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第4回
新名神高速道路枚方工事

「見える化プロジェクト」で新たな働き方を創る

新名神高速道路枚方工事は,「見える化プロジェクト」のモデル現場として,
生産性向上につながる技術を集約し,適用技術の検証を行っている。
同プロジェクトへの活用と働き方改革にもたらす効果をリポートする。
あわせて現場における女性の活躍を推進する「鹿島たんぽぽ活動」について取材した。

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[工事概要]

新名神高速道路枚方工事

  • 場所:大阪府枚方市南船橋2丁目~
    同市西船橋2丁目
  • 事業者:西日本高速道路
  • 発注者:西日本高速道路
  • 規模:延長1,140m,
    地中連壁工事約28,000m2
    掘削約210,000m3
    橋梁-橋台2基,橋脚18基 
    トンネル施設工-換気所1基,
    回転立坑1基
  • 工期:2018年9月~2024年6月
    (関西支店施工)
地図

新名神高速道路は,2017年12月に高槻-川西間,2018年3月に川西-神戸間が開通。
現在,大津-高槻間の建設が進められており,当現場は高槻側にある

新名神高速道路は,名古屋と神戸を結ぶ約174kmの高速道路で,名神高速道路と相互機能を補完したダブルネットワークとして計画された。既に高槻-神戸間が開通している。当社が担当している「新名神高速道路枚方工事」は,現在建設が進められている八幡京田辺-高槻間の中央あたりに位置しており,京阪本線の上を渡る橋梁下部工区間から枚方市内の住宅地の地下へ入るトンネル構造区間までの延長約1kmである。

当社土木部門は,土木管理本部生産性推進部を中核として,ICTやCIMを活用した建設現場のデータ化を通じ,生産性の向上や管理業務の高度化・効率化を図っている。合言葉は「現場の見える化」だ。当現場は「見える化プロジェクト」のモデル現場として,2018年12月からさまざまな技術を集約し,問題や課題の発見など適用の検証を行っている。職員18人,職長・作業員約80人を含め,延べ100人近くを率いる山上隆行所長は,多角的な視点から見える化プロジェクトの技術を検証するとともに,働き方改革につなげていこうと考えている。

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図版:全体図

工事は,高槻JCT・IC方向(左)から橋梁下部工区間,盛土構造区間,掘割構造区間,トンネル構造区間となっている。
トンネル構造区間は,BOXカルバートと回転立坑・換気所の区間に分かれる。そのほか共同住宅の解体がある

施策1モニタリング技術で
安全の見える化

見える化プロジェクトのモデル現場として,技術提案項目と自主項目あわせて35項目の技術導入が計画されており,すでに16項目が導入済みだ。その中に,モニタリング技術を活用した安全管理がある。

現場出入口に設置している「高機能カメラ」は,動体検知機能により休工日など職員がいないときでも監視が可能だ。熱を検知することで夜間でも動作するサーマル機能を備えている。将来的には車両ナンバー検知機能を付加し,車両の入退場管理にも活用する予定だ。現場内では2種類の「ウェアラブルカメラ」を運用。1つは可搬式の「Safie Poket」で,安全巡視員の胸ポケットに装着したり,日々の重点作業場所や重機の運転室に設置したりできる。もう1つは「見リオン’s」で,電源に接続し長時間撮影する場所に設置するタイプだ。

これら計8台のカメラを,それぞれの特徴を生かして運用し,重点作業の管理や録画画像による確認などを行っている。また,常に見られているという現場全体の緊張感を保つ効果も期待される。山上所長は「現在は『カメラを通じて人が判断する』ですが,将来的には画像処理やAIを駆使して『カメラ自体が判断する』ことを実現し,さらなる効率化を目指したい」という。

施策2人と重機の見える化

「顔認証入退場管理システム」は,今後の「建設キャリアアップシステム」連携を見据えた現場労務管理システムだ。入場ゲートを通過し,顔認証を行う。個人認証のほかに,検温サーモカメラで体温を測定する。これは日々の体調管理だけでなく新型コロナウイルス感染症予防対応にも役立った。また,将来的には認証データをクラウド上に保存し,労務集計や延べ労働時間などの集計業務に利用することで,さらなる省力化・効率化を図る予定だ。

