分布・温度分布測定を実施し,当初予定の性能が確認できている。今後,適切な運転制御方法を検討していく。

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照明技術では,明るさ感の評価に着目した。従来の照度設計ではなく,輝度シミュレーションと独自の明るさ感評価に基づく設計手法を採用。仰俯角0°〜20°の範囲がオフィスの明るさ感に関係しているという研究結果に基づき,照度を抑えながら,間接照明で明るさ感を演出する方式を採用した。結果,他オフィスと同程度の明るさ感でありながら,一般的なオフィス照明に比べて電力を約3割低減させている。

図:基準階オフィス空調システムのイメージ図

基準階オフィス空調システムのイメージ図

図:基準階オフィス照明システムのイメージ図

基準階オフィス照明システムのイメージ図

写真:明るさ感の実測による検証結果。間接照明を使用した場合,一般オフィスと同程度の明るさ感を得ることができる

明るさ感の実測による検証結果。間接照明を使用した場合,一般オフィスと同程度の明るさ感を得ることができる

写真:オフィス写真

写真:ダクトレス空調の吹出し口

ダクトレス空調の吹出し口

図:風速分布測定例。コアンダ効果で,吹出し気流が天井に付着する

風速分布測定例。コアンダ効果で,吹出し気流が天井に付着する

写真:煙をつかった竣工後の可視化実験の様子

煙をつかった竣工後の可視化実験の様子

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再生骨材コンクリート

再生骨材コンクリートは,解体したコンクリートから取り出した骨材をコンクリートに再利用する技術。研究棟では,中品質再生細骨材を実用化し,物件限定の大臣認定を取得したうえで床や柱,壁に採用した。地上部の構造部材に中品質再生細骨材コンクリートが使用されるのは国内初となる。

再生骨材コンクリート自体は,1970年代から各社で開発が進められている。しかし,認定制度が整備されておらず,2005年にJIS規格が制定されるまで研究は停滞していた。解体したコンクリートを受け入れる処理場がひっ迫している現在,新技術には需要が見込まれている。

施工では,建替えで解体した旧棟のコンクリートガラから独自に開発した処理技術を使用して骨材を採取した。長年使用された建築物には愛着や誇りといった思いがこもっている場合も多い。再生骨材の技術は,建物に対する思いを受け継ぐ技術でもある。今回の採用実績で一般認定を取得し,技術の普及を目指していく。

図:再生骨材製造フロー図

再生骨材製造フロー図

研究棟に採用された技術

  • リアルタイム防災システム
  • 屋外環境評価技術
  • 行動計測・解析に基づく
    オフィス評価技術
  • 光ファイバーを用いた
    ひずみ計測技術
  • 大空間の温熱環境評価技術
  • 自然換気計画技術
  • 入居前後室内環境評価技術
  • 空間の明るさ感評価技術
  • 電力消費量モニタリングシステム
  • フォルト自動検知BEMS
  • 音環境評価技術
  • 防振ゴム浮床工法
  • 有害なひび割れがないRC躯体
  • 既存建物から排出される
    骨材・微粉の再利用
  • 建物情報モデリングによる
    建築生産手法
  • コンクリート躯体品質証明技術
  • マイクロブラスティングによる
    地下躯体解体工法
  • 鉄筋腐食計測技術
  • 既存建物の振動・解体実験
  • 地震・微振動観測による
    建物振動性状の観測
  • エコロジカルネットワーク評価技術
  • エバークールガーデン
  • レインガーデン
  • 太陽光発電システム

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