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Solutions-2 運用から災害対策まで,多彩なツールで病院経営をサポート

日々の患者満足度,災害時の医療継続計画などの病院経営の課題を
多彩なシミュレーションツールを生かし,対話を重ねることで解決

Needs 外来待合の混雑緩和,待ち時間の短縮を図りたい→Solutions 行動モニタリングとシミュレーションで効率的運用の提案

院内で患者がもっとも多く利用する場所に外来の待合がある。混雑が少ない快適な空間を提供したくても,使えるスペースの限界に頭を悩ませる病院は多い。

座間総合病院(神奈川県座間市)は,診療科目19科目を有する総合病院として,2016年に当社の設計施工で新規開院。米軍キャンプの一部日本返還予定地を敷地とし,国有地の定期借地権制度を採用した全国初のケースとして注目を集めた。

新病院の設計に際し,近隣で同法人が運営する海老名総合病院と海老名メディカルプラザにおいて,患者の来院から帰宅までの時間帯別の行動モニタリングや窓口での対応時間の調査を実施した。そうして得られた患者数情報や各科ごとの診察時間,待ち時間などを分析し,新病院の待合スペース利用状況を想定。窓口の適正数および配置の検討,座席の配列や運用について提案を行った。

図版:シミュレーション結果をもとにピーク時における待合空間の運用方法を協議

シミュレーション結果をもとにピーク時における待合空間の運用方法を協議

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Interview 「みんなを,笑顔に。」する快適な病院づくり

病院は好んで来る場所ではありません。だからこそ患者さんにとって少しでも快適で,暖かみのあるデザインを希望しました。当院はどこにでも採光が行き届き,居心地がよいと患者さんから評判です。特に総合待合はカーペット敷きでインテリア全体に高級感があり,心地よい雰囲気だという声を聞きます。診察が終わった後もテーブルのある席に腰掛け談話される方も見受けられ,時間帯によらず活用されているスペースになっています。

来院される患者さんは,例えば検査と診察を受ける方,投薬のみの方などある程度動き方がパターン化できるように思えます。ですから,鹿島からシミュレーション技術を用いた設計を提案された際にはいいアイデアだと思いました。診療前の患者さんで各科の待合が混み合う午前中は,比較的人が少ない総合待合でもお待ちいただくという運用面の提案をもらったので,病院側ではデジタルサイネージを工夫して2段階の呼出しを行い,診察室にスムースに移動していただいています。

写真:渡 潤 病院長

社会医療法人
ジャパンメディカルアライアンス
座間総合病院
渡 潤 病院長

このたび当院では開院から1年半を機に外来患者さんの満足度調査を行いました。「総合待合の設備や雰囲気」「診察待ち,支払いまでの待ち時間」などの項目において,調査会社のもつ全国病院平均値を大きく上回っていて,嬉しい結果です。

スタッフからも,バックヤードの廊下なども明るく,広くて快適だと喜ばれています。長時間を過ごすスタッフや看護師,医師の働きやすさは患者さんにも伝わりますから,こうしたこともアンケート結果に現れているのかと思います。

シミュレーション技術で院内動線,諸室レイアウト,座席配置など「物理面」での妥当性を検証し,デザイン力で「心理面」での居心地をよくする設計で,スタッフのコミュニケーションが活発になり,患者さんの足が向くような病院になっていると思います。当院がキャッチコピーに掲げる「みんなを,笑顔に。」する病院にぴったりの建物ですね。

座間総合病院

場所:
神奈川県座間市
発注者:
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス
設計:
当社建築設計本部,入江三宅設計事務所/
インテリア
設計:
イリア/規模:S・RC造 6F 352床
延べ20,839m2
工期:
2014年11月〜2016年2月

(横浜支店施工)

写真:座間総合病院外観

座間総合病院外観

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Needs 災害時・非常時でも病院機能を維持したい→Solutions 地震被害予測と職員へ向けた災害時動画教材の作成

MCP(Medical Continuity Plan,医療継続計画)は医療機関がいま直面している課題のひとつだ。地震などの災害時には,建物やライフラインが被害を受ける恐れがある一方,医療サービスの需要は平常時を上回る。当社は制震や免震構造,非常用発電装置などのハード面の提案に加え,ソフト面でのサポートも行っている。

当社には過去の大地震時のインフラ復旧実績データの蓄積があり,そのモデルを活用し,全国各地で災害時のライフラインの機能支障日数予測が可能だ。また道路の被害に応じ,病院に集まれる医療スタッフの人数と所要時間を割り出す参集予測シミュレーションの技術も保有しており,全国の病院にMCP策定のエビデンスを提供している。

図版:q-NAVIGATORの仕組み

q-NAVIGATORの仕組み

ほかにも,建物に複数設置した加速度センサで地震後の安全性をいち早く高精度に判断し,避難の要否判断を支援する「q-NAVIGATOR」(小堀鐸二研究所開発)も当社グループでは推奨している。

建物の引渡し時には,非常用電源が作動する様子や機器の操作方法をスタッフに伝えるオリエンテーション,および災害時の建物の使い方を示した動画作成を実施している。これらは災害時に建物の機能を十分に生かすための有効なツールとなる。

写真:災害時想定教材動画の例

災害時想定教材動画の例。一時停止したエレベーターを復旧する手順について説明している。その他,機能継続に必要な場面を教材化している

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Needs 改修はしたいが休診期間は短くしたい→Solutions パネルユニット工法で短工期での改修を実現

機能強化やインテリアの刷新などを目的に改修工事を希望する病院は多いが,工事のための休診期間は,患者に負担を強いるのみならず経営面でもネックとなる。そこで当社は,工場生産のパネル型メディカルコンソールユニットを積極的に活用した短工期改修のソリューションを築き上げた。

パイロットケースとなった井上医院(東京都中野区)では,通常工法の約半分の期間で改修工事を行い,わずか3日間の休診日という短工期を実現。快適な内装に一新され,改修後は新規患者が増加し,医院と患者の双方から高評価を得ている。

写真:改修後の井上医院処置室

改修後の井上医院処置室

Column グループ連携で取り組むソリューション,短工期病室バリューアップ

鹿島グループ各社の得意分野の力を重ね合わせ,病院など医療施設のニーズに応える企業コンソーシアム「MEDi-K」では,「SREEP(Sleep & Relax Excellent Environment Panel)」による短工期での病室バリューアップに取り組んでいる。

図版:SREEP

当社と家具什器メーカーのオカムラは共同で,睡眠環境向上技術が標準で内蔵されたパネルユニットSREEPを開発した(共同特許出願中)。病室を改修する際,患者,経営者にとっては休床期間が負担となるが,SREEPは工場で製造されたパネルユニットのため,工事期間を通常よりも大幅に短縮でき,病院運営に支障をきたさない改修が可能だ。

このMEDi-Kコンソーシアムにおいてファイナンス機能を担う鹿島リースは,医療施設などの建物を病院に代わって建設し,これを一定の賃料で貸し出す建物リースや,建物リニューアル工事に対するリース,CT(超音波診断装置)・AED(自動体外式除細動器)などの医療機器を含む各種動産のリースを行っている。さらに今後は,このSREEPのリースにも取り組んでいく。リースを利用することにより,高度な環境設備や高価な機器を必要とする病院に対し,新設や移転,改修にかかる初期投資を抑えた事業計画の提案が可能だ。

グループ連携でのひとつのソリューションであるSREEPを含め,当社では計画から工事完了後の建物管理まで長きにわたって病院をサポートする体制を整えている。

図版:短工期病室バリューアップのSREEPのパンフレット

短工期病室バリューアップのSREEPのパンフレット

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