ホーム > KAJIMAダイジェスト > May 2020:特集 これからの学びのかたち > CUT 5: 将来への計画 学校BCP

CUT 5: 将来への計画 学校BCP

生徒の命を守る学校BCP

BCP(事業継続計画)とは,企業が緊急時や災害発生時など危機的状況下に置かれた場合でも,事業継続や早期復旧ができる方策を準備し,生き延びることを可能としておくための計画書のことを指す。東日本大震災では企業のみならず,学校にとってもBCPが重要課題として認識されることとなった。当時避難所となった公立校はもとより,私立校の多くも帰宅困難となった生徒たちのため,体育館や教室などを一時避難場所として使用したが,防災施設・設備として整備されていた学校は決して多くはなかった。

災害に強い学校をつくるためには,平常時から被災後を想定した復旧対策の優先順位や対応体制,ルールづくりといった運営(ソフト面)と,それを支える施設(ハード面)の両輪を強くしなければならない。当社は,これまでに培ったソフト・ハード両面の技術を保有するBCPによって,学校BCPの策定を支援している。

巨大地震から学校を守る

学校は生徒の学びや生活の場であるとともに,災害時は緊急避難所としての役割も担うとの考えのもと,学校施設の防災力強化による安全・安心の確保がクローズアップされた。学校は生徒の安全と校舎の機能を守り,快適な教育環境をつくるため,想定を超えたリスクへの対応策が求められている。

当社は,世界に先駆けて各種の制震・免震システムを実用化。多くの校舎への適用を図り,実績と信頼を積み重ねてきた。地震対策技術の豊富な実績とノウハウに基づき,学校の耐震診断から地震対策技術の導入まで,学校機能の維持に繋がる最適な災害対応策を提案している。

天井レス化

東日本大震災では,天井などの大規模な崩落事故による人的被害や事業中断が大きな社会問題となった。文部科学省は,学校施設の天井の耐震点検と対策を各校に要請した。さらに,生徒たちの安全確保に万全を期す観点から,天井撤去(天井レス化)を中心とした落下防止対策の検討を促している。

当社は,これまでの豊富な実績をベースに,学校ごとの大空間の特徴に合わせて,天井吊り下地の補強や天井形状の単純化,軽量化など最適な補強法を提案し,学校BCPの将来に向けた対応策をサポートしている。

改ページ
図版:共立女子学園 共立講堂屋根・天井耐震化工事

共立女子学園
共立講堂屋根・天井耐震化工事

講堂内を雨水で濡らさないよう,桁行30mのテント状の開閉式仮設屋根を設置し,既存屋根全体を覆った

図版:共立女子学園 共立講堂屋根・天井耐震化工事

天井の耐震化を図ったぶどう棚化。天井形状をそのままにとの学園要望を受け,3D測量を活用しながらブレース材の配置検討を行った

図版:共立女子学園 共立講堂屋根・天井耐震化工事

曲面構成の仕上げ材。3D測量データを基に曲面加工した天井下地材を,現地で改めてレベル確認を行いながら施工した

図版:共立女子学園 共立講堂屋根・天井耐震化工事

新しく生まれ変わった共立講堂の屋根。屋根RC下地と妻壁を撤去することで,乾式化や軽量化,地震力の軽減を図る屋根・天井耐震化工事を行った

図版:台北日本人学校

台北日本人学校
校舎の構造の安全確保をはじめ,教室や体育館などの天井材,天井内設備,家具といった非構造部材の耐震対策を施す。地下のアリーナ(剣道場)は,台湾法規による防空避難施設として設定されている

改ページ
図版:慶應義塾大学日吉記念館

慶應義塾大学日吉記念館
10,000人の収容にも安全に避難できるよう,アリーナ天井の最も高い部分に排煙窓を設けている。火災時には煙感知器に連動して,排煙窓が開放される

図版:千葉商科大学付属高等学校

千葉商科大学付属高等学校
将来計画に繋がるフレキシブルな校舎。将来の建替えやグラウンド整備に備えた空地と,校舎まわりの生徒の活動エリアを最大限確保する

改ページ
column

工事中の今しか
経験できない!
~新校舎建築を
生徒の学びの場に~

千葉商科大学付属高等学校
「新校舎建築スクールプロジェクト」

千葉県市川市の千葉商科大学付属高校では,「新校舎建築スクールプロジェクト」を開催している。同校と当社は,工事着工から竣工までの過程を生徒の学びの場として活用するため,共同で,考える・話す・手を動かすなどの「体験」と,当社や協力会社など工事関係者との「交流」のプログラムを企画したのがきっかけだ。

今年初めに実施された第1回セミナーは,はじめに工事現場で発掘された飛鳥時代の竪穴式住居など埋蔵文化財の発掘調査見学会を開催。生徒たちと地域の方々は,市教育委員会協力のもと,出土遺物を見学しながら遺跡や出土品について説明を受けた。続いて,当社建築設計本部による新校舎設計プランの紹介が行われた。「どのような教室になるのか」,「学校生活はどう変わるか」など,生徒たちからの活発な質問に質疑応答は盛り上がり,第1回セミナーは盛況のうちに幕を閉じた。

図版:工事現場で発掘された埋蔵文化財調査の見学会

工事現場で発掘された埋蔵文化財調査の見学会

図版:出土品を見学する様子。生徒たちも興味津々

出土品を見学する様子。生徒たちも興味津々

今後,竣工まで行われる第2回以降のセミナーについても,工事中の今しか経験できない「体験」と「交流」のプログラムの数々が,好奇心旺盛な生徒たちを待っていることだろう。

図版:竪穴式住居について説明を受ける生徒たち

竪穴式住居について説明を受ける生徒たち

ContentsMay 2020

ホーム > KAJIMAダイジェスト > May 2020:特集 これからの学びのかたち > CUT 5: 将来への計画 学校BCP

ページの先頭へ