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connect 未来の社会基盤を築く

HANEDA INNOVATION CITY

スマートモビリティがもたらす「移動」の新しい流れ

東京国際空港(羽田空港)のすぐ隣りで,先端・文化産業にまつわる最新施設を擁し,
世界に向けて「日本のものづくり」の創造・発信拠点を担っていく
「HANEDA INNOVATION CITY(略称:HICity(エイチ・アイ・シティ))」。
ここでは,スマートシティモデルプロジェクトであるHICityの「移動」のあり方に注目したい。
「スマートモビリティ」の導入による交通設計は、人やものの移動に対して
どのような展望をもたらすのだろうか。

図版:地図

HICityは羽田空港第一ゾーン跡地に位置し,羽田空港の「第3ターミナル駅」からひと駅の「天空橋駅」に直結する
(京急電鉄,東京モノレール)

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HANEDA INNOVATION CITY

場所:
東京都大田区
発注者:
羽田みらい開発
設計:
当社建築設計本部,大和ハウス工業
施工:
当社,大和ハウス工業
用途:
研究開発施設,先端医療施設センターほか
規模:
S・RC・SRC造 B1,11F 総延べ約131,000m2
工期:
2018年~2022年(予定)
開業スケジュール:
2020年夏まち開き(先行施設開業),2022年グランドオープン

先端・文化産業を軸に

国際化へのさらなる整備が進む羽田空港。今年の3月,国際線ターミナルは「第3ターミナル」に改称,「第2ターミナル」と併せた国際線の運用が開始された。そして今夏,官民連携事業として進められてきたHICityが,いよいよまち開きする。

2020年開業エリアは,自動運転技術の研究開発・実証実験を行う「先端モビリティセンター」,「水素ステーション」などの先端産業施設,ライブホールなどの文化産業施設を予定。2022年のグランドオープンでは,「先端医療研究センター」や「アート&テクノロジーセンター」の開業を予定する。

HICityは歩車分離を交通計画のコンセプトに,歩行者の主要動線を2階に,自動車動線を1階に集約。2階デッキ部分「イノベーションコリドー」は,HICityのすべての施設と結ばれており,来街者はコリドー沿いに安全・快適に移動ができる。約200mにおよぶイノベーションコリドーは,さまざまな施設が連なるHICityの各所で,人の交流や連携を誘発する役目を果たす。

図版:HICityの各棟をイノベーションコリドーが結ぶ

HICityの各棟をイノベーションコリドーが結ぶ。青=先端産業施設,ピンク=文化産業施設で分けられる

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図版:「イノベーションコリドー」イメージ

「イノベーションコリドー」イメージ。HICityでは生産性向上への課題対応に,スマートロボティクスの導入が検討されている。右下にその自動清掃ロボット,中央付近にはパーソナルモビリティで走行する男性が見られる

まちをつなぐスマートモビリティ

HICityは,国土交通省から選定された「スマートシティ」の「重点事業化促進プロジェクト」のひとつであり,別の地域で抽出された課題のデータ検証を行うプラットフォームとしても活用される。テストベッドとなるスマートシティを形成し,羽田空港を擁する大田区全体が抱える課題解決にも資していく。

大田区では交通,生産性向上,健康,観光・地域活性化といった課題があり,各課題の改善に向けた検証を行っている。そのうちのひとつ,交通弱者の移動手段の不足に対して,HICityでは「スマートモビリティ」を導入。多様な交通モード,シームレスな移動サービス,省エネルギー環境の形成,モビリティによる新しい移動体験の提供を目指し,次の3つの基軸が検討された。スマートモビリティが生み出す新しいサービス,それに対応した都市空間,サービスを支えるデータ基盤像,これらを実現させたものが,HICityに実証導入されている。

図版:HICityでは日本初の自動運転バスが循環する

HICityでは日本初の自動運転バスが循環する。
2022年以降,公道循環の運行も予定

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シームレスバリアフリーを実現

モビリティは,HICity1階を循環する自動運転バス,2階イノベーションコリドーを循環し棟間移動をつなぐグリーンスローモビリティ,同じくコリドーを走行するパーソナルモビリティ(自動運転車椅子)が予定されている。

それらが通行する道路と建物の関係にも配慮がなされている。徒歩,パーソナルモビリティ,自動運転バスなどが走行する水平方向移動,エレベーター乗車による垂直方向移動,水平〜垂直への転換移動,この3つをシームレスにつなぎ,多様な交通モードをワンストップで接続するバリアフリーを実現する。この実現にあたっては,3次元マップ=空間情報データ(BIM)の構築が不可欠で,ここに当社独自技術「3D K-Field」が活用されている。これにより,リアルタイムでモビリティの走行状況が可視化される。

こうした多様な交通モードを一本化して利用者に提供すべく,マース(Mobility as a Service)の考え方に則りサービス化が進められる予定だ。

いち早い先端技術の導入で未来をつくっていくHICity。施設のエンタテインメント性を楽しむとともに,新しい移動体験を通じたまちのあり方に今後注目したい。

※MaaS(Mobility as a Service):複数の交通手段をスマホなどから一括で検索,予約,支払いなどが行えるようにし,利便性の向上や交通・環境問題にも寄与しようとする考え方

図版:パーソナルモビリティ移動概念図
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「見える化」を築く
「空間情報データ連携基盤 3D K-Field」

当社開発技術「空間情報データ連携基盤 3D K-Field」。エリア内のモビリティ走行状況を3次元の空間情報として可視化する,スマートモビリティのサービス提供のコアとなる技術だ。この技術は,HICityエリア内のさまざまな活動の「見える化」の基盤をつくっている。

まちの中心には,HICityの3D化されたサイバー空間が案内図として展示される。管理者側では,エリア内の自動走行車両やスマートロボティクスの位置情報,ビル情報などの統合データの一元管理が行える。また,その画面から階層の深い各制御システムへと連携する。たとえばスマートロボティクスにおける連携では,エリア内の清掃ロボットの電池残量,警備ロボットの感知情報の受信,天気や交通情報といった外部データの取り込みから,各ロボットへの指示やプログラムインプットなどの制御が行える。「3D K-Field」はデータ公開基盤としてAPIを公開し,外部システムとさらなる連携をはかっていく予定だ。

尚,今後「3D K-Field」活用は当社グループ会社「One Team」が担う。

※API(Application Programming Interface):ソフトウェアやアプリケーションの一部を外部に公開し,第三者開発のソフトウェアと機能を連携できるようにすること

図版:3D K-Fieldの空間情報画面

3D K-Fieldの空間情報画面

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