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CUT 3: 集う,交流する,にぎわう

学校の顔となる空間の創出

学校を学びの場としてだけではなく,生活や交流の場と捉え,生活環境としての質を高めることも大切だ。木や自然素材を活用したインテリアや家具,自然溢れる外部空間や明るく開放的な内部空間など,居心地が良く交流が触発されるような場づくりは,生徒たちが教室から飛び出しキャンパスに活気をもたらすことが期待できる。

にぎわいを活性化する空間

近年増加する都会のビル型キャンパスでは,学校としての一体感を創出するため,吹抜けを設ける学校が多い。吹抜けは複数階にまたがる連続した空間であるため,開放感を高めて採光を容易にするメリットがある。視線の抜けによって,圧迫感を軽減し,内部の教室などでは外部を身近に心地良く感じる。天井が高く,明るい陽射しが差し込むスペースは,生徒たちに開放感やにぎわいを与え,コミュニティの活性化が期待できる。

大階段は十分な広さと幅を確保することで,生徒たちのメイン動線としての利用のほか,腰を下ろして休憩し,交流することができる憩いの場としても活用できる。

光と風の通り道となるテラスは,積層テラスとしてテラス同士を結ぶことにより,キャンパスの隅々に視線が届き,学びと活動のにぎわいを感じることができる。また,生徒たちが集う憩いの空間ともなる。校舎の間の少しの空間も生徒たちの活動で満ち,キャンパス全体の一体感が高まる。

図版:巣鴨中学校・巣鴨高等学校

巣鴨中学校・巣鴨高等学校
教室棟3棟と体育館をそれぞれ結ぶ積層テラスは,学びと活動のにぎわいが感じられ,クスノキの大木や風が心地良い生徒たちの憩いの場となっている

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図版:巣鴨中学校・巣鴨高等学校

巣鴨中学校・巣鴨高等学校
中央校舎最上階のカフェテリア。天井には建替えの際に伐採したイチョウが活用された

図版:慶應義塾大学日吉記念館

慶應義塾大学日吉記念館
ステージと観覧席が正対する施設構成で,入学式・卒業式での利用など最大約10,000人(固定席4,582席)を収容できる座席レイアウトとなっている

図版:桜美林大学東京ひなたやまキャンパス

桜美林大学東京ひなたやまキャンパス
吹抜け空間のマルチホールは,メディアセンターの象徴だ。上下階を結ぶ階段は,ライブラリーと食堂の緩やかな繋がりと多目的な活動の場となる

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ラーニング・コモンズとしての
図書室

教室や特別教室のほか,学校の特徴が表れやすいのが図書室だ。学校によってメディアセンターと名付けられることもある図書室は,近年資料中心から生徒中心の施設に移り変わりつつあり,生徒を情報の受け手からつくり手へと進化させるラーニング・コモンズとしてデザインされ始めている。

学校生活の中で自然と前を通る動線となるよう設置され,生徒が気軽に利用,滞在したくなる魅力的な空間へと生まれ変わった図書室。静かに読書をする空間というのは,もう過去の話だ。本のほか,調べ学習やプレゼンテーション資料の作成をスムーズに進められるよう,インターネットに繋がったパソコンが使えるスペースを設け,様々な過ごし方ができるコーナーを用意。ラーニング・コモンズに先生が滞在し,生徒の質問を受け付ける学校もある。

生徒は日頃から多くの本を目にする機会に恵まれ,個人やグループの調べ学習にも活用するなど,図書室を中心に学校のにぎわいも生まれる。全ての生徒が利用しやすく,クラスや学年を超えた交流を生み出し,教室とは違った過ごし方ができる印象的な図書室は,学校全体の学びにも良い影響を与えているといえるだろう。

図版:新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部1号館

新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部1号館
図書館を正門近くに移し,学生が立ち寄りやすい環境を整備。利用者は移転前の3.6倍に増加し,その後も増え続けている

図版:順天堂大学 新研究棟

順天堂大学 新研究棟
オープンラボフロアのスタッフルーム。オープンラボとガラスパーティションで間仕切られた飲食可能な執務・交流空間。窓側はフリーアドレス席となり,研究者・大学院生・学生間の交流の場となる

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図版:台北日本人学校

台北日本人学校
学校の中心となるメディアセンターの計画は,3Dを活用しながら児童・生徒目線で使いやすさを検証。たくさんの本を目にする機会とともに,動線・視線の抜けによるにぎわいを創出する計画だ

図版:千葉商科大学付属高等学校

千葉商科大学付属高等学校
学びが広がる2階吹抜け。2階には登下校時に気軽に立ち寄れるメディアセンターと,一体的に利用できるメディアラウンジが備わっている

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