今年4月にオープンした複合施設『ダイバーシティ東京』全景 (photo: 川澄・小林研二写真事務所)
クリエイティブな知をたかめる刺激的空間
2012年4月,東京臨海副都心地区にオープンした『ダイバーシティ東京 オフィスタワー』は,複合施設として一体化する大型商業の賑わいやサービスをワーク・ライフに取り入れ,刺激あふれるオフィス環境を創出している。当社は,オフィスビルの設計・施工をはじめ複合施設全体のグランドデザインを手掛けた。
フジテレビジョンの真向かいという立地から,同社を中心にメディア関連の企業が集積するテナントオフィスビルとなることが想定された。クリエイティブな知をたかめるオフィス・デザインというものを試行錯誤した結果,オフィスビルとしてクローズする空間にするのではなく,街全体の賑わいを取り込む環境を創り上げ,さまざまな人と触れ合い刺激を受けることで独創的な知的活動が芽生えることを狙った。
その最たる場所が,プラザ(商業棟)とオフィスタワーをつなぐ「フェスティバル広場」と,タワーから広場へと続く大階段だ。広場には,施設のコア・スペースであることを主張する高さ18mの実物大ガンダムが,訪れる人々の流れを導く。ここでは毎日複数のイベントが催され,さまざまなジャンルの来場者が集う。穏やかな勾配の大階段では,観覧者の傍らにワーカーたちも腰をおろし,ランチを食べながらイベントを楽しむ。そこに新たな会話が生まれ,異文化交流が始まるかもしれない。ここはワーカーの気分転換の場所であり,時には情報収集の場にもなるというわけだ。
一方,基準階のオフィスフロアは,先進の設備と仕様による機能性重視のシンプルなデザインとした。海を介し都心を望む贅沢な眺望があれば,華美なインテリアは不要だ。ワーカーはオフィスに居ながらにして,この360度のパノラマが映す大東京の営みや,この街を訪れる人々すべてから刺激をもらうことができる。また,オフィスにはあえて飲食フロアを設けず,2・5階で直結するプラザのフードコートやレストランをワーカーの社員食堂と見立てた。賑わいの空間の中で休息をはかり,時にはフードコートのカフェや屋上のベンチでミーティングし,議論をかわすのもいいだろう。ここには,クリエイティブな知的活動をたかめるさまざまな空間が用意されているのだ。
『ダイバーシティ東京 オフィスタワー』
見上げ (photo: 川澄・小林研二写真事務所)
❶大階段から「フェスティバル広場」を望む。毎日さまざまなジャンルのイベントが行われる
❷ガラス張りの開放的なエントランス (photo: 川澄・小林研二写真事務所) ❸オフィスから見える街の風景 (photo: 川澄・小林研二写真事務所)
❹プラザ屋上には庭園や菜園コーナー,フットサルコートなどが整備されている(他社施工)。ここは,ワーカーの疲れを癒す風景であり,レクリエーションの場にもなる ❺プラザのカフェで打ち合わせするワーカーの姿も
平面図
ダイバーシティ東京 オフィスタワー
- 場所:
- 東京都江東区
- 発注者:
- 青海Q区画特定目的会社
- 外装デザイン監修:
- Buchan Group International Pty Ltd
- 設計:
- 当社建築設計本部
- 規模:
- S造一部RC造(制震構造)
22F,PH1F 延べ65,799m2
2012年4月竣工(東京建築支店施工)
断面図
入居して1ヵ月が過ぎましたが,オフィスの快適性を改めて実感しています。はじめは,エントランスからオフィスまで落ち着いたデザインに包まれているからだと思っていたのですが,最近になって気付いたことがあります。プラザのカフェで打ち合わせしようと5階で直結する扉を抜けた瞬間――まるで閑静な住宅街から都心の賑わいへワープしたような感覚を味わったんです。フェスティバル広場では毎日のようにさまざまなイベントが行われ,商業施設に一歩足を踏み入れれば,そこには休日の世界が待っています。オフィスに戻る時,リフレッシュした自分がいるのに気付かされました。静と動の繰返しが,脳の新陳代謝を活性化してくれている気がしますね。プラザには,スポーツを楽しむ施設もあります。運動後にビールを1杯なんて暑気払いも企画したいですね。職場のコミュニケーションも良くなりそうです。
フジテレビジョン 専任局次長
垣田正樹