世界と地域をつなぐ
新産業創造・発信拠点
東京国際空港(羽田空港,以下同)の国際線が発着する第3ターミナルへの最寄り駅である「羽田空港第3ターミナル駅」から1駅,「天空橋駅」に直結する「HANEDA INNOVATION CITY」(羽田イノベーションシティ),略称「HICity」(エイチアイシティ)は,大田区と,当社が代表企業を務める「羽田みらい開発※」が,公民連携で開発を進めている「先端産業」と「文化産業」の2つをコアとする大規模複合施設だ。2020年7月に第一期事業の一部エリアが先行オープン,本格稼働してちょうど2年が経つ。2023年夏以降に予定するグランドオープンに向け,現在増築工事が進行している。
今月の特集では,「新産業創造・発信拠点」として世界と地域をつなぐHICityの取組みとその魅力・ポテンシャルに迫る。
※鹿島建設,大和ハウス工業,京浜急行電鉄,日本空港ビルデング,空港施設,東日本旅客鉄道,東京モノレール,野村不動産パートナーズ,富士フイルムの9社が設立した事業会社
HICityは,羽田空港に隣接した敷地面積5.9ha,延床面積13万m2を超す大規模複合施設。もともとは,「羽田空港跡地第1ゾーン整備事業(第一期事業)」として,大田区が日本のものづくり技術や各地域の魅力を国内外に発信する「新産業創造・発信拠点」の形成を目指して公募した事業。2018年5月大田区と事業契約を締結し,50年間の定期借地により羽田みらい開発が整備・運営を行っている。
[HICityに関する主な選定・採択事業一覧]
特別寄稿
「新産業創造・発信拠点」の形成に向けた
まちづくりと新たな価値創造
大田区長
松原忠義
1945(昭和20)年9月21日は,旧羽田三町に暮らす約3,000人に対し,GHQから48時間以内の強制退去命令が下された日です。この出来事は,羽田イノベーションシティ(以下,HICity)が立地する「羽田空港跡地」の原点です。街区の入り口には,旧三町顕彰の碑が関係者のご協力により建立され,この地の歴史を次世代に継承しています。
跡地整備事業は,2010年の「羽田空港跡地まちづくり推進計画」策定以降,国土交通省,東京都,UR都市機構のお力添えのもと,10年をかけて進めてきた,まさに私の区長人生とともにある事業です。
HICityは,大田区の持つ「ものづくりのまち」と「空港隣接」という特性を生かし,日本のものづくり技術や魅力を国内外に発信する「新産業創造・発信拠点」として,公民連携事業により,それぞれの強みを最大限に生かした整備・運営を進めています。
2020年のまちびらき以降,コロナ禍での事業運営となり,鹿島建設さんが代表を務める羽田みらい開発にとっても厳しい経営環境であったと推察します。その中でも,自動運転バスの定期運行やロボットの実証実験といったスマートシティの推進,賑わいと先端技術に触れるイベントの開催など,HICityならではの近未来を見据えた取組みに意欲的に挑戦されてきたことに感謝しています。
区としても,街区内に区施策活用スペース「PiO PARK」を設置し,区内企業をはじめ,国内外の企業や大学,研究機関などが集い,相互交流を通じた新産業創出と区内産業への波及,そして社会課題を解決すべく,さまざまな取組みを進めています。
今年3月には「多摩川スカイブリッジ」が開通し,対岸の川崎市殿町地区のキングスカイフロントとの連携を深める基盤が整いました。また,2023年夏以降には,現在建設中の「先端医療研究センター」等が完成し,いよいよ,グランドオープンを迎えます。これまでのハード面での街区形成のフェーズから,HICityの持つ高いポテンシャルを具現化し,その価値を最大限に発揮していくソフト面の視点を重視したフェーズへと深化していくことが求められます。
多種多様な技術の集積を特徴とする区内ものづくり産業との連携や街区内の入居企業同士の交流を活性化させ,HICityを舞台にヒト・モノ・情報が集積し混ざり合い,さらなるイノベーションが創出されることに,大きな期待を抱いています。
世界の玄関口である羽田の地において,我が国の経済をリードする新産業創造・発信拠点の形成に向け,これからも,ともに挑戦し続けていきましょう。
漢字の「羽」をモチーフとしたHICityのロゴマーク。羽田という立地と,ここに集う人々の翼となってイノベーションを飛び立たせる場所でありたいという思いが込められた。「羽」の両翼の配色は「先端産業」(青)と「文化産業」(赤紫)のイメージカラー