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特集 2020東京 高機能都市の発展を支える 交通インフラの新しいかたち

2020年代に入った都市・東京の変化に迫る。
各所で進む交通インフラの拡張は,東京の都市機能をどのように支え,また発展させていくのだろうか。
今月の特集では,アクセスの要所をつなぐ「connect」をキーワードに,
まもなく開業する大型施設や周辺エリアを多機能的に結ぶ交通インフラ,
そしてICT,IoTを軸にした社会基盤の構築が,未来に果たす役割を紹介する。

interview 世界に次の東京を

都市計画・都市交通の分野で幅広い研究活動を行い,
さまざまな都市計画や東京五輪関連の委員を歴任されてきた岸井隆幸教授。
現在の東京とこれからについてお話をうかがった。

図版:dmy
日本大学 理工学部 土木工学科
岸井隆幸 特任教授

きしい たかゆき
1953年兵庫県生まれ。
東京大学工学部都市工学科卒業,
同大学院修士課程修了。
建設省(現国土交通省)勤務を経て
1992年日本大学理工学部専任講師,
1998年同大学教授,2018年より特任教授。
2010年~2012年日本都市計画学会会長。

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国際化とともに発展

1964年のオリンピックを契機に現在の東京の基盤ができました。当時建設されたのは新幹線,首都高速道路,国道246号線,羽田モノレール,地下鉄日比谷線などですが,その後も着々と主要道路や鉄道の整備が進みました。東京が安定したインフラを抱える都市だからこそ,次のオリンピック・パラリンピックの実現があります。

「東京」というまちはつねに変化しています。その変化のなかで何でも受け入れてしまうのが東京のアイデンティティだとも言えます。ほぼ30年に一度,大きな変化・更新が起こり,新しいビジネスや国際化に対応してきました。次の時代に向けたビジネス環境をつねに提供し続けていける特性は,世界の他の都市にはなかなかないものです。

昨年のラグビーW杯では多くのインバウンドがありましたが,初めて東京を訪れた人には,生産・企業活動も大変機能的で,安定した社会基盤をもつフレンドリーな国という好印象を残したようです。日本人は少しシャイなところがありますが,それも含めて日本を見た彼らが世界に向け,東京の魅力をどんどん発信していってくれることを大いに歓迎します。次のオリ・パラは,世界に「次の東京」を見てもらうまさに好機だと思います。

その入り口,ショーケースである羽田空港では,空港の新しいかたちを提案しています。ほぼ“空港の中”と言ってよいエリアに,日本の先端産業や文化イベントを行う施設を備えた「HANEDA INNOVATION CITY」ができる。日本が世界とのつながりを強化している証としても強く印象づけられるでしょう。

ICT,IoT技術を用いたコミュニケーションツールも,もはや現代に欠かせない公共インフラではないでしょうか。自動運転技術にも可能性を感じます。無人の車がまち中をスイスイ走り回るにはまだ時間がかかりそうですが,空港のようにさまざまなものがコントロールされているエリアでは,早い時期に導入されていくでしょう。

東京の魅力発掘

東京はJR山手線という環状線を中心とした鉄道網と地下鉄の密なネットワークに支えられた,世界的にも稀有な都市です。公共交通を使えば10分程度で他のエリアに到達でき,その先にはエリアごとの文化が広がる。多様なエリアが強い結び付きをもって東京全体の魅力をかたちづくっています。

東京を導いてきたTOD(Transit Oriented Development:公共交通指向型開発)は,開発途上国からも注目されています。自動車に依存せず,公共交通機関に基盤を置いた都市開発を指しますが,今,東京では複数の鉄道事業者が協力して,駅・ターミナルの開発とマネジメントをセットで展開しています。個別のTODは当たり前,今は協力しあって,場合によっては土地の交換も行いながら,地域の価値を上げるマネジメントに取り組んでいます。こうしたTOD&M(Management)の手法は世界に向けて誇れるものです。

東京の都市は水辺を囲むようにして新しく生まれ変わろうとしています。オリ・パラに向けてスポーツ施設が整備された臨海エリアへの交通機関として,虎ノ門エリアからBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)の運行もスタートします。また,隅田川の水運ネットワークも充実されていきますので,浅草や羽田空港など東京のさまざまなエリアを結ぶ面白い水上の軸ができていきます。竹芝・浜松町の歩行者通路に加え,浜離宮を挟んで竹芝と築地をしっかりと結び付けるという計画もあります。こうした動きによってウォーターフロントの価値が上がり,東京の中心が南のほうに下りてくるのではないでしょうか。

今後は臨海エリアに向かう鉄道のさらなる強化を期待したいのと,大きなプロジェクトのみならず,東京のそれぞれの地域で起きている,まだ私たち自身が気づいていない東京の魅力を発掘していく必要があると思っています。「日本らしさ・東京らしさとは何か」をもっと考え,努力や知恵を出しあって磨いていく,このことが,2020年以降の東京の魅力を生み出していくはずです。

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