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ZEB

スコープ3では,建物運用時の排出(自社の事業範囲の下流)が対象に含まれる。
SDGsやESG投資などの考え方が企業活動に浸透する中で,
当社はZEBおよび,環境に関する技術を幅広く強化している。

エコデザインと省エネの両立

ZEB(ゼブ)とは,Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称。快適な室内環境を実現しながら,省エネや再生可能エネルギー利用などにより,建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことである。業務部門(事務所,商業施設などの建物)での最終エネルギー消費量は,2018年度の国内データでは全体の約16.1%を占め,1990年度の約12.6%と比較して増加していることから,ZEBの普及が求められており,段階的に各種の指標がある。

東京・池袋駅近くの新たなカルチャーエリアに位置するHareza Tower(ハレザタワー)は,低層部にシネマコンプレックスと商業店舗,上層部にオフィスを配した33階建ての建物で,昨年5月の完成以来,多くの人で賑わう。建物は豊島区旧庁舎跡地に立地し,隣接する豊島公会堂跡地と共に再開発された。低層部外観は,再開発エリア全体との統一性を確保し,オフィスフロアとなる基準階はLow-Eペアガラスを基本としたカーテンウォールを採用し,外装の環境性能を向上させ,機器効率を高めた空調設備を導入した。

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図版:Hareza Tower外観

Hareza Tower外観。
当社は建物を含む「Hareza池袋」街区全体のデザイン監修も行った

photo:Nozomu Shimao / SS

また,オフィスで長時間利用される照明設備は,省エネと室内の快適性確保の両立が求められるが,Hareza Towerでは 設計照度を下げると共に,高効率のLED照明や明るい色合いのタイルカーペットを採用して明度を向上させ,低出力で最大限の照明効率を得ることができる,建築と設備の調和のとれたデザインとなっている。明るさセンサーやスケジュール,入退室管理との連動など制御を行うことで,さらに省エネ性能を向上させている。

図版:内装計画・照明計画の総合的な取組みにより,省エネと明るさ感を両立させたオフィスフロア

内装計画・照明計画の総合的な取組みにより,
省エネと明るさ感を両立させたオフィスフロア

photo:Daichi Ano

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Hareza Towerは,BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の建築物全体評価にて☆(星)5※1の省エネ性能最高ランクを備えると共に,認証申請時,事務所用途の部分評価として建物高さ150m以上の超高層複合用途ビルにおける,ZEB Ready取得の第一号案件となった。

※1 事務所等,学校等,工場等は40%以上,ホテル等,病院等,百貨店等,飲食店等,集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量の削減

Hareza Tower

場所:
東京都豊島区
発注者:
東京建物,サンケイビル
設計:
当社建築設計本部
用途:
事務所,映画館,店舗
規模:
S造(柱CFT造)一部RC・SRC造 B2,33F 
延べ68,654m2
工期:
2016年12月~2020年5月
(東京建築支店施工)
KEYWORD

拡充されるZEBの定義

ZEB(Net Zero Energy Building)の評価・認証取得へのニーズが高まっている。究極の目標は,エネルギー消費量が正味0%以下の「Net ZEB」の達成だが,経済的に実現性の高い「Nearly ZEB」や「ZEB Ready」の建物を普及させることもまた重要であり,ZEBの普及をねらいとして段階的に拡充された「ZEBシリーズ」がラインナップされている。

当社は,顧客のニーズに応じて,最先端技術の導入による高度なZEBの実現に向けた取組みから,汎用省エネ技術の組合せによる経済的合理性を踏まえた提案まで,広い視点でZEBに取り組み,省エネ建築の実績を持っている。

図版:ZEBシリーズのラインナップ

ZEBシリーズのラインナップ(経済産業省資源エネルギー庁「平成30年度ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」2019年3月,をもとに作成)。用語については出典を参照のこと

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「ウェルネス」と環境性能の共生

電気事業の中央研究機関である電力中央研究所(電中研)。その我孫子地区 新本館(千葉県我孫子市)が昨年10月に竣工した。建物は4階建ての研究棟と隣接する1階建てのカンファレンス棟(低層棟)で構成され,低層棟屋上に設けられた広々とした庭園「グリーンルーフ」は研究棟2階に面し,緑豊かなアウトドアオフィスとして利用される。また既設建物へのアクセスにも日々,この屋上庭園を利用するため,研究者がコミュニケーションを深める場となっている。

図版

グリーンルーフと呼ばれる屋上庭園を頂くカンファレンス棟は右側の研究棟と接続し,
アウトドアオフィスとしても活用されている

photo: Kawasumi/Kobayashi Kenji Photograph Office

この建物は,「CASBEE-ウェルネスオフィス(WO)認証」の国内最高スコアを取得し,あわせてCASBEE-スマートウェルネスオフィス認証のSランクに認定された※2。このCASBEE-スマートウェルネスオフィスの認証には建物利用者の健康性,快適性,知的生産性などを評価する「CASBEE-WO」と,建築物の環境品質,環境負荷を評価する「CASBEE-建築」の双方の認証が必要だが,共にSランクを取得。環境性能に非常に優れた建物と認定された。

※2 2019年度に認証を取得。現在認証されている全43物件中の国内最高点(92.4点)を維持している(2021年7月1日時点)

建築物の環境性能を評価する指標であるCASBEE建築はすでによく知られているが,近年はその次の段階として,働く人へのウェルネスが注目されている。電中研のプロジェクトは複数に分散していた執務空間を集約する計画だったことから,自然豊かな環境を活かし研究者の快適性と知的生産性の向上を両立させるコンセプトの中で,CASBEE-WOの認証を目指した。認証に際しては,CASBEE建築と同様の項目に加え,WO(ウェルネスオフィス)特有の項目として,「知的生産性を高めるワークプレイス」「運動促進」「動線における出会いの場の創出」「メンタルヘルス対策」などが評価される。

ここでは執務室と連続するグリーンルーフ,建物内の吹抜け周辺に設けられたライブラリー,会議室などの知的生産性を高める空間づくり,また,自然エネルギーを利用した放射空調や,研究者一人ひとりが風量・風向を調整できる床吹出し空調の採用など,設備面の細やかな取組みが高い評価を受け,CASBEE-WOの最高スコアを獲得,今も最高位を維持している。

図版:電力中央研究所 我孫子地区 新本館全景

電力中央研究所 我孫子地区 新本館全景

photo: Kawasumi/Kobayashi Kenji Photograph Office

電力中央研究所 我孫子地区 新本館

場所:
千葉県我孫子市
発注者:
電力中央研究所
設計:
当社建築設計本部
用途:
研究所(事務所)
規模:
RC造 4F 延べ8,181m2
工期:
2019年6月~2020年10月
(東京建築支店施工)

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