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interview: 鹿島の学校づくり

開発と設計,それぞれ専門的な立場からこれまで多くの学校に携わってきた2人に,
当社がサポートする学びの場づくりの今とこれからについて語ってもらった。

写真:伊藤隆彦 部長, 土井原 泉統括 グループリーダー

鹿島の学校づくり

土井原 学校施設を担当するようになって10年になりますが,学校建築やホール,文化施設の第一人者である香山壽夫先生の言葉「学校を設計する5つの喜び※1」は,いつも仕事に向かう原動力になっています。

伊藤 私が学校施設の仕事をするようになったのは,1996年に社内の学校教育チーム※2の立ち上げメンバーに選ばれたことがきっかけでした。今まで訪問した学校は,私立の中学,高校,大学を中心に240校余りで,このうち建設工事やコンサルタントなどご縁ができた学校は100校近くあります。

土井原 私たち設計がいつも大切にしているのは,学校関係者(①理事長,校長②教職員③生徒)の立場になって設計を見直してみることです。アンケートや意見の聞き取りなど,それぞれの要望が満遍なく成就するよう心掛けています。

伊藤 近年の学校経営は時代の変化に合わせて素早く学校を変えていく必要があって,そのための選択肢の1つとして学校施設の建替えや更新があります。私の役割は,学校への訪問を重ねる中で経営者に夢や課題をお聞きして,学校の本当のニーズをソフトとハードの両面で見える化していくことです。そこでGOサインが出れば,土井原さんの設計チームにバトンタッチするという,いわゆる初期というか上流の部分を担当しています。

土井原 伊藤さんから引き継いだら,学校建築プロジェクトに選ばれた先生方と一緒にワークショップなどの手法を使いながら,計画を進めていきます。工事によって新たに生まれる空間が生徒の教育に良い影響を与えることや,先生方が校舎の使い方に理解を深めていく様子を見ると,大きなやりがいを感じます。また,竣工した時の喜びにも繋がるところに意気込みや想いを持って取り組んでいます。

※1 ①人を育てる②人と人の関係をつくる③地域のまとまりを つくる④伝統をつくる⑤人のこころをカタチにする

※2 営業,開発,設計,ITSのメンバーが横断的に連携し,収集・分析した情報をメルマガなどで発信する活動を行っている

スクールプロジェクトが生徒の学びに

伊藤 校舎の建替えや更新の際の話ですが,新校舎建設を生徒の学び,体験の場として活用するために,生徒参加型のスクールプロジェクトを企画することがあります。例えば,外壁に使うメッセージ入りレンガタイルをつくるために工場視察をしたり,コンクリートのスランプ試験をしたり。

土井原 スクールプロジェクトといえば,工事を始めようとしたら飛鳥時代の豪族の住居などの遺跡が出たことがありました。生徒や地域の方々に広く集まってもらい,調査状況を紹介したりして非常に好評でした。

伊藤 スクールプロジェクトは,1回あたり90分の完結型プログラムとしていますので,1回参加できなかったとしても次から参加して何ら問題はありません。ゼネコンならではのソフト・ハードを組み合わせた体験型企画といえると思います。

土井原 私も設計コンペの時には必ずスクールプロジェクトを盛り込んでいます。実績も豊富なので様々なシチュエーションやパターンに合わせて企画ができることをアピールしています。

学びの空間を木質化

土井原 学校づくりといえば,環境も大事ですよね。特に校舎の更新の場合,いかに省エネなどの環境に配慮しながら安全・安心を高めて長く気持ち良く使ってもらうかも大切です。

伊藤 環境ということで木質化の話をすると,今の生徒たちはマンション住まいが多くて,朝RC造の建物から出かけて,学校に着いてRC造の建物に入ると屋内で木を感じる機会がありません。理事長の方々の言葉を借りれば,建物の中を木質化していると心が落ち着いて穏やかになり,喧嘩をしなくなる効果があるそうで,非常に評判が良いです。

土井原 木造化とはいかないまでも,例えば床とか壁とかを木質化しただけでも随分印象が変わります。生徒の情緒教育に良い影響を与えられるような校舎をつくりたいですね。

伊藤 あとは色使いでしょうか。北欧といえばイメージしやすいかもしれませんが,窓が大きくて,とにかくカラフルだと空間が楽しくなる気がします。そういう意味では,雰囲気の異なる学校が登場する余地はまだまだあるのではと感じています。

学校と鹿島のこれから

伊藤 今まで多くの学校経営者の方々にお会いし,一緒に悩んだり検討したりしてきたので,ソフト・ハード面でこういった工夫をした学校ができれば,人気や経営面で良い結果が得られそうというところが見えるようになってきました。これまでの実績や積み上げてきたノウハウを活かして,これからも学校づくりを通じて生徒の成長に貢献したいと考えています。

土井原 私が今まで学校施設を見てきて思うことは,教育の場で生徒同士が教えあう雰囲気ができると学びの連鎖が起きます。そういう「相互に学ぶ」連鎖が自然発生するような,生徒たちがともに成長するような校舎をこれからもつくっていきたいと考えています。

伊藤 こういうことを考えるのは楽しいですね。

土井原 考え出すと止まらなくなりますね。

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