ホーム > KAJIMAダイジェスト > October 2011:特集「ZEB実現を目指して」 > Phase1 エコ・デザイン

KAJIMAダイジェスト

Phase1 エコ・デザイン

建築デザインの観点から,エネルギー消費の原因を見直し省エネへと導く。空調や照明等の設備面での工夫によって,エネルギーの効率化を図る。これが「エコ・デザイン」からのZEBへのアプローチだ。

2007年に完成した「鹿島赤坂別館」は,CO2排出量35%削減が可能な,当社のZEBの基点となるビルである。

写真:『アウトフレーム構造』により鹿島スタイルと環境配慮設計を実現した鹿島赤坂別館

『アウトフレーム構造』により鹿島スタイルと環境配慮設計を実現した鹿島赤坂別館

写真:当社のシンボルデザインを確立した旧鹿島本社ビル

当社のシンボルデザインを確立した旧鹿島本社ビル

写真:彫の深い格子・庇による日射遮蔽と風を取り込む開口部

彫の深い格子・庇による日射遮蔽と風を取り込む開口部

“鹿島のDNA”が生んだファサードデザイン技術

白く深いグリッドと濃灰色の窓ガラスで構成されたファサード――。旧鹿島本社ビル,旧鹿島赤坂別館によって確立された当社のシンボルデザインは,新鹿島赤坂別館にも継承された。「鹿島スタイルの踏襲と環境配慮設計の両立という課題が,新たな省エネ技術を生みました」。建築デザインを担当した建築設計本部・田名網雅人本部次長は経緯を話す。

ファサードデザインによる創意工夫で,窓や外壁の断熱・日射遮蔽性能を向上させ,冷暖房負荷の削減,温熱環境の改善,昼光利用による照明負荷の低減を図ることができる。鹿島赤坂別館には,ファサードデザインが構造体をなす『アウトフレーム構造』を採用している。張り出した白い組柱と梁は庇(ひさし)効果をもたらし,窓周りの温熱環境を向上できた。さらに,窓に中庇(ライトシェルフ)を設けることで,直射日光の遮蔽,窓の上部からは反射光を採り入れ,日射制御と昼光利用を実現している。

濃灰色の窓ガラスにも工夫がある。環境配慮設計に欠かせないアイテムとされるLow-eガラスの使用は,透明感を得意とするため有色ガラスには向かない。そこで,グレーの熱線吸収ガラスとLow-eガラスを重ね合わせて1枚のガラスにして使用するという発想を試みた結果,新たな超高性能Low-eガラスが誕生した。

「当社は10年以上前から環境配慮設計技術の開発に取り組んできました。多様なファサードデザインに対して,独自のツール『ファサードエンジニアリング』で温熱環境と省エネ性能を科学的に検証し,経済性にも優れた最適システムを提案できます。建築の個性を大切にした環境配慮設計がZEBの大前提です」。

図:『ファサードエンジニアリング』による科学的アプローチで,様々なファサードデザインの中から,省エネ性能・温熱環境・経済性に優れたシステムを提案できる

『ファサードエンジニアリング』による科学的アプローチで,様々なファサードデザインの中から,省エネ性能・温熱環境・経済性に優れたシステムを提案できる

写真:建築設計本部・田名網雅人本部次長

建築設計本部・
田名網雅人本部次長

写真:「AKASAKA K-TOWER」(2012年1月竣工予定)には,より進化した『アウトフレーム構造』を採用。4本の組柱が庇効果をさらに向上させる

「AKASAKA K-TOWER」(2012年1月竣工予定)には,より進化した『アウトフレーム構造』を採用。4本の組柱が庇効果をさらに向上させる

改ページ

自然を味方に――風の道をつくる

鹿島赤坂別館には“風の道”がある。窓サッシの一部に外気取入れ口を組み込み,屋外の風をオフィス~廊下~階段室を経由し屋上のガラリから排気させて,自然通風・自然換気を行うという仕組みだ。中間期の心地いい自然の風を建物内に取り込むことで,空調負荷を低減させる。

「南東側の窓に開口部を設けました。東京は北北西の風が一番多く吹くのを知っていますか。この風を利用しようと考えたのです。建築は一品生産ですから,建物のボリューム,周辺環境から,その建築に最適な自然換気の手法を検討しています」(田名網本部次長)。

