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Pick UP 海外市場で当社グループの創発を引き起こすKaTRISの取組み

今年8月に開設から丸5年を迎えたKaTRIS(当社技術研究所シンガポールオフィス)。
多様な風土やインフラ条件をもつ東南アジアで,当社グループのリサーチ・イノベーション・ハブを目指す。

先端技術の探索と技術マーケティング

KaTRIS(カトリス)では2013年の設立以来,これまでシンガポールを中心に,アジア各国各エリアの市場ニーズや技術シーズの収集と把握,政府機関や大学との人材ネットワークづくり,これらを利用した上流からの開発技術の展開を進めてきた。当初2人体制だったオフィスでは,2018年9月現在,兼務の5名を含む13名の社員が業務に携わる。

*シーズは研究開発や新規事業の創出に求められる技術や能力,人材,設備を指す。

産学官連携の担い手として

地球環境への意識の高まりやESGへの投資拡大を背景に,環境・エネルギー問題への対応は今や世界共通の課題となる一方,東南アジアにおいてはそれぞれの国や地域で建設へのニーズも異なる。KaTRISでは今後,グローバルとローカルの両方の視野で,こうした課題に対応できる体制を構築し,国内の技術研究所との相乗効果を高めながら各国に活動の対象を広げていく考えだ。

その活動において現在,最も盛んなものの一つが大学との共同研究である。KOAは現在,Zero Energy Building実現を目指しているシンガポール国立大学(NUS)デザイン環境学部の新校舎SDE4の施工を担当しているが,KaTRISでは本工事の入手に先立って,蒸発散促進型屋上緑化〈エバクールガーデン®〉をはじめとする環境・エネルギー分野での共同研究を推進してきた。2018年2月には同学部とのMOU(協力の覚書)を締結。今後もサステナビリティ,人間中心デザイン(Human-Centric Design)の分野で共同研究と人材交流を進めていく。

また,KaTRISは,同じくシンガポールのナンヤン工科大学(NTU)でも建設生産分野での共同研究を行っている。NTUとは,日本・シンガポールの両市場で用いることができる,汎用性を備えたIoT先端技術による新しい施工管理システムの開発の共同研究に着手した。

写真:写真はラム・キー・ポー学部長と当社技術研究所・福田孝晴所長による署名式の様子

今年2月にはシンガポール国立大学デザイン環境学部とKaTRISの間でMOU(協力の覚書)が締結された。写真はラム・キー・ポー学部長と当社技術研究所・福田孝晴所長による署名式の様子

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高度技術コンサルタントとして

KOAのプロジェクトにおいても,KaTRISは技術的なコンサルタントとして欠かせない存在となっている。『東南アジア』のページで取り上げたミャンマーでの〈ヤンキン地区複合開発〉では,同国政府より多面的な技術移転が求められている。KaTRISでは,現地の官民技術者や大学院生を対象としたオープンセミナーを開くとともに,半屋外環境の環境設計や,ファサード熱性能評価,光環境評価などの高度技術を供与してきた。さらに施工品質の確保を目的に,現地のコンクリート工場やプレキャスト工場,試験練りの視察などを通じて,ミャンマーの躯体技術水準の把握と対応支援の面からKOAをサポートしている。

写真:ヤンキン地区をモデルとした気流のシミュレーション例

ヤンキン地区をモデルとした気流のシミュレーション例。KaTRISではオープンセミナーを通じて,ミャンマーの技術者へ技術移転を行っている

また,シンガポールで行われる「ウッドレイ住宅・商業複合開発」においても,同国の施工規程に則ったプレファブ・ユニットの施工省力化を目指した技術支援がKaTRISを中心に進んでおり,KOAの高度なコンサルティング組織としての存在感を高めている。

リサーチ・イノベーション・ハブへ

この5年の活動を通じて,KaTRISは政府機関や研究機関の間で急速にその認知度を高めており,今後は多様な技術人材のさらなる採用と育成を図っていく。現在は8名の常駐社員のうち2名がNUSとNTUに留学しており,ローカルの大学や研究機関に所属する人材を拡充する。このほかグローバル化に対応できる人材や,先進ICT技術に精通している人材なども広く集める。国内他部署からの公募や現地採用社員も含め,3年間で3倍の人員増を見込み,当社グループのリサーチ・イノベーション・ハブとして一層の発展を目指す。

写真:ヤンキン地区複合開発に際し,ミャンマー政府とKaTRISの間で,技術移転を目的に行われたオープンセミナー(写真は第2回開催時の様子)

ヤンキン地区複合開発に際し,ミャンマー政府とKaTRISの間で,技術移転を目的に行われたオープンセミナー(写真は第2回開催時の様子)

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