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福島の今を知る[大熊町編] 廃棄物処理

写真:大熊町仮設焼却施設全景(現場撮影)

大熊町仮設焼却施設全景(現場撮影)

大熊町における廃棄物

中間貯蔵施設の整備によって県内の除染廃棄物等の早期撤去完了が期待されるなか,大熊町では,避難指示解除を目標に,町内の廃棄物処理が本格化している。当社は三菱重工環境・化学エンジニアリングと共同企業体を組み,環境省の発注による「平成29年度から平成32年度までの大熊町における廃棄物処理業務(減容化処理)」を担当している。この業務は,中間貯蔵施設建設予定地内に仮設焼却施設を建設し,大熊町等で発生した廃棄物(津波廃棄物・家屋解体廃棄物・片づけごみ・除染廃棄物)を焼却することで減容化を行う事業である。2016年5月に着手した業務は,仮設焼却施設を構成する焼却施設,灰保管施設,これらに付随する施設の建設が既に完了し,2018年2月より処理業務が本格始動している。

当現場を率いる松原武志所長は,環境本部で土壌汚染に関わるソリューションを提案してきた。震災後は,そのノウハウを活かし,「災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)」「富岡町廃棄物処理業務」の現場で活躍した。「当業務において,当社は焼却設備を除く各施設の設計・施工,廃棄物処理業務の運営管理を担当します。入札段階から,富岡町廃棄物処理業務のメンバーが主体となり,富岡町での経験をもとに様々な要素技術を検討し,技術提案書づくりに尽力しました。仮設焼却施設等の建設においても彼らの経験値が活かされ,品質を確保しながら経済性・生産性の高い施工が実現しています」。松原所長は,経験豊富なメンバーたちに信頼を寄せる。

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空間放射線量率の低減策

今回,これまでに経験のない「放射線管理・モニタリング」が運営管理の業務内容に加わり,現場では専任の社員を配置し対応している。着工前の業務用地は,平均空間放射線量率が高線量であったため,作業員の被ばく,作業員確保や資機材調達の難航,保護具による作業効率の低下等が懸念された。この課題を解決するため,空間線量率低減に対する様々な対策方法を検討した結果,「浅層混合撹拌工法」が効果を発揮した。

この工法は,地盤改良用機械であるスタビライザーを用い,地表面に堆積した放射性物質と地表面下の低線量土壌を混合撹拌させることで,表面放射性物質濃度の低減を図る。「ここでは,除去土壌の保管場所がないため,除染は適用できませんでした。この工法の採用にあたっては,撹拌深度・撹拌速度を変えた試験施工を繰り返し,最適化を図っています。さらに,敷地境界線に遮へい土のうを2段設置,業務用地全体に15cm程の砕石を敷き均すことで,簡易の保護具でも作業できるまでに空間線量率を低減させることができました。今後,この手法が中間貯蔵関連工事等の被ばく低減対策に寄与できればと考えます」(松原所長)。

写真:松原武志所長

松原武志所長

町をきれいにするよろこび

当業務では,施設建設後約4年間を事業期間として,約22万6,000tの廃棄物処理を行う計画となっている。大熊町で発生した廃棄物は,可燃物が選別された状態で仮置き場等に保管されているため,処理対象物は可燃物のみとなる。ストーカ式の焼却炉1基で,1日あたり200tの可燃物の焼却を行い,廃棄物を約1/20までに減容化する。「現在,処理業務の運営に入りました。仮置き場等からの廃棄物の運搬,焼却処理,仮設灰保管施設での保管作業ともに,順調に推移しています。私も浜通り地区に来て4年近くが経ちましたが,大熊町周辺の風景はまだあの時のまま残っています。今はこの町をきれいにしたいという思いが,我々のやりがいにつながっています。避難指示解除の早期実現のために,作業員の被ばく管理を徹底し,業務遂行を目指します」(松原所長)。

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大熊町仮設焼却施設の整備プロセス

写真:大熊町仮設焼却施設の整備プロセス

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福島復興を担う社員たち 大熊町における廃棄物処理業務(減容化処理)

写真:大熊町における廃棄物処理業務(減容化処理)

写真:東北支店 大熊町減容化処理業務事務所 疋田哲也 工事課長(土木)

東北支店
大熊町減容化処理業務事務所
疋田哲也 工事課長(土木)

関西支店から浜通りに来て,約3年半経ちます。「富岡町廃棄物処理業務」の工事担当者として着任した当初は,宿舎も備わっていない状況で,廃棄物処理という右も左もわからない業務に繁忙を極め,本当に大変でした。それは皆も同じであり,こうして苦楽を共にした仲間たちとの絆は特別なものです。今回,当業務の入札にあたっては,松原所長がコーディネーター役となり,富岡のメンバーを主体に提案書づくりに没頭しました。

現在は,監理技術者として発注者やJV,社内関係者との交渉役を務めています。富岡での経験は非常に有効であり,積極的に意見出しや調整を行っています。ここでの仕事は,当然土木だけの知識では対応できず,建築や環境,機電等の知識も必要です。こうした鹿島の総合力での仕事のなかで,その中心に土木がいることに誇りを覚えます。そして,ニュース等を通じ,自分たちが担う仕事で社会が動いていることを実感できる時,大きなやりがいを感じます。

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写真:東北支店 大熊町減容化処理業務事務所 成田周平 所員(土木)

東北支店
大熊町減容化処理業務事務所
成田周平 所員(土木)

私も疋田工事課長と同様,「富岡町廃棄物処理業務」から当現場に着任しました。疋田さんは大学の研究室の先輩でもあり,関西支店では同じ現場を経験した間柄です。今回,私はスキルアップのために,自分から手を挙げて設計業務を希望しました。施設配置,造成・外構計画やプラントを担当するJVパートナーの三菱さんと様々な協議・調整を重ね,基礎設計や地盤改良設計を行うなど,非常にやりがいと責任のある職務でした。監理技術者である疋田さんをはじめ諸先輩方には,色々とアドバイスや提案をいただき,富岡での経験を活かして経済性・施工性に優れた設計を実現することができました。ここでは設計・計画にとどまらず,施工方法,処理設備にも様々な改良が加えられ,機械化,使用性の向上,コンパクト化を図っています。廃棄物処理業務のノウハウは,石巻から富岡へ,富岡からここ大熊へと受け継がれ進化しています。私も,この技術力を次に引き継いでいけるよう任務を全うしたいと思います。

写真:東北支店 大熊町減容化処理業務事務所 有馬 毅 所員(土木)

東北支店
大熊町減容化処理業務事務所
有馬 毅 所員(土木)

2016年6月より,施工および放射線関連業務の担当者として環境本部から当現場に着任しました。環境本部では,新エネルギーという今回とは畑違いの分野でしたので,放射線取扱主任者の資格を取得し,専門知識を高める努力をしている日々です。

放射線管理・モニタリング業務は,建設段階から施設運用中に至る,作業員の被ばくを低減するための対策・措置等を法律に則ったルールを決めて管理します。建設時に,空間放射線量率の低減のために提案した「浅層混合撹拌工法」は,皆で相談しながら到達した妥当策でした。私も重機の撹拌深度・撹拌速度実験等を行い,基準値以下の線量低減を実現できました。今後は,施設運用時における作業員の放射線管理について,蓄積したデータをもとに管理業務を省力化する検討を行っていきます。

私は,以前南相馬の現場におり,福島への思いも強く,今回,家族を連れて赴任しました。しっかりと腰を据えて,福島復興に少しでも役立てるよう頑張りたいです。

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