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CUT 2: 主体的な学びの場

学校施設がつくる日本の未来

学校をつくることは日本の未来をつくることと直接結びつく。校内に生徒が自主的に学ぶことができる場をつくることで,生徒の成長を促し,結果的に日本の未来を担う人材が育つといえるからだ。

従来,日本では座って先生の話を聴くスタイルの授業が長く行われてきた。一方欧米では発表や討議,個別学習を重視してきた。授業のスタイルに合わせて教室を開放的な空間にしたり,一人で集中して学べる場やグループでリラックスして学ぶことができる場を設けたりするなど,多様な学びの空間・場を持った学校が欧米には数多く存在する。欧米を中心に起こった教育の在り方や授業形態の変化を取り入れる動きが日本でも進んでいる。

アクティブ・ラーニングの重要性

最近,日本でもアクティブ・ラーニングと呼ばれる自ら発表し,グループで討議するという体験型・対話型の学習の重要性が見直されるようになってきた。生徒一人ひとりが課題を自分事として捉え,周囲と協働しながら解決する。知識や技能も身につき,課題解決や新しい価値を創造する資質・能力も育成される。また, ICTを採用する学校も増えている。アクティブ・ラーニングを進めていくためには,受け身の学習や教育内容,方法を変えるだけではなく,そのための教室やスペース,設備などを見直し,整備する必要がある。教育内容や方法などのソフト面に加え,アクティブ・ラーニングを支援するための校舎や教室,設備などのハード面も変えていく必要があるということだ。

図版:巣鴨中学校・巣鴨高等学校

巣鴨中学校・巣鴨高等学校
開放感と落ち着きを兼ね備えた教室。外のクスノキやヒマラヤスギを身近に感じる

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図版:多摩美術大学 アートテーク

多摩美術大学 アートテーク
トップライトとサイドライトによる自然光を採り入れた自由デッサン室。室内にはLED照明器具を採用している

図版:新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部1号館

新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部1号館
すり鉢状の吹抜けが,上下階にも自然と視線が行き交う「見る見られる」の関係を生み,学習意欲向上に寄与。吹抜けまわりには,学生のために様々な居場所が設けられている

学校の場づくり

生徒たちが主体的に取り組み,深い学びに繋げるための解決策は何か。具体的にはアクティブ・ラーニング型教室や多目的スペースの整備,課題解決型学習,情報機器活用に対応する図書館,ラーニングセンターの整備などが挙げられる。学びのスタイルに合わせて既存の教室に新しいツールを導入し,効果を検証することなども含め,今後も時代や新しい学びに適した環境づくりが求められるだろう。

新しい学びの空間を
生徒とともにつくる

未来を担う生徒たちが新しい価値を創造できる人材に成長していくためには,自ら考えて判断し行動する力が必要であり,学校にはそうした精神的に自立した生徒を育むための学びの空間が必要とされる。当社では,そのような次世代の学びの空間づくりに,生徒や教職員とともに取り組んでいる。ここでは当社の代表的な取組みを3つ紹介する。

まず1つめは,学校の主役である生徒たちの想いを大切にし,当社独自の手法である生徒参加型のスクールプロジェクトで学びの空間づくりを展開している。生徒たちが参加するワークショップには,知的好奇心の喚起や将来の進路選択,愛校精神の形成,教室での勉強と実社会の繋がりを実感できるなどの効果があり,生徒たちは積極性や発言力を身につけることができる。

続いて2つめは,様々な形態のラーニング・コモンズという,クラスや学年を超えて人と情報が出合い,ここから議論や交流,自発的な学習意欲などを引き出す新しい学びの空間だ。当社では,生徒や教職員のアイデアによって使い方が無限に広がる可能性を秘めた空間をつくっている。

3つめは,生物の多様性を維持し,持続可能な社会の形成を担う未来の人材の育成だ。当社はミツバチやヤギを通した環境教育を学校で実施している。ミツバチの授粉やヤギによる雑草の採食が地域生態系の活性化に繋がる過程が確認でき,実際の生物と触れ合える空間づくりを進めている。

図版:台北日本人学校

台北日本人学校
メディアセンター(図書館)はラウンド型のブックタワーや,調べ学習コーナー,読み聞かせコーナーを備え,多様で自主的な学習の場(ラーニング・コモンズ)となる

図版:慶應義塾大学日吉記念館

慶應義塾大学日吉記念館
通常は体育館として利用され,温熱環境に配慮した自然換気にも対応する。中庭に面するホワイエは,多目的な利用が想定される

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図版:桜美林大学東京ひなたやまキャンパス

桜美林大学東京ひなたやまキャンパス
図書館の中心に広場のような空間を設けている。読書だけでなく,発表,展示など様々な表現活動が行われる。また個人学習,グループワークなど,書架で区切られたスペースが点在し,ラーニング・コモンズとして多目的な利用が可能だ

図版:順天堂大学 新研究棟

順天堂大学 新研究棟
エントランスホールが利用用途に応じ可変するコラボスペースになる。交流による偶発的発見の場を創出する

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