エネルギー消費を削減する取組みだけでは,ZEBは達成できない。CO2を発生しないエネルギーを“創る”取組みも,ZEBのもうひとつの要素だ。
創エネと蓄エネ
ビル側でエネルギーを”創る”技術の代表格は,太陽の光を直接電気に変換する太陽光発電だ。当社は,太陽電池パネルと建物とを一体化した建築デザインや,既存建物に設置する場合の架台・基礎の簡素化,さらには軟弱地盤への大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設する技術等,ゼネコンならではの技術開発に力をいれる。
ZEBでの風力発電は,施設のシンボルとして建築デザインとセットにした小型風力が主流となるだろう。この他にも,冷暖房等の熱源に,様々な未利用熱をミックスして利用する技術も誕生している。環境本部・芋生誠専任役は,「太陽光や風力で創る電力だけでなく,地中熱の活用,生ごみや紙等をメタン発酵して得られるバイオガスもZEBに貢献できる」と,創エネの可能性を話す。
さらに,ZEBの実現にはエネルギーを“蓄える”技術も重要である。鹿島KIビルのZEB化改修では,最新のリチウムイオンバッテリーを使って,太陽光発電の充放電制御システムを構築し,実証実験を行う。建物の電力の使われ方を熟知したものならではの,マイクログリッドの登場も目前だ。加えて,太陽光で発電した電気を交流に変換せずに直接使用が可能な直流配電についても開発を進めており,実プロジェクトに適用しながらノウハウを蓄積している。
“点”から“面”へのステップアップ
一つの建物の域を越えてエネルギーを面的に融通し合う分散型エネルギーネットワークや,太陽光や風力等の不安定なエネルギーをIT制御して,スマートメーターや通信技術を利用しながら有効に活用するスマートコミュニティ関連の技術についても,総務省による愛媛県松山市での実証試験をはじめノウハウの蓄積が進んでいる。「実証試験等で蓄積したノウハウで,震災以降の急速なエネルギーの面的取組みの流れにいち早く対応し,実プロジェクトへ展開していきたいです」。
『ReHP®(Renewable Energy Heat Pump)』は,太陽熱,空気熱,地中熱,水熱等,建物周囲にある様々な再生可能エネルギーを効率よく組み合わせて,冷暖房や給湯の熱源として利用するヒートポンプシステム。再生可能エネルギーによる各種熱源ユニットと空調・給湯用のヒートポンプを,水を熱媒体としたループでつなぎ,熱源水を循環利用する仕組みだ。
ReHPを構成する主な熱源ユニットに『ソルエアヒートポンプシステム®(SAHP®)』と地中熱交換器がある。通常の太陽熱利用は温熱としての利用しかできないのに対し, SAHPは夜間の放射冷却や集放熱パネルの背後に設けた放熱用の羽根で冷熱にも用いることができる。地中熱の利用では,建物の基礎杭を利用する低コストな方式,建物の周辺に設置する大容量な二重管方式等,立地条件にあった工法を選定できる。
当システムを初導入した鹿島技術研究所 本館実験棟では,太陽熱・空気熱・地中熱をベストミックスさせて利用している。