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edes

当社から排出されるCO2の9割以上は,現場の生産活動によるもの。
各現場で運用する,環境データ評価システムedesと,その成果から見えてきたことを紹介する。

サンプル調査から全量調査へ

温室効果ガス(おもにCO2。以下CO2)の削減には排出実態の正確な把握が不可欠である。そこで当社では,各現場のエネルギー消費量を把握分析する環境データ評価システム「edes」(イーデス)を昨年4月から全社で運用開始。約700現場のデータを得ることができた。

それまでは限られた数のサンプル調査からCO2排出量の推計を行っていたが,2020年度からは,土木・建築の全現場(一定規模以上)の12ヵ月間のエネルギー消費量を把握し,全社のCO2排出量を集計している。

edesの導入により,それぞれの現場では,自現場のエネルギー消費量の内訳を月単位でモニタリングすることができるようになり,一部の現場ではそれをCO2排出量に換算し,発注者へ報告を行っている。一方,支店や本社では,自社のCO2排出量のより詳細な集計を行うと共に,今後は,各現場の工種や工程進捗データと組み合わせて分析することで,有効なCO2削減策の発見や検証に活用していく。

図版:edesロゴ

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工種や工事進捗状況によるエネルギー消費量の違い

全現場のデータが得られることで,工種によるエネルギー消費量(施工高1億円あたりのCO2排出量。以下,CO2排出量原単位)の違いが明らかになりつつある。その違いは,特に土木工事において顕著であり,CO2排出量原単位で見ると,土木工事全社平均の2倍以上の工種,1/2程度の工種が明らかになった。

また,同一工種であっても,CO2排出量原単位の大きな工事と小さな工事に区分される工種があり,今後,それぞれの工事の特色を詳細に分析することで,省CO2施工への有効策の抽出が期待される。

図版:土木工事の工種ごとのCO2排出量原単位の違い(イメージ)

土木工事の工種ごとのCO2排出量原単位の違い(イメージ)

一方で,建築工事では新築工事に加え,解体工事,改修工事についてもCO2排出量原単位の把握が可能となった。また,新築工事であっても着工直後の基礎工事と竣工間際の内装仕上げ工事とではそれぞれのCO2排出量原単位が大きく異なっており,2020年度はその違いを定量的に把握できた。着工直後の基礎工事が大きなCO2排出元だとすれば,CO2削減策の検討は施工計画の初期段階から組み入れることが重要であることを示している。

建築工事の工事進捗によるCO2排出量(イメージ)

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今後の現場での取組み

2020年度からの全量調査によって明らかになりつつある工種ごと,工事進捗状況ごとのCO2排出量データは,現在準備中の「現場にeカツ(土木工事)/現場deエコ(建築工事)」のエネルギー消費量予測機能システムに組み入れ,現場でのCO2排出量管理に活用していく。

また,全量調査データはCO2削減策の注力ポイントも示唆しており,当社ではその対応も進めている。例えば,CO2排出量原単位が大きなダム工事では,A4CSEL®(クワッドアクセル)を用いた自動化施工による作業効率の向上がCO2削減につながり,建築でのデジタルツインは早期のCO2削減策検討への活用が期待できる。

全量調査は2020年度から始まったばかりであり,大型工事では着工から竣工までの全データを取得できてはいない。今後もデータを蓄積し,精度の高い予測と削減効果の提示,CO2排出量原単位実績の迅速な集計とフィードバックで,現場の削減活動と脱炭素に向けた発注者の期待に応えていく。

図版:現場での施工CO2排出量を見える化する「edes」の画面(イメージ)

現場での施工CO2排出量を見える化する「edes」の画面(イメージ)

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edesを活用する現場から

VOICE

【現場の声…土木編】
新名神高速道路
大津大石トンネル工事
影山 心 所長

山岳トンネル工事におけるCO2排出量はトンネル1kmあたり1万730t-CO2とされており,当現場ではCO2排出量は約1万7200t-CO2にも及びます。また,3車線大断面トンネルであることから一般的な2車線断面トンネルの施工に比べ,大型機械の使用量も通常のトンネルの約2倍となり,発生量はさらに多くなると考えています。

そのため,発生量のうち大きな割合を占める送風機のデマンド運転や坑内照明のLED化といった削減対策を実施しています。これらの取組みによる削減効果がedesデータで数値として確認できれば,他現場への展開にもつながり,現場のやりがいも大きくなると考えています。

新名神高速道路 大津大石トンネル工事

場所:
滋賀県大津市
発注者:
西日本高速道路
設計:
オリエンタルコンサルタンツ
規模:
掘削断面積142~180m2 
延長1,619m 幅員12.75m
工期:
2019年5月~2025年7月
(関西支店施工)
坑内の様子。照明はすべてLEDを使用

坑内の様子。照明はすべてLEDを使用

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VOICE

【現場の声…建築編】
(仮称)セコムSDセンター
建替工事
岡野佳志(よしゆき) 所長

本工事の発注者は環境への関心が高く,施工CO2排出量を把握したいと希望されており,データを提出することになりました。一期工事分は過去の作業記録や電力請求書などを手作業で集計し大変でしたが,発注者からは高く評価されました。二期工事分から,edesの現場運用が開始され,重機使用台数は施工管理支援サービス「Buildee®からの自動取込み,電気使用量は入力代行サービスを利用することで,専従社員が少ない現場でも迅速かつ正確に環境データを集計でき,非常に役立っています。

※Buildeeはイーリバースドットコムが運営する建設現場の業務管理ウェブサービス

(仮称)セコムSDセンター建替工事

場所:
東京都世田谷区
発注者:
セコム
設計:
松田平田設計
規模:
RC造 3F 延べ2,998m2
工期:
2018年2月 ~ 2021年8月
(東京建築支店施工)
完成予想パース

完成予想パース

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column

最高評価に認定!

CDPリーダーボード企業認定

当社は,国際的な環境調査・情報開示を行う非営利団体であるCDPから,昨年12月のCDP気候変動のAリスト認定に続き,CDPサプライヤーエンゲージメント評価(SER)において最高評価にあたる「リーダーボード」に選出された。

これは,当社グループのサプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減活動が評価されたもの。なお,2020年のリーダーボード選出企業は,世界で396社(うち日本企業83社)。

CDPが毎年実施するSERは,企業の環境情報開示におけるグローバルスタンダードとして広く認知されている。SERはサプライチェーン全体での気候変動に対する取組みを評価するもので,4つの重要項目(ガバナンス,目標,スコープ3管理,サプライヤーとの協働)とCDP 気候変動質問書の最終スコアを使用して,企業をA(リーダーボード)からD-の8段階で評価。昨年,同機関からは,2016年以来4年ぶり2度目となる,気候変動部門において最高評価にあたる「Aリスト」企業と認定された。

※CDPは,英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)であり,投資家,企業,国家,地域,都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営。2000年発足

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