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建築:建物資産価値のさらなる向上

生産性向上と魅力的な建築生産プロセスの実現に向けて推進している鹿島スマート生産。
「全てのプロセスをデジタルに」のキーコンセプトのもと,建築プロジェクトの全てのフェーズにおいて建物情報のデジタル化を進め,仮想空間上に再現されるバーチャルな建物と,実際に施工したリアルな建物によるデジタルツインを実現した。これにより,顧客の建物資産価値をさらに高めていく。

図版:デジタルツインのイメージ

デジタルツインのイメージ

企画・設計フェーズ

デジタル化は建物の企画段階から始まる。詳細な設計に入る前に,コンピュテーショナル・デザインでプロジェクトの施設計画や立地,気候に応じて,風・温熱・光・日射・騒音・安全を性能モデルでシミュレーションして最適化。コンピュータシミュレーションにより,短時間に多数の空間の可能性をデジタルモデルで探索し,顧客に最適な空間を追求する。

さらに,建物の仕様から設備機器の性能に至るまで,計画中の建物に関わる全てのデータをBIMを核としてデジタル化。着工前にデジタル上に建物を竣工させる仮想竣工により,施工時の不具合を事前に調整し,着工後の不整合ゼロを実現する。また,設備機器の更新方法など,竣工後の建物運用を事前に確認する仮想運用も可能となる。

デジタル技術のフル活用により顧客とのスマートな合意形成が実現するとともに,リアルな建物と仮想空間上にある双子「デジタルツイン」が誕生する。

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シンガポール The GEAR

当社アジア開発事業統括会社カジマ・デベロップメントにて開発中の当社のアジア統括事業拠点では,設計段階でコンピュテーショナル・デザインやBIMを駆使。本施設にKAPグループ各社の本社機能を統合するとともに,技術研究所シンガポールオフィス(KaTRIS)が入居し,R&Dセンターとしての機能を有する。オフィスのスマート化,ウェルネス,バイオフィリックデザインやさまざまな省エネ手法を導入し,人や環境にやさしい次世代オフィスを目指している。

場所:
シンガポール共和国
チャンギビジネスパーク
設計:
当社建築設計本部
用途:
オフィス,研究施設
規模:
RC造 B1,6F 延べ13,087m2
工期:
2020年12月~2023年3月(予定)
(KOA シンガポール施工)
図版:完成予想パース

完成予想パース

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デジタルデザイン
統括グループ

今年4月から当社建築設計本部に設計DXを主管するデジタルデザイン統括グループが活動を開始。コンピュテーショナル・デザイン,設計BIMにおいてライン設計を先導する役割を果たす。

設計業務のデジタル化を目指して,基盤整備,人材育成,ツール開発を行いながらプロジェクトの魅力を創り出す役割を担う。

図版:建築設計本部デジタルデザイン統括グループ一同

建築設計本部デジタルデザイン統括グループ一同

施工フェーズ

施工時においてもデジタル技術をフル活用。高品質な建物のつくり込みに活かしている。

「BIMLOGI®」は,工場で製作される各種部材の製作・運搬・施工・検査の各フェーズにおける進捗予定と実績を,BIMデータと連携させることで管理するシステム。昨年4月から都内の大型建築現場に導入され,今年8月までに鉄骨で約3,000点,カーテンウォールで約2,000点,電気・空調・衛生設備で約6万点,建具で約900点の部材を対象に実証を行い,作業の手戻り・手待ちの削減に効果を示した。

また,「鹿島ミラードコンストラクション®(以下,KMC)によりBIMと建設現場に設置したセンサー・デバイスから取得する空間データを統合。施工中の建物を領域ごとに色分けして可視化するほか,施工プロセスを正確にデジタルデータで蓄積し,出来高管理や現場の遠隔管理に活用していく。

日々の現場状況を映し出すデジタルツインを活用することで施工管理の高度化に繋げる。

※ピクシーダストテクノロジーと共同開発

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BIMLOGI

部材ごとに固有のIDを付与し,実績登録にはID情報をもった2次元コードを利用する。
登録されたデータはWebブラウザやスマホアプリを用いてリアルタイムにビジュアルで確認ができる(BIMLOGI)

独自開発した専用ビューワーによる
KMCデータの閲覧

図版:BIMデータ

BIMデータ

図版:点群データ

点群データ

図版:BIMと点群から生成した出来形ビュー

BIMと点群から生成した出来形ビュー
(緑エリア:施工完了,赤エリア:未完了)

維持管理・運営フェーズ

リアルな建物の竣工により完成するデジタルツイン。仮想空間にある双子はリアルな建物の維持管理でその価値を発揮する。

日本で初めてBIMによるフルデジタルツインを実現し,昨年1月に竣工したオービック御堂筋ビル(大阪市中央区。表紙,目次に関連記事掲載)ではデジタルツインを施設運営の合理化や管理業務の効率化,省人化にフル活用。管理業務を担う当社グループ会社の鹿島建物総合管理は,デジタル情報による施設管理「BIM-FM」により,例えば建物にトラブルがあった場合に,その場所がどこなのか,対処するためには何が必要となるかなどの状況をいち早く把握し迅速に適切な対応を行っている。さらに,BIM上の機器一つひとつにそうした対応履歴を記録。従来は複数の書類やフォーマットを通して管理されていた建物情報が全て一元管理されている。

また,建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM」では空調や照明などの稼働状況,エネルギー消費量など,建物に関するさまざまなデータをクラウド上のプラットフォームに蓄積している。今後,集めたビッグデータをAIで分析し,設備の最適運転の実現のほか,機器の異常や故障発生時期を正確に予測することで,ランニングコストの削減にも繋げていく予定だ。

建物の環境対策や効率的な運用サポートが利用者の利便性・快適性向上に繫がる。デジタルツインが顧客の建物に新たな資産価値を提供する。

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