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特集 鹿島の知的財産

モノづくり企業である当社にとって,独自技術はかけがえのない財産といえる。
これら独自技術を保護しつつ,技術を盛り込んだ建造物や構造物など,
市場への影響力を高めるために重要となるのが知的財産だ。
今回の特集では,設立から丸50年を迎えた知的財産部が,これまで鹿島グループの守護神として,
技術開発の舞台裏を支えてきた足跡を振り返る。また,今後も企業として継続した成長を目指す上で,
欠かすことができない当社の知的財産にスポットを当てる。

図版:櫻井克己
知的財産部長
櫻井克己

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設立時の時代背景

知的財産部は,1970年にあゆみが始まりました。技術研究所や鹿島出版会などが同業他社に先駆けて設立され,技術・文化の発信について存在感を示す流れの中で,本社重役室特許センターとして設立されました。

当社は,天保11(1840)年の創業以来,「進取の精神」の下に建設事業において,「洋館の鹿島」,「鉄道の鹿島」,「超高層の鹿島」,「ダムの鹿島」など様々な呼称で呼ばれてきました。設立時は,霞が関三井ビル(1968年),世界貿易センタービル(1970年),京王プラザホテル(1971年),新宿住友ビル,新宿三井ビル(1974年)と立て続けに東洋一高い超高層ビルの記録を更新し施工していた時代です。その当時の最先端技術に取り組んでいました。

知的財産の拡大・変貌

設立時は,特許センターの名称が示すように,活動の中心は工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標)とそれらに関連する係争や契約対応でした。JVや工区割り,各種技術工法協会における知的財産の取扱いなど,今日の視点でいえば「標準化」に相当する対応のほか業界固有の知的財産対応も行っていました。1990年代半ばには年間約1,000件の権利化業務を担っていました。

その後,工業所有権は産業財産権と呼称が変わり,加えてプログラムなどの「著作権」,「営業秘密(ノウハウ)」など広範な「知的財産」へと拡大・変貌しました。さらに,その流れはデジタルネットワークによる技術革新の時代を迎え,新たな情報財産と呼ばれる「データ」や,契約や知的財産に基づく「社外連携」といった様々な領域へと広がっています。したがって,現在の当社の多岐にわたる活動は,技術開発はもちろんのこと,設計,施工,多様な文化活動など,その全てが知的財産と密接に結び付いています。

設立時の鹿島守之助会長の想い

当部が設置された時の,鹿島守之助会長が残された言葉を振り返ってみましょう。そこには50年後の現在に求められていることが示されており,大学・異業種や海外との連携,今日のキーワードでいうオープンイノベーションの重要性が謳われています。また,「当社の繁益のためにはをさらに一層効果的に組織し,活用することが絶対に重要である」という言葉に秘められた意味は,未来の知的財産部においても不変のものだと思います。

「人」の存在

知的財産の内容や有用性が変貌・向上したとしても,最後に問われるのは「人」です。どれだけ有益な知的財産を保有していたとしても,それを活かすためには人の存在抜きには語れません。知的財産部は特殊な専門家集団というイメージを持たれる方もいらっしゃるようです。確かに専門的な知識は活動のベースになりますが,「知的財産部の活動の本質は,社内外の関係者との信頼関係に基づく連携」にあります。

社内外の関係部署と良好なコミュニケーションを取り,自己の見解だけに固執せず,相手の立場や背景,市場なども勘案した上で柔軟性を持ち,バランスの良い判断に基づく行動を行うこと。それが知的財産部員に求められていることです。

未来の知的財産部員へ

知的財産部の魅力の一つは,社長直轄の部署であるため,社長に直接提案できることです。全社的な視点から捉えて,知的財産の最適な取扱いを進めることの重要性は,知的財産がより広範化したこともあり,設立時以上に大きくなっています(上図参照)。

知的財産は,経営と技術と法律,三つの観点を活用する非常に面白い世界です。一つとして同じ事案はなく,対応に飽きることはありません。企業の受注競争や,事業の円滑な進行に大きく影響します。どのように社業に貢献させるかについては,ビジネスマインドの見せどころです。今後は「全社の広範な知的財産を基にした情報のハブ」として,より一層展開が進められていくはずです。

半世紀の歴史を経て,さらなるあゆみを続ける知的財産部には,社内外の関係者と深い信頼関係を築くことができるメンバーに集ってもらい,鹿島グループの技術・文化の発展を通じて社会に貢献し,未来を大きく切り開いてほしいと願っています。

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