バイブロハンマ工法による
鋼矢板打設
地元建設会社による仮堤防が20日に完成し,その夜からいよいよ鋼矢板仮締切堤防の工事に入った。
鋼矢板仮締切堤防は,鋼矢板を2列に打設(二重式)し,両側の鋼矢板をタイロッドで固定,その間を砕石で中詰めする。20日朝から鋼矢板専門の協力会社2社(23日から3社)との打設工事が始まった。普段は競合関係にあり,同じ工事で協同作業をすることはないという3社だった。
当初,ボーリングデータから油圧圧入工法のほうが早いと判断し施工を始めたが,実際には地中3mほどで玉石混じりの砂礫層に当たり施工が困難となったため,急遽バイブロハンマ工法※に切り替えた。
「協力会社が事前にバイブロハンマ用の打設機械も準備しており,すぐに工法切替えができました」と前川部長。協力会社の対応力に助けられたかたちだ。とはいえ,後工程を考えると,鋼矢板を1日(昼夜体制)に200枚,4日間で800枚を打設しなければならない。「1日で2方(かた)(200枚)を打つことは相当困難な作業。これも協力会社含め全員が一致団結して力を合わせたからこそできたこと」と武井部長は混成チームながらそのチームワークを称える。
※バイブロハンマ工法:クレーンに吊り下げたバイブロハンマにより,つかんだ鋼矢板を振動させながら地中に貫入させる工法
連節ブロックを設置
鋼矢板仮締切堤防と既設堤防との取付け部には,約3,150m3の築堤盛土を行い,川表側の法面は遮水シートを展張したうえで大型連節ブロックを設置した。連節ブロック工は急遽紹介された会社であったが,豊富な経験に培われた迅速な対応により,短期間の工期に間に合わせてくれた。
ICTツール活用により
作業効率を高める
今回,短工期をクリアするためにICTツールの活用による施工管理の大幅な効率化が必要だった。武井部長は「とくに若手は積極的に活用しており,難なく使いこなしていましたね」と,その効果について次のように説明する。
Safie Pocket(ウェアラブルカメラ)を場内に最大5ヵ所,固定して配置することにより,現場職員,現場詰所,車両搬入管理者が車両状況を把握,狭い搬入路での運行管理の効率化を図った。
iPhone,iPadによるTeamsの活用で,現場,現場詰所,長野営業所での職員同士の情報共有を可能にした。写真や動画も添付でき,昼夜体制での引継ぎ業務や緊急退避などに活用された。
現場の進捗状況把握のためドローン空撮を毎日実施した。さらに2km以上ある進入路や離合箇所の状況などの情報も共有した。また,2人の測量担当職員は,レーザー測量による効率化で,数量計算,出来形計測などに専念でき,工事完成と同時に数量計算書を含めた最終成果をほぼまとめ上げた。
15日間の工事を終えて
22日に洪水警報が発令され,緊急退避指示が出されたため一時工事が中断したものの,27日に当社工区の鋼矢板仮締切堤防が当初の予定どおり完成した。
緊急を要する復旧工事を工期内に,無事故無災害で完成できたのは,武井部長が北陸地方整備局や社内外に対する窓口を担当し,前川部長が現場で工事の統括を担当するという役割分担を行ったことが大きな要因のひとつである。「どちらか1人では対応しきれなかった」と2人は振り返る。
こうして他社工区の完成ののち,30日に千曲川緊急復旧の全工事が完了。北陸地方整備局による「緊急復旧工事完了宣言」が発表され,周辺住民への避難指示は解除された。
さまざまなICTツールの活用
今回の工事では,さまざまなICTツールを活用することにより作業効率を上げ,短工期を達成した。
Teamsはリアルタイムに情報を共有できるグループチャットソフト。チーム別や一斉でもチャットできる。写真や動画も送ることが可能だ。
Safie Pocketは小型のウェアラブルカメラで,作業者が持ち歩くことでその状況をどこからでも確認でき,会話も可能となっている。また,映像をそのままクラウドに保存することができる。