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鋼矢板仮締切堤防工事15日間の全記録

発災翌日の14日から現地入りして準備と体制を整え,地元建設会社による仮堤防の施工後,20日から本格作業に入った。武井昭北陸支店土木部土木工事管理部長と前川陽平関東支店土木部土木工事部長の2人に話を聴いた。

写真:武井 昭
武井 昭(たけい あきら)
北陸支店 土木部
土木工事管理部長
写真:前川陽平
前川陽平(まえかわ ようへい)
関東支店 土木部
土木工事部長(長野地区)

支援要請から準備

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地図

13日7時の堤防決壊地点(千曲川左岸58k付近)。
まだ周辺地域に水が流れ込んでいる[10月13日撮影]

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災害協定に基づく支援要請

日建連北陸支部は,13日未明決壊が発生した数時間後の午前8時に,北陸地方整備局から災害協定に基づく支援要請の連絡を受け,8時30分「緊急災害対策本部」を開設した。

北陸地方整備局の日建連北陸支部に対する応急復旧の概要と支援要請は,次のようなものだった。

  • 堤防が決壊した範囲の延長70m
  • 堤防が欠損した部分の延長130m
  • 仮堤防川表側の鋼矢板仮締切堤防工事
  • 対応会社の推薦(仮堤防工事は地元建設会社で行う)

日建連北陸支部は14時から「緊急災害対策本部会議」を開催,当社からは日建連北陸支部長でもある芦田支店長以下4人が出席し,当社を含めた建設会社9社による協議が行われた。

この会議では,北陸地方整備局から応急復旧工事に対応する会社の早期推薦を要望されていたため,緊急に対応会社を選定する必要があった。同会議では,災害復旧の規模や緊急性,会員各社の体制状況などを中心に情報共有を行った。協議の結果,2015年鬼怒川堤防決壊での緊急復旧工事の経験があることなどから,当社と大成建設が北陸地方整備局へ推薦されることとなった。

※2015年9月10日,平成27年台風18号による集中豪雨で鬼怒川の堤防が決壊し,周辺地域には大規模な被害が発生した。国土交通省からの支援要請により,当社は堤防決壊部の緊急復旧工事を行った。(詳細情報:January 2016

その後,北陸地方整備局は,推薦を受けた2社を対応会社として決定,15時30分北陸地方整備局災害対策本部にて工事基本方針が周知され,次のように取り決められた。

  • 工事は,堤防決壊箇所について,従来の堤防と同等の性能を有する仮締切を鋼矢板二重締切工により施工する(鋼矢板仮締切堤防)
  • 北陸地方整備局から受領した「災害復旧工法(案)」の検討
  • 応急復旧は災害発生(13日)から約2週間で行う(仮堤防1週間,鋼矢板仮締切堤防1週間)
  • 仮締切設置区間の延長は,約396m(鋼矢板仮締切堤防区間約320m+既設堤防取付け盛土区間約76m)となり,これを上下流で等分し,当社と大成建設で分割施工する(当社は下流工区を担当)

注)翌日以降の現地踏査で検討した設計・施工方針の最終的な決定内容を含む

仮堤防とは「荒締切堤」のことで,既設堤防の決壊部分に緊急的に土盛りを行い,堤防を復元するものである。緊急的施工のため,既設堤防と同等の品質は確保できない。そのため,川表側に鋼矢板仮締切堤防を施工し,本格復旧工事が完成するまでの間,その品質を確保しようとするものだ。

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北陸支店を中心に対応

発災当日の13日午前,当社は日建連北陸支部の緊急災害対策本部会議に先立ち,復旧工事の対応を検討するため,土木管理本部と北陸,関東,横浜の各支店でWeb会議を行った。この会議では,緊急復旧工事の対応会社に選定された場合に,主担当は北陸支店とし,関東支店と横浜支店が応援することなどが決められた。

千曲川の堤防決壊の一報を聞いたとき,武井部長は「千曲川は北陸地方整備局,日建連北陸支部の管轄となるので,北陸支店が何らかの災害対応を担当するという心構えはできていた」という。一方,応援することとなった関東支店の前川部長は「真っ先に地元協力会社の連絡先など,できる限りの情報収集を始めました」と語る。

間もなく各支店では現地入りする職員の人選を行い,協力会社への連絡と資機材調達の準備に取り掛かった。

図版:現地合同踏査の様子[10月14日撮影]

現地合同踏査の様子[10月14日撮影]

図版:周辺(長野市穂保地区)の被災状況[10月14日撮影]

周辺(長野市穂保地区)の被災状況[10月14日撮影]

図版:堤防決壊箇所に欠口止(ブロック投入)が開始されている[10月14日撮影]

堤防決壊箇所に欠口止(ブロック投入)が開始されている[10月14日撮影]

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千曲川堤防決壊前後の動き
(北陸地方整備局 記者発表資料から抜粋)

10月11日

13:00
北陸地方整備局が災害対策本部を設置

10月12日

17:40
北陸地方整備局「非常体制(風水害)」に入る
19:30 現在
千曲川(生田水位観測所・杭瀬下水位)において氾濫危険水位を超過,
リエゾン(情報連絡員)を3県7市町に派遣
20:10
千曲川(上田市国分地先)で越水を確認
21:27
千曲川(長野市篠ノ井塩崎庄ノ宮)で越水を確認

※リエゾン:
被災状況や被災自治体の支援ニーズを把握し,地方整備局などの災害対策本部へ伝達する情報連絡員のこと

10月13日

0:55
千曲川(長野市穂保地先)で越水を確認
3:00
千曲川(長野市穂保地先)において堤防の欠損を確認
「堤防の決壊」の恐れが非常に高まる
すでに周辺地域での浸水発生を確認
3:29
警戒レベル5相当の緊急速報メール配信
5:30
千曲川左岸58k付近(長野県長野市穂保 村山橋下流側)で「堤防が決壊」した模様
6:20 現在
直轄国道6箇所,補助国道22箇所,県道51箇所において通行止め
7:10
千曲川左岸58k付近(長野市穂保村山橋下流側)の「堤防決壊」箇所において
「緊急対策工事に着手」
7:30 現在
千曲川(長野市穂保地先)の「堤防決壊」箇所において,
協定会社による欠口止(ブロック投入)を開始
12:00
TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)として松本空港から防災ヘリ出発欠口止を継続中
15:00 現在
防災ヘリおよびドローンによる被災状況調査
16:00
千曲川左岸58k付近における速やかな浸水状況の解消に向け,
全国のTEC-FORCE隊員による排水活動を本格化
17:00 頃より
全国より排水ポンプ車を増備
18:00
千曲川(長野市穂保地先)の「堤防決壊」箇所において,
協定会社による緊急対策工事を継続中

緊急復旧工事に関する動き

10月13日

8:12
北陸地方整備局から日建連北陸支部に対して災害協定に基づく支援要請
8:20
日建連北陸支部は北陸地方整備局から災害復旧工法(案)を受領
8:30
日建連北陸支部に緊急災害対策本部を開設
14:00
日建連北陸支部緊急災害対策本部会議開催
→当社と大成建設を日建連からの対応会社として北陸地方整備局へ推薦することが決定
15:30
北陸地方整備局災害対策本部にて打合せ(対応方針)

10月14日

11:00
北陸地方整備局千曲川河川事務所中野出張所にて打合せ(施工条件の確認ほか)
13:00
現地合同踏査(河川事務所と当社含む建設会社)

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