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東京ポートシティ竹芝

エリアを結ぶ歩行者デッキ JR浜松町駅から竹芝ふ頭まで

東京湾に面するウォーターフロントの地が大きく生まれ変わる。竹芝エリア再開発の中心となるのが,
今年ついに開業を迎える「東京ポートシティ竹芝」だ。この建物を通じて海側とまちを大胆に結ぶのが,
竹芝ふ頭から首都高速道路の上を越え,将来はJR浜松町駅の橋上改札をつなぐ歩行者デッキ。
歩行者デッキに託された,まちのにぎわいを生み出す機能について紹介する。

図版:地図

歩行者デッキ(赤部分)は,JR浜松町駅と東京ポートシティ竹芝のオフィスタワー,レジデンスタワー,そして竹芝駅と竹芝ふ頭公園をつなぐ

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図版:開発計画全体のイメージパース。歩行者デッキが左右に延び首都高速道路上空に架かる

開発計画全体のイメージパース。歩行者デッキが左右に延び首都高速道路上空に架かる

東京ポートシティ竹芝

場所:
東京都港区/事業主体:アルベログランデ
(本計画を推進するため,東急不動産と当社が設立した事業会社)
設計:
オフィスタワー 当社建築設計本部・久米設計工事監理業務共同企業体
レジデンスタワー 長谷工コーポレーション
施工:
オフィスタワー 当社/レジデンスタワー 長谷工・当社共同事業体
用途:
オフィス,住宅,展示場,歩行者デッキほか
規模:
オフィスタワー S造 B2,40F 延べ約182,052m2
レジデンスタワー RC造 18F 262室 延べ約19,357m2
工期:
オフィスタワー 2016年5月~2020年5月/レジデンスタワー 2018年4月~2020年6月

防災対応力を備えた都市再編

水と緑に囲まれた竹芝エリア。伊豆・小笠原諸島行きの客船が発着する港と公園が一体となった竹芝ふ頭があり,旧芝離宮恩賜庭園,浜離宮恩賜庭園という国指定の名勝,特別名勝の庭園が存在する。オフィスビルに囲まれながらも水と緑と親しめる,都心のくつろぎスポットだ。

昨今,エリアの中心に更新期を迎えた施設が集積していることや,田町・品川の開発,浜松町駅周辺の新たなまちづくりの動きを背景に,防災対応力を備えた都市の再編整備が進められてきた。

その中核をなすのが東京都による都有地活用事業である「都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)」として,2013年から東急不動産と当社とが共同して開発を進めてきた「東京ポートシティ竹芝」である。地上40階のオフィスタワーとレジデンスタワーからなる職住隣接のエリアを形成し,新たな国際ビジネス拠点の発展を促す。今年ついに各タワーがオープンする。

エリアを結ぶ歩行者デッキ

まちの主要動線となるのが,JR浜松町駅と東京ポートシティ竹芝のオフィスタワーをつなぐ港区の歩行者専用道路としての歩行者デッキと,同オフィスタワーからレジデンスタワーを介して,新交通ゆりかもめ竹芝駅および竹芝ふ頭をつなぐ歩行者デッキだ。歩行者デッキは各タワーを通じ,JR浜松町駅,竹芝駅,竹芝ふ頭をバリアフリーで結ぶ。この開通により,浜松町,竹芝両サイドからの快適なアクセスと移動の安全性を支える。

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歩行者デッキの構想は,都市再生特別地区の公共貢献メニューとして,2012年に東京都に対して行った民間提案に端を発する。首都高速道路の上を越え,歩行者デッキを架けるという壮大な計画はどのようにして実現に至ったのか。

※現在工事中の東側橋台の完成により,現北口改札へのアクセスが可能になる。
将来はJR浜松町駅3階レベルの橋上改札に接続予定

首都高速道路の上を越え,浜松町駅と竹芝ふ頭をフラットにつなぐ。浜松町駅3階レベルのアクセスは将来的に接続予定

防災機能とにぎわいを

設置の理由はふたつ。ひとつは,JR浜松町駅の西側(大門方面)のにぎわいを,東側(竹芝方面)につなげられるような人の流れを確保する動線をつくること。これまで竹芝エリアでは,南北に走る大通りと首都高速道路によって,西側の浜松町エリアと物理的にも心理的にも分断されていた。そこで首都高速道路の上を抜け,信号待ちの必要もなく海側へと到達でき,浜松町エリアと竹芝エリアの人の往来を活性化し,まちの新たなにぎわいを創出する動線が考えられた。しかし,道路上空にものをつくり,かつ首都高速道路をまたぐ計画には,現実面でとてつもなく大きなハードルがある。

そこでひとつの決め手となったのが,「防災」の目的だ。災害が起きた時に内陸側に逃げられるルートをつくる,救援物資が海側から届くといったことが想定された。海と内陸をつなぐ安全な通り道とすることで歩行者デッキの機能を付加し,実現に向けた検討を進めていった。

新しい歩行者体験

首都高速道路の上空に歩行者デッキを一括架設する工事は,2018年7月7日,首都高速道路全面通行止めのもと一晩で行われた。あらかじめ地上で組み立てられた長さ22.3m,幅員6mの歩行者デッキをクレーンで吊り上げ,旋回させたのち架設。大勢の関係者に見守られながら無事完了した。

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首都高速道路の上空にデッキを一括架設。大型クレーンで歩行者デッキを吊り上げ旋回

架設後

完成した歩行者デッキは,地上から高さ約15m,JR浜松町駅から竹芝ふ頭までの全長は約500mにわたる。

歩行者デッキが通る周辺景観との調和も図られた。景観の専門家にヒアリングを行い,旧芝離宮恩賜庭園からの見え方にも配慮がされている。断面が五角形の特徴的な橋桁と,それを支える柱は六角形のフォルムで,上方に向かって細くなる形状だ。存在感を最小にとどめるスタイリッシュなデザインとした。

竹芝駅および竹芝ふ頭とレジデンスタワーをつなぐ部分が今年7月に,歩行者デッキの全体は9月以降,施設の開業とともに段階的に使用が開始される予定だ。

浜松町エリアからオフィスタワーに向かう際には,地上15mの高さから望む旧芝離宮恩賜庭園に,海やレインボーブリッジの眺望が期待できる。このまちの新たな魅力を体験できることだろう。

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浜松町駅側から見た歩行者デッキのイメージ

上から旧芝離宮恩賜庭園,浜松町駅出口,海岸通り沿いから見たイメージパース

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