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KAJIMAダイジェスト

東南アジア 30年のプラットフォームづくりが結実した百花繚乱の開発事業

ミャンマー政府が傾注する一大都市開発

輸出の増加や堅調な内需を背景に,好況が続くアジア経済。2018年は当社の東南アジア統括現地法人KOA(カジマ・オーバーシーズ・アジア)が設立から30年を迎える節目の年でもある。KOAではシンガポールを事業推進の核とし,東南アジアの各国で開発・建設事業を展開する。

昨年には,新たにミャンマーでも開発事業が始動した。ヤンゴン市内中心部の〈ヤンキン地区複合開発〉である。KOA傘下のカジマ・ヤンキンPPPが主体となり,オフィス,ホテル,商業施設などからなる,延床面積17万m2におよぶ大規模開発プロジェクトだ。ミャンマー建設省が国土交通省に日本企業による計画提案を要請し,当社案が採択された。公有地開発のモデルプロジェクトとして,ミャンマー政府の期待も大きい。建設・運営・移管を担う70年間のBOT事業であり,今後活発化が見込まれる同国の都市開発の先駆けとなる。KOAでは〈スナヤン・スクエア〉で培った公有地利用の複合開発のノウハウを生かす。

図版:ヤンゴン市内の〈ヤンキン地区複合開発〉

ヤンゴン市内の〈ヤンキン地区複合開発〉は,当社建築設計本部が設計を担当し,KaTRIS(技術研究所シンガポールオフィス)も技術コンサルティングとしてサポートする

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創業の地で過去最大級の都市開発

KOAの創業の地,シンガポールでも象徴的な大規模開発が始まった。シンガポール都心部から北東へ約5kmに位置するビダダリ地区で行われる〈ウッドレイ住宅・商業複合開発〉である。約2.5haの土地に約700戸の分譲住宅と,延床面積約2万7,000m2の商業施設などからなる複合施設を建設するこのプロジェクトは,KOAの開発事業統括会社であるKD(カジマ・デベロップメント)とシンガポール政府系メディア企業のSPH(シンガポール・プレス・ホールディングス)との共同事業となる(出資比率50:50)。シンガポール政府所有の土地を昨年6月に約900億円で落札した。当社にとってはアジア地域で手がける過去最大級のプロジェクトとなる。

施工を担当するのはKOAの建築事業会社。分譲住宅の販売を年内に開始し,来年初頭の着工を見込む。地下鉄(MRT)駅に直結し,幹線道路やバス・ターミナルに隣接する交通至便なエリアとあって,国内外からの注目度は高い。パートナーであるSPHのング・ヤット・チャン社長もこの開発に大きな期待を寄せる。「鹿島とパートナーになる機会を得られてうれしく思っています。鹿島の開発・建築双方の能力と当社の住宅・商業開発におけるノウハウを生かし,ビダダリ地区の宝と⾔われるような施設の実現に向けて一致協⼒していきます。プロジェクトの成功を確信しています」。国営メディア企業の住宅販売面での後押しが期待される一方で,早期売却による採算性向上を目指す方針だ。KDとSPHでは第2のウッドレイとなる土地入手を模索している。

写真:SPHのング・ヤット・チャン社長

SPHの
ング・ヤット・チャン社長

図版:ビダダリ地区で行われる〈ウッドレイ住宅・商業複合開発〉のイメージパース

ビダダリ地区で行われる〈ウッドレイ住宅・商業複合開発〉のイメージパース。コミュニティー・クラブ,警察署などが併設される。地下1階から地上2階まで賃貸商業施設,3階から13階まで販売用住宅

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新興国で進む基盤づくり

現地企業とのパートナーシップは,各国各エリアの開発事業において高い競争力をもったプラットフォームの形成につながる。KOAでは2016年に,ベトナム国内で商業施設やホテル,オフィスなどを手がけてきた不動産・開発会社インドチャイナ・キャピタルとの合弁となるIKD(インドチャイナ・カジマ・デベロップメント)を設立した。IKDでは現在,高層ビジネスホテルを中心に4件の開発事業が進行しており,急速な発展・拡大を見せる同国の開発事業で堅固な基盤を築きつつある。

