ホーム > KAJIMAダイジェスト > November 2019:私たちの働き方

第2回
女川町震災復興事業
おながわまちづくり
JV工事

東日本大震災の津波により甚大な被害を受けた女川町――。
早期復興を願う住民の方々の期待のもと,CM方式で受注した当社JVではCMRとして震災復興事業を進めてきた。これまで7年間という長期にわたり現場で推進してきたさまざまな働き方改革の施策について取材した。

改ページ

[工事概要]

女川町震災復興事業の
工事施工等に関する一体的業務

  • 場所:宮城県牡鹿郡女川町
  • 発注者:都市再生機構(UR都市機構)
  • JV構成:乙型JV 鹿島(施工)・
    オオバ(設計)
  • 規模:整備面積(中心市街地222ha,
    離半島部14地区55ha),
    土工量(盛土626万m3
    切土560万m3
  • 工期:2012年10月~2020年3月
    (東北支店JV施工)
図版:地図

東北・三陸地域のリアス式海岸に面し,女川湾と山の間の平地に位置する宮城県牡鹿郡女川町は,東日本大震災での津波により建物の8割以上が被災するなど,壊滅的な被害を受けた。当社JVは,町の復興と発展に向け,中心部地区と離半島部14地区の大規模かつ広範囲にわたる工事を行っている。2012年10月に始まった工事は,次々と完成を迎え,7年経った現在はほぼ終了。来年3月には引渡しがすべて完了する予定だ。

女川町震災復興事業は,早期着工・完了が重要となるためCM方式で行われた。事業主体である女川町より事業委託を受けたUR都市機構が,CMRの当社JVへCM工事を発注したかたちだ。

※CM方式は,事業の早期着手およびスピーディで円滑な推進のため,工事に関連する調査,測量,設計および施工の一体的マネジメントやオープンブック方式などの新たな仕組みを導入した契約方式。本工事の場合,発注者がUR都市機構,当社JVがCMR(コンストラクション・マネージャー)となる

主な工事は土工事である。下図のように,中心部地区において,居住地(A・A’エリア)はL2より高くなるよう切土・盛土,商業地となる市街地(Bエリア)はL1より高くなるよう盛土を行った。メモリアル公園や水産工場などの漁港施設(Cエリア)は,地震により沈下した分の盛土を行い原形復旧とした。離半島部の各地区においても,同様の工事を行っている。

図版:断面図

現場は,最盛期には200人近い所員がいたが,事業規模に合わせて何度か大幅な削減を行っている。人員の変動が激しく管理が難しい状況下において,2016年10月から実施した働き方改革により,4週8閉所となる年間104閉所を実現。2015年度は月70時間だった一人あたりの平均残業時間を,2016年度以降月60時間未満とする大幅減少を達成している。

復興型CM方式第1号でありモデルケースともなった当現場で,長期間にわたって社員・協力会社をまとめあげ,いかに働き方改革を実現させてきたのか。そのさまざまな施策について深山直志所長と藤井達明チームリーダー(TL)に話を聞いた。

施策1個人の能力向上

整備面積270ha超と広大かつ整備地区が離半島を含め南北30kmにわたり点在しているため,現場の安定的な運営には各地区を担当する個人の能力向上が不可欠であった。

安全,品質,技術,契約については,月1回以上の定期的な勉強会の実施により,社員・派遣社員を含めた所員個々の能力向上を図った。

また,若手社員には早期から教育を行い契約から完成検査までを一貫して担当させ,それぞれの担当地区の発注者・町・県などとの対外交渉も任せた。これはCM方式による契約が通常の契約と比べてリスクを回避しやすいという背景も後押しした。

「個人の能力向上が残業時間の大幅減少という結果に表れました」(深山所長)。 

図版:深山直志所長

深山直志所長

施策2効率化システムの構築

本事業では,迅速な復興を目指し,全体の設計完了を待たず部分的に着工していくファストトラック方式が採用された。当社JVは,道路や河川,港湾など事業主が異なる工事についても工程調整を行ってきた。徹底的な業務の効率化を図るため,専門業者との契約方法や安全・品質管理方法などのルールを統一し,さらには手順書や提出書類などの雛形を作成するなど,毎月繰り返される変更契約や引渡し検査書類の標準化を実施。また派遣社員の管理用に,勤怠承認や各種データ抽出などが簡易に行えるシステムを開発し,効率化を図った。

「そのほか,同一工種における作業手順書の標準化や客先への承認手続きにおける担当者間の情報共有などを行い,手戻りの防止に努めました」(藤井TL)。

また,協力会社も含め,作業間連絡調整会議の情報共有ができる「鹿島ミーティングシステム」の使い方を周知・活用して,業務の効率化を実現した。

改ページ
図版:総務経理チームの藤井達明TL

総務経理チームの藤井達明TL

施策3個人のモチベーションアップ

社員や協力会社に向け終業後や休日の部活動を推奨し,会社は施設使用料の一部を負担するなど協力した。部活動は個人のレクリエーションやストレス発散のほか,発注者や町との親睦も兼ねたものとなった。

「部活動参加が仕事を早く切り上げるモチベーションとなり,その結果残業時間の減少につながりました」(深山所長)。

また,年間閉所スケジュールを公開し,大多数だった単身赴任者のために正月やお盆の休暇を長く設定するほか,月の閉所設定を週1ベースとする代わりに3連休をつくるなど帰省しやすいように配慮した。また,地域のイベント情報を事務所内に貼り出して紹介するなど,余暇の使い方を案内した。

施策❶~❸のほか,U字水路敷設工事ではできるだけプレキャスト(PCa)化を行い現場での作業時間を短縮。また,広い造成地の品質検査ではセグウェイ3台を使い,測定器を積んで移動することによって効率的に検査を行うなど,生産性を上げてきた。

これまでの働き方改革の成果について深山所長と藤井TLは,「増員などの人員面や技術面での支店の支援は欠かせなかった」とし,次年度以降の施策のポイントとして「実状に応じた社員の適正配置」を挙げている。

CM方式の利点を活かした柔軟な対応で,今後のさらなる働き方改革の実践に期待したい。

図版:大型U字水路敷設工事はPCa部材を利用し,現場での作業時間を短縮

大型U字水路敷設工事はPCa部材を利用し,現場での作業時間を短縮

図版:盛土の品質検査では,測定器を積みセグウェイで移動することによって効率化を図った

盛土の品質検査では,測定器を積みセグウェイで移動することによって効率化を図った

改ページ
図版:中心部地区の市街地の現場状況

中心部地区の市街地の現場状況。手前の女川湾に面した震災遺構のあるメモリアル公園(建設中)から,食堂や土産屋が並ぶ商業エリア,JR女川駅へと遊歩道が続く(撮影:2019年7月18日)

Column

部活動が残業時間減少の
モチベーション

フットサル部やバドミントン部などは町の体育館を借りて練習を行ったり,野球部は役場のチームと懇親を兼ねて試合をしたりと,皆それぞれ楽しんで活動していた。人員が多いときには,ロードレース部,カート部,ゴルフ部,水泳部,トレッキング部,軽音部など多種多様な活動で盛り上がっていた。

図版:野球部

野球部

図版:ロードレース部

ロードレース部

図版:フットサル部

フットサル部

図版:カート部

カート部

ContentsNovember 2019

ホーム > KAJIMAダイジェスト > November 2019:私たちの働き方

ページの先頭へ