知的財産に関して企業間の係争が多く報道され,企業活動に大きな影響を与えている。
これは新聞やテレビだけの世界ではなく,当社も特許無効審判,特許侵害裁判などを行っており,
身近なニュースとして認識する必要がある。当社では,知的財産に関するリスク管理を強化するとともに,
法令遵守のための知的財産教育を充実させている。
知的財産におけるコンプライアンスの取組みを紹介する。
特許ウオッチング
建設業に関連する企業が取得する特許は,年間1,000件を超える。そのため,常に新しい他社の特許内容を確認し,当社にとって脅威となる可能性のある特許については,必要な対策を講じている。また,当社が研究開発や技術開発を行う場合には,事前に他社の類似特許を調査し,権利侵害の予防措置をとっている。
これらは「特許ウオッチング」と呼ばれる活動で,年々高まるリスクに対応するため,関連部門・部署との連携強化,調査内容のシステム化・データベース化などが進んでいる。
海外調達への対応
国内の建設現場では,資機材を海外から調達するケースが,年々増加傾向にある。その際,国内企業が持つ知的財産権を侵害する資機材を輸入すると,知的財産侵害物品として扱われ,資機材の没収,罰金など厳しい処罰が行われる。
当社では,海外調達を行う場合には,特許係争問題の有無,著名商標(ブランド)と類似する名称が付いていないかなどを事前に確認。必要に応じて国内企業が保有する特許権などを調査し,海外調達における知的財産上のリスク管理を厳しく行っている。
知的財産教育
社員・グループ社員に対する知的財産教育が,年間十数回行われている。新入社員からマネジメント層までを対象とし,知的財産の基礎知識,リスク管理,海外での特許取得方法など幅広い内容となっている。2日間にわたり集中的に知的財産を学ぶ集合研修では,講義だけではなく実際の裁判例をもとにしたグループディスカッションを行い,より実践的な研修内容となっている。
8月23日には,グループ会社を対象として,知的財産部の顧問弁護士を講師に迎え著作権法の研修会が行われた。これまで当社社員を対象に著作権研修を開催してきたが,グループ会社社員にも著作権に関する意識向上が必要と考え実施。著作権法の基礎知識や著作権訴訟の他社事例から業務上注意しなければいけない点などについて講義が行われた。
安全帯の使用状況を遠くからでも確認できる「蛍光ロープカバー」という商品。
実は当社が意匠権を持っている(意匠番号:1103155)。安全帯に装着する形状が,意匠法上の「意匠」に該当し,工業的な生産方法で量産でき,新規性があることから意匠権が認められた。 これまで約23万個販売されている。
この写真は,トルコで見つけたレンタカーステーションの看板である。当社が関係している訳ではない。
当社事業の妨げになっていないこと,先方に悪意がないことを確認し,裁判所への申立てなどは行っていないが,世界中で知的財産のリスク管理が必要となっていることを認識しなければならない。