図版:IKDがダナンで開発中の第2号案件の完成予想パース(画面中央)

IKDがダナンで開発中の第2号案件の完成予想パース(画面中央)。24階建て(ホテル客室264室,サービスアパートメント57室)

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結実する現地企業との信頼関係

こうした現地企業とのつながりは,他社には真似のできない強みと言える。KOA設立以前,シンガポールで当社のアジア進出の端緒を開いた〈リージェント・ホテル〉(1982年開業)や90年代の巨大開発〈ミレニア・プロジェクト〉では,現地の大手デベロッパーのポンティアック・ランドとパートナーシップを結び,プロジェクトを成功させた。香港での基盤をつくったアライド・カジマの設立は,現地デベロッパーのアライド・プロパティーズとの合弁である。この2社もまたKOA同様に成長を遂げ,現在,グローバルな市場に触手を伸ばす。

KOAでは今後,かつてのパートナーとも再び結束を強め,開発事業のネットワークをさらに拡大させていく。当社と40年近く親交があるポンティアック・ランドのオーナーの一人,クイ・リョン・シン氏は次のように語る。「当社と鹿島は,1970年代から強固な信頼関係と互恵的な協力関係を維持することにより,ともに成長してきました。この関係には深く感謝しています。今後,アジア地域でのさらなる事業拡大が期待されるなか,新規案件発掘に積極的に協⼒し合うことを望んでいます」。

パートナーとの親密な連携は,KOAが得意とするリゾート開発の分野にも現れている。〈アバディーナ・ヒルズ〉(タイ,プーケット)や,〈ジンバラン開発〉(インドネシア,バリ)では,運営と販売の両面でノウハウをもつオペレーターが当社をサポートする。一朝一夕では築けない現地企業との信頼関係が今,次なる30年の道を拓こうとしている。

写真:ポンティアック・ランドのクイ・リョン・シンオーナー

ポンティアック・
ランドのクイ・リョン・
シンオーナー

図版:アライド・カジマが香港で新たに開発に着手したホテルのイメージパース

アライド・カジマが香港で新たに開発に着手したホテルのイメージパース。2018年1月に着工し,2021年の開業を目指している。28階建て(客室172室)

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Leader's Voice KD 大石修一社長 「現地パートナーとの信頼を深め,より良い物件を引き寄せる」

写真:KD 大石修一社長

KOAの30年の歴史のなかで,私たちが得た最大の財産は,現地のパートナー企業との信頼関係です。KOAではこれまでの開発事業で,数多くの企業と良好な関係を築いてきました。物件を入手する際には,土地の金額や規模,地理などの表面的な情報だけでなく,天候や災害,インフラなど,その歴史的な背景まで考慮する必要があるのですが,収益に結びつく事業を引き寄せられるのは彼らとのパートナーシップがあってこそのことだと思っています。今後の開発投資を加速化させるにあたっては,SPHやインドチャイナ・キャピタルのような新しいパートナーに加え,かつて苦楽をともにしたポンティアック・ランドやアライド・プロパティーズとの関係を深めることも不可欠です。

当社が単独で進める〈ヤンキン地区複合開発〉は,これまで培ったノウハウの集大成とも言えるプロジェクトです。ヤンキンは70年間のBOT事業ですが,大規模かつ長期のプロジェクトには,当社が約25年の歳月をかけて開発に取り組んだ〈スナヤン・スクエア〉(インドネシア,ジャカルタでの2036年までのBOT事業)の経験が生かせます。スナヤンでは,2015年のホテル開業をもって開発フェーズが完了し,安定した収益を享受しています。

シンガポールでは建国から50年が経過し,都市部の更新需要が高まりつつあります。今後,再開発の動きが活発化するのを前に,KOAの持つ技術をアピールしていく必要もあると感じています。シンガポール政府も当社の技術に高い関心を示しており,KaTRISとの連携を深めて,より積極的に技術提案を行うなど,当社の総合力が発揮できるプロジェクトの受注に結び付けていきたいと思います。

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