(仮称)Kアリーナプロジェクト建設工事
- 場所:
- 横浜市西区
(みなとみらい21-60街区) - 発注者:
- ケン・コーポレーション
- 設計:
- 梓設計・国建・当社横浜支店設計部
- 用途:
- 音楽アリーナ,ホテル,オフィス ほか
- 規模:
- S造一部RC・SRC造
総延べ119,200m2 - 工期:
- 2020年8月~2023年7月
(横浜支店施工)
「音楽の街」のシンボルに
みなとみらい21地区北側に面するベイエリアでも大規模工事が進行している。客席数約2万席を備える,コンサートホールの機能に特化した世界最大級の音楽アリーナを中心に,ホテル棟,オフィス棟が隣接する大規模複合施設「Kアリーナプロジェクト」だ。
地上9階建てのアリーナは,客席の配置を上に重ねていく形状で,客席からステージを近距離に感じられるよう演出。この長大空間を覆う,長さ110m超となる大スパン屋根トラス工事が計画されている。現在,スタンドの鉄骨が完成し,8月より屋根の鉄骨組立が開始された。ホテル棟,オフィス棟と同時に進捗し,各棟をつなげるペデストリアンデッキの施工を経て,2023年7月の全体竣工を予定している。
3棟同時施工の連携体制
「3棟それぞれが大型工事レベル」と語る佐藤憲一所長。限られた敷地での3棟同時施工という厳しい条件下の現場であり,隣接した工区ではクレーンの配置ひとつとっても調整が必要となる。アリーナ棟の工区を一時的にホテル棟のためのスペースとしたり,クレーン重機を都合し合うこともあるという。「アリーナとオフィスに挟まれての調整は本当に難しく,計画の鍵です」とホテル棟の林啓太副所長。また,オフィス棟の遠藤崇副所長は「敷地内には,横浜市の工事による跨線橋の橋脚が立つ予定で,搬出入の影響が大きいうえに敷地が狭く苦労が多いです」。3工区の調整や連携には頻繁な会議が欠かせない。
アリーナ棟の岡本正人副所長はそれぞれの役割を説明する。「全体を統括する佐藤所長のもと,副所長の3人が密に連携をとって進めています。困難な課題に直面した場合には,さらに菊池敏正総合所長が解決の糸口を見いだしてくれます」。「足並みを揃えるため,5人が納得して進めることを大事にしています。3棟あっても安全ルールは統一。優先順位を決めるときは,お互いを尊重しながらベストセレクトをして進めていきます」(佐藤所長)。
そうしたなか,ホテル棟とオフィス棟では搬出入口が1ヵ所のため,遠隔管理システムを駆使した現場状況の確認や調整が不可欠だ。菊池総合所長と佐藤所長の席前には複数のモニターが設置され,現場状況がリアルタイムで映し出されている。佐藤所長によれば「3棟の関係者による毎日の情報共有が欠かせません。毎朝定時に大型モニター12台を設置したスマート会議室で,工事の状況確認や調整を行っています」。
また,「各棟関係者が参加する検討会議では,副所長だけでなく担当者自身が説明する。そこでの指摘や活発な意見のやりとりを経て,理解を深めてから施工に当たるようにしています」。所員にとっては3工事を同時に体験できる絶好の教育の場にもなっている。
110m超の大スパン屋根トラス工事
アリーナ棟の110mを超える大スパンの屋根トラス工事では,BIMとデジタル計測を駆使した施工計画が練られている。「屋根鉄骨だけで総重量3,400tにもなり,なかなか類を見ない規模です。まずBIMでモデルを作成し,定期的に構造設計担当者と確認会議を実施してBIM上で納まりを決め,それから二次元の図面に起こして鉄骨を製作しています。また,施工時解析を実施し,施工中の挙動や部材にかかる応力も協議して,どのタイミングで仕上荷重を載荷するか,部材の補強が必要かなどを綿密にシミュレーションして各ステップを決定しています」(岡本副所長)。トラスユニットの最終パーツが納まり屋根鉄骨が完成するのは来年6月を見込んでいる。
強靭な躯体に支えられた重量級の音響設備が導入された大空間には,どんなサウンドが鳴り響くのだろうか。「音楽の街」みなとみらい21の新たな顔となるであろうKアリーナの誕生が,今から待ち遠しい。
世界中からゲストが集まる最高の音楽アリーナを
観光地として人気が高く近年成熟しつつあるみなとみらい21地区において,街のシンボルとなるアリーナ,ホテル,オフィスの複合施設を整備するのがKアリーナプロジェクトです。
特に世界最大級となる2万人を収容する音楽アリーナは,国内外から数多くのゲストを受け入れ,地域の賑わいの核になることでしょう。それにふさわしく,すべての席から幅80mのステージを楽しめるホール形状,ライブ感をダイナミックに感じる適度な吸音による音響計画,120tの吊り重量にも耐えられる天井・屋根構造,演出・音響・照明設備の設営を容易にする昇降天井装置,遮音も考慮したダブルスキンの構造フレーム,運用時のさまざまな演出を可能とする6万6,000V特高受電(街区全体)といった,他に類のない建築計画を実現していきます。
さらに,1万坪の街区全体に高さ6m,4.5mの人工地盤を設けペデストリアンデッキとし,デッキ下にバック動線や車動線,デッキ上にはビアレストランなどの飲食店舗や音楽広場を設け,わかりやすい動線計画とともに街に開かれた賑わい溢れる空間を創り上げていきます。デッキには跨線橋がつながり,横浜駅地下街から約7分で到達できるようになります。
110m超の屋根架構をはじめとする複合用途による難易度の高い建設工事をお任せできるのは,みなとみらい21エリアでの実績が豊富で,熱い想いとともにご提案いただいた鹿島建設横浜支店様しかいないと決断致しました。期待の通り着工後は,日本初の最高の音楽アリーナを目指す当社の高い要望を汲み取り,高度な技術とともに施工計画を練り上げ,綿密な工程管理で遅れなく順調に工事を進捗して下さり,感謝しております。