忍び寄る生き物異変
地球の生物は,40億年に近い時の流れの中で,環境との相互作用を繰り返しながら種分化を進め,豊かな多様性を実現させた。現在地球上には,発見されたものだけで約175万種,未知の種を含めると約3,000万の生物が生息するといわれる。こうした多種多様な生物が生息し,多様な生態系が存在することを生物多様性という。
いま,その生物多様性の損失が懸念されている。約4万種もの生物が毎年絶滅しているというのだ。世界各地を襲う豪雨や猛暑,北極海での氷の減少やサンゴ礁の消失…。忍び寄る生き物異変や温暖化の足音を,連日のように新聞やテレビは伝えている。
「いのちの共生を,未来へ」。未来の世代のために,多様な生命の豊かさを残していこう。そんなメッセージを込めたCOP10のスローガンである。
生物多様性保全活動の先駆け
生物多様性への社会の関心が高まり始めた2005年,当社はいち早く企業行動指針を制定し,独自の技術開発などで,生態系と建設事業の共生に向けた活動を推進してきた。社会と自然環境との接点が事業フィールドの建設業にとって,事業の円滑な推進に生態系の保持が不可欠であり,社会に対する責務との認識からだった。
2008年には,企業ネットワーク「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」の設立メンバーに加わり,同年ドイツで開催されたCOP9では,「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」のリーダーシップ宣言に署名した。早くからの当社の積極的な取組みは,「第18回地球環境大賞」環境大臣賞や「第1回生物多様性日本アワード」優秀賞など,数多くの賞を受けている。
新しいビジネスモデル
当社は昨年,従来の生態系保全行動指針を見直し,生物多様性の保全と,自然の恵みを持続的に利用・享受できる社会の実現に貢献することを目標に,全社的な取組みをさらに充実させた。
新たな行動指針では,建設資材など調達業務における生物多様性への配慮を徹底するとともに,開発が進む都市での自然生態系の保全に,最先端の解析ツールを用いたエコロジカルネットワーク評価技術などを活用。自然の恵みを享受できる「生物多様性都市」を提案した。
当社環境本部地球環境室の山田順之次長は,「生物多様性保全と事業活動を両立させることで,“まちづくり”という建設事業につなげたい」と話す。生物多様性への取組みをコストとしてではなく,必要な投資と認識して,建設業ならではの知恵と技術を生かした取組みをしたいというのである。「新しいビジネスモデルの確立ですね」と山田次長。事業コンペやPFI,総合評価方式の提案などで,生物多様性の保全が評価される例も増えているという。
生物多様性に対する社会の動向と鹿島の取組み
社会動向 | 鹿島の取組み | |
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1990 |
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1992 |
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1993 |
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1995 |
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1997 |
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1998 |
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2000 |
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2002 |
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2003 |
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2004 |
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2005 |
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2006 |
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2007 |
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2008 |
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2009 |
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2010 |
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