図:窓から外気を取り入れ,階段室を活かした“チムニー効果”により,自然換気・自然通風を行う

窓から外気を取り入れ,階段室を活かした“チムニー効果”により,自然換気・自然通風を行う

人の居る場所を快適に――タスク&アンビエントという考え方

オフィスにおけるエネルギー消費の6割以上を占める空調・照明設備の省エネ化は,大きな課題のひとつだ。当社のZEBの設備設計をプロデュースする建築設計本部・平岡雅哉統括グループリーダーは「空間全体に均等な空調・照明を行うという考え方から,人の居るところだけを快適にする“タスク(部分)&アンビエント(周囲)”の考え方に転換しました。これが鹿島のZEBの基本思想です」と説明する。

鹿島赤坂別館に導入された「タスク&アンビエント空調システム」は,外気負荷や照明発熱等の最小限の負荷分を処理して全体を穏やかに空調する〈アンビエント空調機〉と,モジュール毎に発生するOA機器等の熱や人体発熱を処理する〈タスク空調機〉を組み合わせて空調を行う。照明も同様に,自然採光と併用して室内の雰囲気をつくる全体照明と,手元作業用の部分照明の組合せになっている。

省エネ効果を発揮する鍵は,システムを最適に稼働させる3つのセンサ(人感・照度・温度)だ。在席の有無を検知し,在席者のモジュールのみ光環境・温熱環境を検知することで,不在エリアの無駄なエネルギー消費を抑える。

写真:建築設計本部設備設計統括グループ・平岡雅哉統括グループリーダー

建築設計本部
設備設計統括グループ・
平岡雅哉統括
グループリーダー

さらに,ビル管理システム(BA)と情報システム(OA)をIPで統合した当社独自の「B・OA(ボア)ネットシステム」に在室者とビル設備をつなぐアプリケーションを付加することで,個人のパソコンから温度変更や照明点滅・ブラインド操作が可能になり,ワーカーのオンデマンドなオフィス環境も実現することができた。

「タスク空調機能をさらに高める『ユニバーサルコンフォート』と名付けた吹出し口は,ソフトな気流感を得られるモードと,気流を感じさせないモードを自由に切り替えられます。節電対策にも有効で,気流感があることで涼しさを得られることがアンケートで確認されました。快適性と省エネの両立はZEBの大きな課題。科学的検証と生の声は,開発担当者にとって信頼ある技術を確立するための大切なツールのひとつです」。

改ページ

鹿島赤坂別館では竣工以来,エネルギー消費量の計測,各種技術の稼働状況,従業員アンケート等を継続的に実施し,そのデータを分析して研究開発へとフィードバックしている。ここに導入された省エネ技術の数々は,新たな実証実験の場となる自社関連ビルに,進化・発展させたかたちで導入されている。10月に供用開始の「鹿島技術研究所 本館 研究棟」は,CO2排出量-50%が達成可能な建物となった。

図:『タスク&アンビエント空調システム』イメージ

『タスク&アンビエント空調システム』イメージ

写真:フリーアドレス・ハイブリッドセンサ

フリーアドレス・ハイブリッドセンサ
明るさセンサは,室内の照度を検知し,自動的に昼光制御と照度制御を行う。人感センサは,人の在席を検知し,照明とタスク空調を停止する

写真:フリーアドレス・ワイヤレスリモートサーモ

フリーアドレス・ワイヤレスリモートサーモ
在席者近傍の温度を検知し,フリーアドレス・ハイブリッドセンサに情報を送信し,タスク空調機を最適制御する

図:『タスク&アンビエント照明システム』イメージ

『タスク&アンビエント照明システム』イメージ

図:気流の切替えが自由な『ユニバーサルコンフォート』イメージ

気流の切替えが自由な『ユニバーサルコンフォート』イメージ

改ページ

Spiral UP-1 アンビエント空調設備のダクトレス化――コアンダ空調システム

「鹿島技術研究所 本館 研究棟」に導入された新技術『コアンダ空調システム』は,流体が平滑な面に付着する特性“コアンダ効果”を利用して,フラットスラブに空調空気を付着させて搬送する方式で, アンビエント空調に採用。天井裏等の空調ダクトが不要となり,室内高さの確保,送風動力の削減,低コスト化を図ることができる。

図:基準階オフィス空調システムイメージ図

基準階オフィス空調システムイメージ図

写真:鹿島技術研究所 本館 研究棟のオフィス空間。中央天井面に添って空気が流れ部屋全体を空調する

鹿島技術研究所 本館 研究棟のオフィス空間。中央天井面に添って空気が流れ部屋全体を空調する

ホーム > KAJIMAダイジェスト > October 2011:特集「ZEB実現を目指して」 > Phase1 エコ・デザイン

ページのトップへ戻る

ページの先頭へ