また,腕時計型の「バイタルセンサ」で心拍数や皮膚温度などのバイタル情報を取得。モニタリングにより,作業員への声掛けや作業軽減などの対応に加え,夏場の熱中症対策にも活用している。「体調に変化があれば自動的に報せてくれるプッシュ型情報システムの開発を土木管理本部と相談しています」。山上所長からも効率化のための方法を提案している。

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図版:顔認証入退場管理システム

作業員は,現場事務所前に設置された入場ゲートの顔認証入退場管理システムを通過して認証と体温測定,作業終了時は現場の退場ゲートで認証を行う

図版:腕時計型のバイタルセンサ

腕時計型のバイタルセンサは,GPSによる位置情報だけでなく,体調不良などのSOS発信機能も備えている

図版:バイタル情報などのモニタリング画面

バイタル情報などのモニタリング画面

ほかにもGPSで位置情報を把握,重機稼働情報や走行履歴をリアルタイムに表示する「GPSトラッカー」がある。ダンプトラックのルートやサイクルタイムの確認などに活用し,稼働時間による施工機械評価や稼働率の低い機械の返納など,現場業務の効率化につなげることができる。

また,これらの情報はすべて現場事務所内のコントロールスペースで把握でき,あわせて本・支店でも一元管理できるシステムを構築している。

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図版:コントロールスペースの大型ビジョンで,各所に設置したカメラの画像などをモニタリング

コントロールスペースの大型ビジョンで,各所に設置したカメラの画像などをモニタリング

施策3コミュニケーションの見える化

当現場では,見える化プロジェクトの一環として,コミュニケーションツール「Unipos」を導入した。これは職員や作業員を含め,業務中に発見した行動に感謝や称賛を送り合うツールだ。人と人とのつながりを大切にすることで新たなコミュニケーションを生み,やりがいのある現場環境をみんなでつくっていこうという試みだ。山上所長は,導入したばかりでまだ全員が活用できていないとしながらも,「コミュニケーションが広がることは生産性向上の第一歩であり,とても有意義なツールになると思います。全員が使えるように進めていきたい」と語る。

これまでの現場でさまざまな工種を経験してきた山上所長は,「若い職員にも多くの工種を経験させたい」という。そうすることで,休み中の業務をほかの人でも代わりに務めることができる。「休み中に電話がくるとゆっくり休めませんからね」。山上所長は,職員に心身ともにリフレッシュできる本当の休日を取ってほしいと願っている。

当現場には学生や近隣住民の見学者も多い。見える化プロジェクトの最先端のモデル現場として,それを経験している若い職員や入職希望の人たちに夢のある現場環境を見せていってほしい。

図版:Unipos

土木現場への導入は初めてというUnipos。1つの投稿に対して,送られた拍手をポイント化し,毎月表彰している

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Column

「鹿島たんぽぽ活動」
—快適で魅力ある職場環境の創出

当社では,女性の働き方改革推進のために「鹿島たんぽぽ活動」を推進している。これは,女性職員が出産・育児などライフイベントを迎えても安心して働き続け,活躍できるよう,関連制度の充実・運用促進,職域拡大など,土木・建築分野での女性を支援するものだ。女性への支援を通じて,すべての人にとって快適で魅力ある職場環境の創出を目指している。

当現場事務所の設計や設備などの整備も「鹿島たんぽぽ活動」の一環として土木管理本部に相談のもと行われた。「赴任して現場事務所の環境があまりにもすばらしいことに驚きました」という原千尋さん。女性専用のパウダールームには,シャワー室とともに洗濯・乾燥機が完備。休憩時間に着替え,洗濯しておくこともできる。「現場に設置してある男女別の多機能トイレもエアコン完備で非常にきれいです。においもまったく気になりません。着替え台や物置台も設置されていて,女性作業員も喜んでいます」と原さん。自身も「日々仕事が楽しいと感じています」と整えられた職場環境に感謝している。

山上所長は,女性の現場進出を歓迎するとともに,さらに支援できることはないか考えている。「当現場は,次世代の建設生産システムのモデル現場として,さまざまなデータを吸い上げ,ほかの現場に水平展開していきます。同様に,これからの女性の働く環境の見本になればいいなという期待感を持っています」。

図版:原千尋さん

「日焼け跡が気になるので,ヘルメットのあごひもを透明なものに替えてもらいました」と当現場に
今年4月から配属になった工事係の原千尋さん

図版:女性専用のパウダールーム

女性専用のパウダールーム

図版:現場事務所には職員のためのリフレッシュルームも備えている

現場事務所には職員のためのリフレッシュルームも備えている

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