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1  Research for Construction JAXAとの共同研究

A4CSEL for Space/©2019 KAJIMA CORPORATION

A4CSEL(クワッドアクセル)を宇宙で動かす。
自動運転で施工を行うA4CSELの現場は地球にとどまらない。当社は2016年からJAXA宇宙探査イノベーションハブと月面の有人探査拠点建設へのA4CSELの活用を検討している。
地上でできることは月でもできるだろう。宇宙でA4CSEL が活躍する日はもうすぐだ。

月面での無人施工に向けて

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と当社は,月面の有人探査拠点建設を対象に,従来想定されていた地上からの遠隔操作と建設機械の自動運転を核とした次世代建設生産システム「A4CSEL®」を併用し,柔軟で効率的な「遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システム」の実現を目指した共同研究を2016年から進めてきた。2019年3月には当社の西湘実験フィールド(神奈川県小田原市)において,想定した月面作業を自動運転で行う実験によって高い適用性が確認できた。その成果のさらなる発展形として,昨年3月,A4CSEL仕様の建設機械で遠隔操作と自動運転を併用した遠隔施工実験を行った。

まず,地球から月面へ輸送した建設機械を建設予定エリアまで遠隔操作で走行させる想定で,JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)敷地内から,JAXA種子島宇宙センター衛星系エリア新設道路等整備工事(鹿児島県南種子町)の現場の振動ローラを操作。相模原から振動ローラに設置されたカメラとコントロールモニターで,種子島の振動ローラ位置や姿勢,周囲の状況を確認して走行させる。その際,月と地球間で発生する通信遅延を人為的に挿入して操作性を検証しながら,月面のクレータなどを模擬した仮想障害物を避けて移動する実験を行った。

改ページ

次に,拠点建設の現場を想定したエリアでは,当社が開発した自動化施工システムA4CSELにより自動運転に切り替えられた自動振動ローラによって転圧作業を完了させた。

実験の結果,1,000km以上離れた場所で,公衆回線による通信容量や通信遅延の制約があっても,建設機械の操作性や安定性を損なうことなく遠隔操作が行えることを確認。遠隔操作から自動運転への切替え後は,自動運転によるスムーズな施工を行うことができ,月面での無人による有人拠点建設の実現につながる成果が得られた。

今後この研究成果を活用し,JAXAは,将来の有人月面活動における遠隔操作および自動運転技術の実現を目指すとともに,当社はA4CSELを遠隔地から管制する遠隔自動化施工や災害復旧で適用される無人化施工システムにおいて問題となる,通信遅延による作業効率の低下を防ぐ技術に展開していく予定だ。

JAXA相模原キャンパスからコントロールモニターを見ながら,
約1,000km離れたJAXA種子島宇宙センター現場の振動ローラを操作。
自動運転に切替え後は振動ローラがスムーズに転圧作業を行った

Topic

ミッションは「惑星保護」
……新たなるJAXA研究課題採択

宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に取り組むJAXAでは,様々な異分野の人材・知識を集め,宇宙探査に関わる研究の展開を目指している。

昨年10月,当社ではJAXA宇宙探査イノベーションハブの第7回研究提案募集で「無菌化およびバイオシグニチャー物質の除去を目途とした探査機の高度洗浄技術」の研究課題採択が決定し,関西大学と共同でプロジェクトがスタートした。

課題は「惑星保護」(下図)を目的にしたものだ。これは,宇宙探査や開発を進める際に探査機が地球から他の天体へ生命・生体物質を持ち出し,現地環境を汚染してしまうこと,また他の天体から地球へ持ち帰った生命・生体物質を含む可能性のある物質によって地球環境を汚染することを防ぐためである。このプロジェクトでは,探査機の汚染を防ぐ方法や評価法など,効率的な惑星検疫システムの構築をJAXAとともに目指していく。一方で,開発成果を活用した施設計画や感染症対策の提案(地上展開)も進める計画である。

改ページ

プロジェクトは,製薬工場,再生医療施設などの実績から施設の無菌化についてノウハウがある当社エンジニアリング事業本部(エンジ本)が主体となって取り組む。探査機の国際ルールを満たす清浄化技術(滅菌・洗浄)を開発すべく,①計測の対象や方法,②計測結果からの「清浄度判定」の方法検討,③清浄化する手段の検討の3点を軸に,何をどのように計測し,システム化していくのかといった基礎的知見の整理から始め,今後詳細に検討していく予定だ。

研究の中心メンバーである同本部石川秀課長は「2020年,『はやぶさ2』の惑星サンプル帰還に歓喜して以降,かねて関心があった惑星保護のテーマ公募を知りました。『空間殺菌』に関して特許を保持しているなど,エンジ本の知見やノウハウを活かせるのではと応募したところ,審査を経て採択されたものです。まず基盤開発から着手し,技術の社会実装に向けて関西大学,JAXAと役割を分担しながら研究開発を進めていきます」と意気込みを語った。

図版:エンジニアリング事業本部 石川 秀 課長

エンジニアリング
事業本部
石川 秀 課長

図版

惑星保護,すなわち宇宙探査ミッション上の環境保護について必要な理由と考え方を示す。
地球および探査地(他の天体)双方の環境を守ることが大切だ

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