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PHASE3 安心をえる

ダンパーチューブ構造を構成する細型の「オイルダンパー」イメージ

ダンパーチューブ構造を構成する細型の「オイルダンパー」イメージ

建築で守られる安心感

東日本大震災では,多くのワーカーがオフィス内で巨大地震に遭遇した。これまでに体感したことのない長く大きいさまざまな揺れ,建物の歪む音,窓越しに見える高層ビルの揺れたわむ姿――人それぞれ感じ方は違うが,さまざまな恐怖心を味わった。我が国の超高層ビルは,巨大地震にも耐え得る耐震性能を誇り,その安全性は今回の大地震でも立証されている。しかし,人間に与える恐怖心というものは,安全であるという理解だけでは和らげることができないことも,大震災をもって経験した。当社は「安心」という人間の感性に着目した技術開発を行ってきた。そのひとつが,揺れをより早く収束させる技術だ。

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東日本大震災では,超高層ビルの長時間にわたるゆっくりと大きな揺れが問題になった。揺れの恐怖心を最小限にして安心を得る技術として,免震構造をオフィスビルの建設に導入したいというニーズが急増している。しかし,免震構造は敷地の広さや建物のプロポーションなど,さまざまな制約があり,都市計画的な条件の中で最大限の床面積を確保したいオフィスビルには,向き不向きの諸条件が出てくる。

当社は,自由度の高い制震構造によって,免震建物に匹敵する揺れの低減を可能にする新技術「ダンパーチューブ構造」を開発した。この構造は,耐震性を持たせた構造コアを建物の中心からずれた場所に配置し,コア以外の外周部を柔らかな架構で構成する。外周架構部には細型オイルダンパーを網目状に配し,地震エネルギーで回転する外周架構部の変形を抱きかかえるように静かに収束させるという仕組みだ。スレンダーなオイルダンーは建築意匠としての可能性も秘めており,構造体をデザインとして見せることで守られている安心感を提供することも期待できる。

ダンパーチューブ構造を建築意匠としてデザインしたイメージ

ダンパーチューブ構造を建築意匠としてデザインしたイメージ

ダンパーチューブ構造概念図

ダンパーチューブ構造概念図
耐震性を持たせた構造コアを建物の中心からずれた場所に置き,コア以外の外周部に柔な架構を配置した構造。外周架構部に細型オイルダンパーを網目状に配置する。地震時,柔らかな外周架構部は,地震エネルギーで構造コアを軸に回転するように変形する。それを網目状のオイルダンパーが抱きかかえるように地震力を吸収し,静かに揺れを収束させる

外周架構とオイルダンパーの取合い詳細図

外周架構とオイルダンパーの
取合い詳細図

オイルダンパーを外周架構からオフセットさせて外壁面よりも外に設置すれば,オイルダンパーをデザインとして見せることも可能。制震構造の安心感を取り入れた建築意匠の可能性も秘めている

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見守られている安心感

東日本大震災を経験し,企業は災害時の事業継続計画(BCP)の重要性を再認識し,オフィスビルにその機能を求めるニーズが高まった。非常用電源や給排水設備などインフラのバックアップ機能はもちろんだが,何よりもまず,発災時に社員の生命を守ることは事業継続の大前提である。当社開発の「被災度判定システム」は,震災直後に建物の被災度を迅速に把握し評価するシステムだ。オフィスビルの複数階に地震の揺れを検知する計測装置を設置し,そのデータを専用パソコンで解析することにより,フロアごとに地震の加速度・建物のひずみを割り出して被災状況を評価する。このシステムは,当社関連施設をはじめ約60棟の建物に導入されている。

東日本大震災では,発災直後に本システムが当社東北支店ビル(仙台市青葉区)の安全性について「構造体に大きな損傷はなく什器類の転倒はあるが天井の損傷は少ない」と評価。通信網の輻輳による遅延はあったものの,早期に支店ビルの安全が確認された。技術を通じ,「見守られている安心」で,企業の事業継続はサポートされる。

被災度判定システム。東日本大震災における鹿島赤坂別館の評価結果

鹿島赤坂別館写真と計測装置設置位置

評価結果表

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Column 論より証拠! 「ポータ震」で大地震を体験

可搬型体感用振動台「ポータ震(ぶる)」は,直下型地震や長周期地震動での建物の揺れを再現可能である。顧客に普段生活している場所で,免震・制震構造を採用した建物の揺れの低減効果を体感してもらおうと,2008年に開発した。当社では,数値だけでは表現できない揺れの感じ方に早くから着目し,安全だけでなく安心の技術とサービスを提供している。

「ポータ震(ぶる)」実験

社内の会議室で,兵庫県南部地震,新潟県中越地震,東北地方太平洋沖地震の揺れを再現し,当社社員が免震・非免震ビルでの直下型地震,長周期地震を体感した。その感想は…。

  • 免震と非免震ではかなりの差があった。非免震だと,立って避難するのは不可能だと思った。(20代女性)
  • 長周期の振幅が想像以上に大きくて驚いた。調度品や電気製品などは必ず固定する必要を感じた。(30代女性)

写真:「ポータ震(ぶる)」実験

  • 大震災の揺れと免震効果を,場所を選ばず手軽に再現できるところに有効性を感じた。(40代男性)
  • 言葉でどんなに説明されても理解できない揺れの違いを体感できる“論より証拠”のすぐれたツールだ。(50代男性)

写真:「ポータ震(ぶる)」実験

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