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「模擬トンネル」レポート

トンネル現場における自動化技術の開発を担う3人の社員に
「模擬トンネル」を案内してもらいながら,今後の技術開発の方向性について聞いた。

写真:左から,機械部自動化施工推進室 岩野圭太課長,土木管理本部土木工務部トンネルグループ 手塚康成担当部長,機械部自動化施工推進室 牟田口茂次長

左から,機械部自動化施工推進室 岩野圭太課長,土木管理本部土木工務部トンネルグループ 手塚康成担当部長,機械部自動化施工推進室 牟田口茂次長

「模擬トンネル」完成へ

「模擬トンネル」は,静岡県富士市の「日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所」の中にある。蒲鉾のような形状のスチール製の構造物で,長さ約55m,幅約11m,高さ約8mの規模。今後,盛土で覆われ,11月中旬から様々な自動化技術の実証・検証実験を行う計画だ。

「山岳トンネルの施工は,熟練作業員5名程度がチームとなり,全ステップの作業を進めています。ある意味で,省力化は進んでいるといっていいでしょう。しかし,高齢化により人員確保が難しくなっていることや,作業員の安全性を考えると,将来に向けて施工を自動化することは私たちの責務だと思います」と説明するのは,トンネル現場の自動化を牽引する土木管理本部土木工務部トンネルグループの手塚康成担当部長だ。これまでも現場では,発破用の火薬を詰める孔をあけるドリルジャンボなど多くの機械が使われてきたが,最終的には作業員の手作業や熟練度に依存する部分が多いという。また,自然を相手にする工事であり,切羽崩落リスクを低減することはできてもゼロにすることはできないため,切羽に人が近づかなくても施工できる自動化が,安全性の観点からも必要となる。そのための技術を開発し,検証していく場が「模擬トンネル」だ。

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写真:模擬トンネルの内部

模擬トンネルの内部。様々な自動化技術を検証する場となる

機械に熟練労働者の技を再現させる

自動化や省人化に向けた動きは既に始まっている。近年では,4ブームフルオートコンピュータジャンボの導入により,実現場で穿孔作業を専任オペレータ1名で行うことを可能にした。「トンネル施工の自動化は,穿孔だけでなく,全てのステップで実現することで,その効果は数段あがります」と,機械部自動化施工推進室の牟田口茂次長。この最新鋭のコンピュータジャンボの導入に携わり,国内外のトンネル現場で機械調達や仮設計画,維持管理などの幅広い業務経験を持つ機械・電気のスペシャリストである。汎用機械をコンピュータ制御することと,自動化は次元が違うと話す。それは,機械に熟練労働者の技を再現させなければならないからだ。自動化が可能な機械かを常に念頭において,グローバルな視点で機械を選定し,開発を行っている。「真の自動化を達成するには,機械の開発に加えて,手作業を丹念に分析して,ワークフローにしていく必要があります」(牟田口次長)。

写真:今後の実験内容について打ち合わせを進めている

今後の実験内容について打ち合わせを進めている

現場が使いたいと思う技術を生み出す

ワークフローの構築は,緻密な作業となる。これを担うのが,同室の岩野圭太課長だ。技術研究所やトンネル現場で実績を積み上げ,自動化の屋台骨となる業務を任されている。「熟練作業員が培ってきた技や勘こそ,私たちがノウハウとして蓄積しなくてはなりません。ただ,最近は熟練作業員のリタイアで,そうしたものが少しずつ失われていると感じています。自らもベストな解,つまり従来の方法にとらわれず新たな作業フローを見いだす意気込みで取り組んでいきます。その解をもとに,牟田口さんに機械を動かしてもらえば自動化は夢ではありません」。

牟田口次長と岩野課長が,最大の課題と考えているのが,コンクリートの吹付け作業だ。ノズルマンといわれる作業員の吹付け作業に画一化されたノウハウがなく定式化が難しいという。ノズルの動かし方やスピード,吹き出す圧力,材料の配合,外気温など,多様な組合せで試行錯誤が必要となり,施工中の現場での実験や実証は難しい。「このフィールド(模擬トンネル)で,新たな技術やノウハウを生みだし,現場が使いたいというところまで早くもっていきたい」と,2人は声を揃えた。

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新たな挑戦の舞台

「発破掘削は,発破のかけ方で生産性の6割が決まるといっても過言ではありません。発破毎に切羽の状況が違うのも事実ですが,コンピュータジャンボと様々な技術を組み合わせて,実現場で自動化へ向けたノウハウの蓄積に注力していきます。しかし,他のステップを無視しては,私たちが目指す1人の作業員でのトンネル掘削(ワンマンオペレーション)へ到達することはできません。だから模擬トンネルがあるのです」(手塚担当部長)。3人は新たな挑戦の舞台に立つ。

写真:施工が進む模擬トンネル外観

施工が進む模擬トンネル外観

未来のトンネル現場 〜トンネル現場の自動化・ワンマンオペレーション化〜
機械主体の省人かつ安全なトンネル掘削を目指す3人の技術者は,その先に遠隔地から複数のトンネル現場を管理する未来を見据えている。

図版:未来のトンネル現場 〜トンネル現場の自動化・ワンマンオペレーション化〜

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模擬トンネルを造った所長からのエール 横浜支店模擬トンネル工事事務所 村松保雄 所長

写真:村松保雄 所長

これまで,機械装置の基礎などの現場を担当することが多かったですね。もちろんトンネル掘削の実験フィールドを造ったことなどありませんでした。現場では,天候に恵まれないことや,地域性から資機材の納入に苦労しましたが,ようやく完成に目処がつきほっとしています。私の時代は,人力作業ばかりだったので,現場の自動化と聞いて,とても高いハードルに挑むなと感じました。しかし,時代に望まれることです。是非,頑張って目標を達成してください。期待しています。

photo:佐野歩海

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