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相次ぐ自然災害や都市の高度利用化を背景に,いま地盤への関心が高まっている。
当社では20年以上前から独自に地盤調査車を開発し,建物を確実に支えるために,支持層分布の把握に努めてきた。
昨年,その進化形となる小型地盤調査車「miniGeo®」を新たに開発。
地盤調査車の実機としてユーザビリティを高めた新型車の性能に迫る。

調査機能に特化した新型機

軟弱な地盤に建物を構築する場合,杭を硬質な支持層まで確実に到達させる必要がある。高品質で合理的な建物基礎の設計や施工を行うためには,支持層の分布を正確に把握することが欠かせない。

当社では,複雑な支持層の分布を高い精度で調査できる小型地盤調査車「miniGeo®(ミニジオ)」を新たに開発し,昨年12月から本格的な運用を始めた。miniGeoに先行する地盤調査車としては,1994年に誕生した「GEO-EXPLORER®(ジオ・エクスプローラー)」がある。2010年には調査精度・効率を向上させたこの後継機が登場。運用を継続的に進めてきた。miniGeoはその主要な機能を引き継ぎ,大幅に小型化したものだ。

性能面での最大の特徴は調査機能を「MWD(Measurement While Drilling)検層方式」に特化したことにある。MWD検層とは,回転打撃ドリルで地盤を削孔する際に必要なエネルギー量を指標として地盤の硬さを調べる,当社独自の調査方式である。この方式自体はGEO-EXPLORERからすでに搭載されており,約250件の実績を誇る。同機が研究・開発にも活用できる汎用性を備えていたのに対し,miniGeoは地盤調査の実機として機能を先鋭化させた。

写真:1994年より運用中のGEO-EXPLORER

1994年より運用中のGEO-EXPLORER。写真は2010年にアップグレードされた後継機

写真:新たに誕生した小型地盤調査車miniGeo

新たに誕生した小型地盤調査車miniGeo

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地盤調査とMWD検層方式

建物基礎の設計施工のための地盤調査では,標準貫入試験を併用した「ボーリング調査」が一般に行われるが,この調査は,多くの手作業をともなうことや削孔能力の低い回転式ドリルを用いることなどから,調査数量が増えると完了までに長期間要するのが難点だ。一方,MWD検層方式は,削孔能力の高い回転打撃ドリルを用い,手作業をほとんど介さずに連続削孔することで深い硬質層まですばやく調査できる。MWD検層方式を採用することで,一般的なボーリング調査と比べて調査時間を約1/10にまで短縮でき,短期間に多地点での調査が可能となる。

写真:一般的なボーリング調査の様子

一般的なボーリング調査の様子

実際にボーリング調査と標準貫入試験を行った場合【図A】とminiGeoを用いた場合【図B】の例を比べてみよう。図Aは敷地内5ヵ所で調査した結果の分布を示し,図Bではさらに32ヵ所の追加調査を行った結果である。図Aでは支持層が下から上へとほぼ均等に傾斜しているのに対し,図Bでは傾斜の度合いが非常に複雑化している。調査地点の間隔がきめ細かくなるほど,支持層の分布をより正確に導き出せる。

図版:基礎杭と支持層のイメージ

基礎杭と支持層のイメージ。複雑に分布する支持層に杭を確実に到達させるには,設計段階での入念な地盤調査が必要となる

図版:通常の調査とMWD検層による追加調査結果の比較

通常の調査とMWD検層による追加調査結果の比較

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小型化で高まる機動力

地盤調査は整地されていない場所で行われることが多い。雨天時にはぬかるみができ,また調査地点が傾斜地や敷地の境界部であれば,大型車両の走行はますます困難となる。GEO-EXPLORERからminiGeoへの小型化は,こうした場合にも容易に対応できる機動力の向上がポイントだった。足回りにはクローラを採用し,未整地の条件下での走行性を確保した。車両の長さを約1/2にまで縮減したことで狭隘部での旋回も容易である。また総重量を7.5tと約1/3にまで抑えた大幅な軽量化によって10tトラックでの運搬が可能だ。

写真:miniGeoでの調査

miniGeoでの調査。足回りにクローラを採用し,未整地における対応性を大幅に向上させた

図版:miniGeoとGEO-EXPLORERの比較

miniGeoとGEO-EXPLORERの比較。車体の長さは約1/2,重量は約1/3まで小型化し,機動力が飛躍的に向上した

こうした小型化が実現できたのはICT技術の発展によるところが大きい。GEO-EXPLORERでは大型車両に調査から計測,結果表示までを一括処理できる装置を搭載していたが,miniGeoでは省スペース化を実現。インターネット上のクラウドサーバを介したデータ連携や,GNSS衛星測量などの活用によって,計測・データ処理能力が向上するとともに,現地でのオペレーションも省人化できるようになった。

図版:クラウドサーバを介したデータ連携・GNSS衛星測量のイメージ

クラウドサーバを介したデータ連携・GNSS衛星測量のイメージ。このシステムによって計測やデータ処理能力,作業効率が飛躍的に高まった

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地盤調査ニーズの高まりとともに

国土交通省は2016年3月に,基礎ぐいの設計における留意点をまとめ,地盤調査を十分に行うことの重要性を改めて明確に示している。また近年は,頻発する自然災害やこれにともなう建物被害,都市部の高度利用化を背景にBCPの観点から事業者の地盤に対する意識は高い。当社では今後も増加する調査ニーズに応えるとともに,miniGeoとGEO-EXPLORERを積極的に活用することで,基礎・地盤工事の合理化と品質向上に努めていく。

裾野を広げるために展開体制を整備中

地盤研究一筋の経験からわかるのは,場所によって支持層の分布は異なるということです。前もって必要な調査数量を過不足なく決めることは困難です。

地盤調査は,まず一定の間隔でやってみて想定より変化が激しければ,段階的に密な間隔で追加調査を行うのが基本です。GEO-EXPLORERの開発に着手した30年近く前は,適用できる調査手法が一般的なボーリング調査に限られ,この基本を効率よく実践する手段がありませんでした。当時は今よりも調査点数が限られ,「あともう1ヵ所でも多く調査できれば,より有効な対応ができるのに」としばしば感じたものです。このような思いがGEO-EXPLORERの開発の原動力になりました。近年,杭の支持層を正確に確認するニーズが急速に高まっています。技術研究所ではこのニーズに広く対応できるようminiGeoの展開体制の整備を進めています。ぜひ積極的な活用をお願いします。

写真:miniGeoの開発に携わった技術研究所建築構造グループ担当者

miniGeoの開発に携わった技術研究所建築構造グループ担当者。左から玉川悠貴研究員,武居幸次郎グループ長,定本明男技能員

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