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KAJIMA TECHNICAL CENTER

理論学習×実務体験で技術を継承

2022年12月に完成を迎えた実務体験型研修施設「鹿島テクニカルセンター」。
建設に携わる若手技術系社員を対象としたこの施設では,社員の品質管理能力を一層高めるため,
エントランスを抜けたその瞬間から随所に学びの種が蒔かれている。
五感を研ぎ澄ませ,身体で習得する「まるごと現物教材」の魅力を紹介する。

「実務体験型研修施設」を巡る

横浜の地に新たな研修施設が誕生した。当社が誇る次世代建設生産システムを結集し創り上げられたこの施設は,建物内にS造・PCa造・在来RC造の構造部材や設備機器などのモックアップ※1を設える。建設に携わる当社および鹿島グループの若手技術系社員がリアルな実地体験で技術を磨く,新体感型研修施設だ。

一般的に,研修施設は学びの空間とそれ以外の空間は異なるスペースとして配されることが多いが,当施設はこの常識から脱却し,建物を“まるごと”現物教材とした。建物に入りエントランスを抜けるとまず目に飛び込むのが,壁に掛けられた経営理念と鹿島守之助元会長の「事業成功の秘訣二十ヵ条※2」の短冊。そこを越えると約15mにもおよぶ鹿島ものづくりプロセスの巻物が現れる。鹿島建設の一社員としての原点に立ち返り研修に臨む。これらには随所に二次元コードが付与され,読み取ることで,もう一歩踏み込んで自ら学ぶことができる。さらに進んだ先には1,2階が吹抜けとなったトレーニングセンター※3が広がり,モックアップが姿を見せる。本物さながらの建設現場が具現化されているこの研修エリアには,様々な工法や技術が詰め込まれ,一度にこれほど多くの技術を目で見て直接触れることができるのは,最大の特長である。また一見お手本のように組まれた部材には100ヵ所にもおよぶ“間違い”があえて隠されているものもあり,それらを見つけることも学びの重要な要素となる。さらに,モックアップを取り囲むようにワークショップスペースも設けられ,机に向かいながらも,疑問が湧いたらすぐに現物で確認することが可能だ。

※1 当施設では実物と同スケールの構造体を備えている

※2 「事業成功の秘訣二十ヵ条」のページはこちら

※3 1970年に東洋一高い建物として当社が施工した「世界貿易センタービルディング既存本館」の上棟梁を,解体に伴い譲り受け,展示している

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図版:トレーニングセンター

トレーニングセンター

photo: エスエス 島尾望
図版:経営理念と「事業成功の秘訣二十ヵ条」の短冊

経営理念と「事業成功の秘訣二十ヵ条」の短冊

photo: 大村拓也
図版:K-STREETに掲示されている鹿島ものづくりプロセス

K-STREETに掲示されている
鹿島ものづくりプロセス

photo: 大村拓也
図版:KZギャラリー

KZギャラリー

photo: エスエス 島尾望
図版:施工時も再現したジオラマモデル

施工時も再現したジオラマモデル

photo: 大村拓也
図版:2階ワークショップ

2階ワークショップ

photo: 大村拓也
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研修生活すべてが学びの時間

当施設のもう一つ大きな特長は,研修時間だけでなく,各々の生活時間にも五感を刺激し常に考える姿勢を奮起させる種が蒔かれていることだ。3階へ上がると,研修エリアとは全く違う空気が流れる。吹抜けから差し込むやわらかな光に木の香り。3~5階は飲食や語らいの場となる共有スペースや宿泊室が配されたフロアとなっている。各部屋の造作家具はすべて,当社グループ会社であるかたばみ興業が保有する北海道の尺別山林から伐採した4種類の広葉樹から作られている。部屋ごとに異なる木の香りは無意識のうちに五感を刺激する。また研修生には滞在中,画一化した食事が提供されるのではなく,自分で食べたいものを選択し,好きな時間に好きな場所で食べるスタイル。

この施設には,技術と知識を五感を通して主体的に習得していく仕組みが散りばめられている。

図版:3層見通せる宿泊エリアのラウンジ空間

3層見通せる宿泊エリアのラウンジ空間

photo: エスエス 島尾望
図版:尺別山林の広葉樹(セン)から製材されたダイニングテーブルで交流を深める

尺別山林の広葉樹(セン)から製材された
ダイニングテーブルで交流を深める

photo: 大村拓也
図版:3階ケータリングステーション

3階ケータリングステーション

photo: エスエス 島尾望
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写真

建築管理本部
建築工務部長

加藤昌二
(現:安全環境部長)

photo: takuya omura

今,建設現場は様々な課題を抱えています。2024年度から建設業にも適用される働き方改革関連法によって,「社員が働ける時間に上限が設けられる」なか,安全や品質管理の精度向上を図ったうえで,現場,および社員の労働生産性をいかに高めていくのか。この対策として我々は,若手・中堅社員の早期,かつバランスの良い能力向上が重要であり,そのためには,現場で学ぶOJTと,研修などで育まれる体系的な理解を相互に関連付ける必要があると考えました。一方で,建設現場は,様々な技術や工法,用途などによる特殊性を含んだ一品生産であるため,従来のOJTを踏襲する育成手法では,赴任した現場の進捗度や工事特性により習得できる技術・ノウハウには,同世代の中でも大きなバラツキが出てしまうという課題もありました。

このような環境下にあって,施工系技術者に対する集合研修はどうあるべきか,を徹底して再考した結果,「現物をしっかり観て的確に判断できる目」を適時・適切に養うことが重要であり,そのためには,「現場で実際に行われる実務に則した品質管理教育」を行うという結論に至りました。そこで,これらを具現化するために設立したのが,この実務体験型研修施設となる「鹿島テクニカルセンター」です。

この施設における研修のメインコンセプトは,「FEEL & THINK:五感で感じ,しっかり考える」というものです。ここでは, 学ぶことのほかに,食べること,語らうことを含め,研修期間を通じ,常に自らが主体的に考え行動することにより総合的に磨かれる「技術者の資質」向上を追求していきます。

施設の建設にあたっては,採用する生産技術や様々なR&D技術要素を含め,「建物まるごと現物教材」をキーワードに,あえて様々な工法や技術を取り込むことで,滞在する時間のなかで常に「新たな発見」が生まれることも目指しました。そのうえで,当社グループ会社の書籍や映像などにも気軽に触れることにより,鹿島の社員であることに誇りを感じつつ,研修を終えて戻った現場での自信や責任を改めて認識させることも狙いました。

ゆくゆくは,「前回来たときには理解できなかったことが判った!」「今回の研修で初めて気づいた!」といった,自らの成長を成功体験として感じられることや,同じ研修施設で学んでいく次の世代とも意識が共有できる「場」となることも大いに期待しています。

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