「地域の人々と共にあゆみながら,地域に密着した医療を実践する」という理念を引き継ぎながら,地域に代々根ざしてきた亀田病院。建替えにあたっては“五感で感じられ,人の自然治癒力を高める空間”を建築コンセプトに,周辺の地域や住民を大切に思う気持ちが感じられ,温かみ溢れる場所の具現化を目指した。
新本館は,施設全体が4層吹抜けのアトリウム空間を核に構成されている。建物中央部に位置するアトリウムからは空を仰ぎ見ることができ,降り注ぐ自然光や移ろいゆく影,吹き抜けるやさしい風など,病院の中に居ながらにして自然や時の移ろいを感じることのできる場所となっている。また,建物全体を見渡せることから患者さんは自分の居場所を常に認識でき,日常的なスタッフとの視線をやわらかくつなぎ,互いに安心感を得ることができている。そして何よりも,空間そのものが時間認知と空間認知をサポートし,体のリズムを整えることで人間が本来持つ自然治癒力の向上につながることを期待している。
将来の成長と変化にそなえ「可変ホスピタル」としての骨格をもつと同時に,人の心が休まる「すまい」としての優しい表情を持った病院として,地域に求められる医療のあるべき姿を示し続けていくことを願っている。
(濵野拓微・星野大道・星 裕樹)
亀田病院 新本館(横浜市西区)
築48年の既存本館の建替え工事。
これからも地域に密着した医療実践の場として,
アトリウムを介した大きな家のような病院建築を目指した。
発注者:医療法人社団 明和会
設計:当社建築設計本部
規模:RC造 4F 60床 延べ3,995m2
(横浜支店施工)
濵野拓微(はまの・たくび)
建築設計本部
グループリーダー
主な作品:
- 京都市立病院
- 群馬病院
- 東埼玉総合病院
星野大道(ほしの・ひろみち)
ナレッジマネージャー/チーフ
主な作品:
- 日産厚生会 玉川病院南館
- 日本歯科大学生命歯学部
100周年記念館 - 京都市立病院
星 裕樹(ほし・ゆうき)
建築設計本部
チーフ
主な作品:
- フジテレビ湾岸スタジオ
- イオンかほく
- 玄々堂君津病院(増築)