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Chapter3 社会に貢献する特許

特許法の第一条には,「この法律は,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,
もつて産業の発達に寄与することを目的とする」と謳われている。特許制度は,独占的な権利を得て,
優位性を確保するだけではなく,研究開発や技術開発を促進し,産業の発展へと導くことが本来の目的である。
市場拡大や産業振興に寄与し,社会へ貢献している当社の特許を紹介する。

安全・安心な社会を実現する特許

現在,当社などが保有する特許約2,000件のうち当社が独占する必要のないものについては検討のうえ,第三者への実施許諾に応じている。

下記の表に紹介した技術は,他社にも多く利用されている代表的な特許だ。

内容を見ていくと,耐震補強技術,地盤改良技術など安全・安心な社会を実現するための技術が多い。

他社に多く利用されている特許

表:他社に多く利用されている特許

市場を広げた地盤改良技術

この中の一つ「SUPERJET工法(登録商標:3215324)」は,地盤改良などの市場を成長させた好事例である。グループ会社のケミカルグラウトと共同開発した技術で,高速で噴出させた硬化剤を用い地下に最大直径5mの超大型杭を構築して,軟弱地盤の改良を効率的に行う。7社に実施許諾を行っており,これまでの実績は2,000万m3。地盤改良などの市場全体に大きく貢献してきた。この技術をベースに,様々な工法を開発。土壌汚染対策技術などにも応用し,新たな市場への対応も行っている。

画像:「SUPERJET工法」施工イメージ

「SUPERJET工法」施工イメージ

写真:「SUPERJET工法」は高速で噴出させた硬化剤を用い地下に最大直径5mの超大型杭を構築する

「SUPERJET工法」は高速で噴出させた硬化剤を用い地下に最大直径5mの超大型杭を構築する

生き物を護る特許から減災特許へ

「KANIパネル(登録商標:5276644)」は,カニなどが生息可能なコンクリート製護岸である。ざらざら感のある表面と深い目地により,生物が棲めるコンクリートを開発したことが特許のポイントとなった。当社は,この特許を第三者も使用できる仕組みを構築し,これまで約8,500m2(当社施工は約200m2)の護岸に適用されている。海域における食物連鎖の要であるカニが,従来の平滑なコンクリート護岸を登ることができず,生息数が減っていたのが開発のきっかけだった。海の食物連鎖を護る特許といえる。

その後,「KANIパネル」は人命救助にも役立つ技術であることに気付く。護岸から人が転落した時,深い目地に手足をかけて人も登ることができるからだ。護岸や陸地の法面を「KANIパネル」で整備すれば,津波,高潮,洪水が発生した時,これまで登れなかった場所が避難ルートとして活かせる。しかし,今すぐに備えるには費用と時間が必要なのは明らかだった。

写真:「KANIパネル」はカニなどが生息可能なコンクリート製護岸

「KANIパネル」はカニなどが生息可能なコンクリート製護岸。第三者も使用できる仕組みを構築している

ここから新たな発明が生まれた。「MR-NET(救助ネット)」というプラスチック製の素線ロープを亀甲状に編んだ救助設備である。当社と建設土木資材の販売を行うフタバコーケンが共同で現在特許出願中である。縄ハシゴよりも登りやすく,プラスチック製なので錆びることがないため,簡易的に法面や護岸に常設しておくことができる。生き物を護る特許から減災特許へ――これからの展開が期待される。

ここで紹介した特許は,「産業の発達に寄与する」という特許制度の目的に合った事例であり,「社業の発展を通じて社会に貢献する」という当社の経営理念を体現しているといえるだろう。

写真:MR-NET(特許出願中)

MR-NET(特許出願中)

写真:護岸での実証実験

護岸での実証実験。マグロの養殖用の網を応用したもので耐久性も高い

発明に対する補償金

特許法(第35条)「職務発明」の規定に基づき,社員の発明に対して補償金が支給される仕組みがある。発明者には,特許の出願・登録時,社内で特許権を活用した時,実施権を許諾し実施料収入を得た時などに補償金が支払われる。

ロゴを持つ実験施設「W-DECKER」

ロゴ:W-DECKER

当社は,高性能3次元振動台を技術研究所に保有している。長周期地震動によるゆっくりと長く続く大きな振幅の揺れを再現できる。「W-DECKER」と名付けられた本振動台は,ロゴ+文字の組合せで商標権を取得。ロゴの使用により,機能をより視覚的に訴えるものとした。「W」は特徴的な構造である2層構造を意味するdouble-deckerの「double」と,波形(地震波)を意味するwaveの頭文字の「w」をイメージしている。

写真:W-DECKER

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