オフィスである以上,知的生産性を高める環境であることは最優先課題。省エネ建築であっても,労働意欲を低下させるような空間であっては意味がない。ワークスタイルを見直し,意識改革を図り,オフィスのあり方を再構築していく中で,快適環境と省エネを実現させようというのが,「エコ・ワークスタイル」の取組みだ。
“ワーカーの生態”をひもとく
「生態学に近い視点で,ワークスタイルを分析しています。自然の恵みと人の活動との関係を見つめ直し,おのずと欲する場所が気持ちよく働ける空間である。そんなワークスペースを創りたい」と話すのは,建築設計本部の田中重良グループリーダー。ワーカーの行動を調査・分析し,設計のプランニングへフィードバックする技術営業のスペシャリストだ。自ら顧客の仕事場に足を運び,実地調査やアンケート,インタビューを実施し,ユーザーのニーズを探求してきた。
オフィスには「個人」―「交流」,「集中」―「リラックス」という,相反する行動が存在し,ワーカーはそれらを「モードチェンジ」させながら働いている。こうした活動シーンをもとにスペースを考え,時には人と人とが交流する曖昧な場所を仕掛け,各々のパフォーマンスに合った環境を整えることで知的生産性は高まり,結果的に環境負荷も低減できるのだと田中グループリーダーは分析する。行動と環境のメリハリだ。例えば,明るい照明のもとで集中して仕事をしたい場合もあれば,自然の光と風の中で緑を見ながらリラックスして物事を考えたいこともある。さらに,求められる環境は業種・職種によっても様々。そこで働く人の行動を観察・シミュレーションし,どこでどの様な活動が発生するかを仮説・検証していくことが重要だ。
リアルタイムで生の声を
田中グループリーダーの新たなチャレンジは,リアルタイムでワーカーの声を集め,ワークスタイルとその環境を進化させていくこと。鹿島KIビルのZEB化改修エリアでは,スマートフォンを用いてワークプレイスのリアルタイムアンケートを実施している。「暑い?」「暗い?」「仕事うまく進んでる?」「いまの気分,どんな感じ?」――こんな友達感覚な質問は,ワーカーのつぶやきを誘発させる。ワーカーの所在場所や移動を把握し,人が集まる場所,不快感の多い場所,無駄な電力消費,行動パターン等が時間帯でも分析できる。ワークスタイルは変化し続けるもの。その変化を捉える技術もスパイラルアップしていく。