当社が福岡酸素と共同で開発を進めてきた博多コネクタでは開発事業本部がコーディネーター役となり,
環境に配慮した様々な取組みが行われている。その1つが「天空菜園」。
当社の保有技術が活用され,施設運用時の環境負荷を低減させる役割を担うとともに,
ビルの就業者などのステークホルダーをつなぐ役割を果たしている。
今回はこの天空菜園での取組みと,そこから生み出されるにぎわいを紹介する。
次の100年の舞台を作る
「プロジェクトのきっかけは,地主である福岡酸素の創業100周年記念事業による土地有効活用計画です。この土地に関わってきた100年分の諸先輩方の思いを受け継ぎ,『次の100年の舞台』を作ろうとの思いで開発に取り組みました」と語るのは当社開発事業本部事業部の太田雄一郎次長。
博多コネクタ(福岡市博多区博多駅前四丁目)は,企画・設計・施工を当社が担った。規模はS造一部CFT造,地上9階,延床面積2万1,449m2。ファサードデザインは,深い庇とグレー色のガラスカーテンウォールで品格と先進性を表現し,執務室への日射を効果的に遮蔽することで環境負荷の低減にも寄与する。
屋上には,ビル利用者に開放される約150m2の資源循環型の屋上庭園「天空菜園」が設けられ,にぎわい創出の拠点となっている。本ビルには当社が提唱する,様々なステークホルダーをつなぐ持続可能な緑化コンセプト“K-Cowork緑化®”が本格導入された。
K-Cowork緑化は複数の事業者や組織が協働し,そこで収穫できたものを使って付加価値の高い商品を製造・販売することにより維持管理にかかるコストを低減する取組み。売上の一部を翌年の維持管理費などに回すことで,コストを削減し,持続可能な緑化とする。本ビルではサツマイモやハーブ類を栽培し,K-Cowork緑化を推進している。
昨年11月には天空菜園で初めてサツマイモを収穫した。収穫にあたっては,本ビルに本社を置くPayPayカードの企業主導型保育園「にんじんまち保育園」の園児や,ビル内の就業者などが協力して行った。太田次長は「プランターからサツマイモが顔を出した時には,園児たちと一緒に歓声をあげました」と収穫の喜びを語る。その後,採れたサツマイモを原料にオリジナル芋焼酎を製作した。製造は,本ビルの地主でもある福岡酸素の取引先の地元酒造に委託。完成品は贈答用として福岡酸素も活用し,経済循環ループが創出された。
ビル内資源循環の確立
博多コネクタでは,PayPayカードの社員食堂で発生した植物性残渣を,鹿島独自開発のミミズコンポスト(K-BECS※)で堆肥化し,その有機肥料を使い栽培した野菜類を再び社員食堂で活用することで,食物循環サイクルを確立させている。
K-BECSは,ミミズの有機物分解能力を活用するシステムで,撹拌や加熱といった手間・エネルギーがかからず,臭気の発生も抑えられる。堆肥化の過程で電力を必要としないため,設備工事が不要。天空菜園に設置スペースを確保することで,すぐに堆肥化処理をスタートした。
天空菜園では年間最大約500kgの植物性残渣を社内食堂などから回収し,堆肥化する計画となっている。この堆肥で育てた農産物を社員食堂で活用することで,地産地消のリサイクルループを実現している。
持続可能な緑化に向けて
「経済や資源,季節の循環といった博多コネクタのコンセプトをとおして,持続可能性を実感できるビルとして運営していきたいです。緑化というと,基準への適合義務やコストのイメージがつきものでしたが,天空菜園は持続可能な緑化,そして経済的にも循環する緑化を目指しています。天空菜園が入居者同士の交流のきっかけになるような取組みも継続していきたいです。博多コネクタが利用される皆様に愛されるビルでありつづけられるよう,努力してまいります」(太田次長)。
今年5月には新しいサツマイモの苗植えを行い,好循環は継続中だ。今後は,地域での地産地消,季節の贈答品としての活用を通じて,菜園運営コストの低減を図り,将来にわたり持続可能な菜園運営を目指している。
サツマイモの苗植え,ジャガイモの収穫に参加しましたが,天候にも恵まれ,業務の合間に陽を浴びリフレッシュできたことはもちろん,都会のビルの屋上という環境で自然に触れることができ,非日常的で大変貴重な経験となりました。オフィスであるものの,業務外で何か特別なイベントなどの楽しみがあるとモチベーションにもつながるのではないかと考えます。苗植えや収穫のように自然や環境を学ぶSDGsの取組みが今後多くの社員の経験の場となることを期待しております。
博多コネクタはネガティブな要素が一切なく,働くにつれモチベーションが上がる空間です。天空菜園は福岡独特の開放的な眺望がとても魅力的です。苗植えや収穫祭などをきっかけに,博多コネクタのコンセプト『企業の繋がり,人の繋がり,地域・環境との繋がり』が生まれています。特に時折聞こえてくるにんじんまち保育園の園児たちの声に元気をもらっています!
季節のイベントや地域を盛り上げるイベントを提供することができれば,ここで生まれたつながりを大切にして地域コミュニティの活性化にも貢献できると思います。
苗を手に取った時の不思議そうな表情,植え方の説明を聞く時の真剣な顔,土を掘る時の活き活きとした目,もっとしていい?というはずんだ声,楽しくて走りまわってはしゃぐ姿に,子どもたちの嬉しさが溢れていました。
苗を間近で見ることや,植えたり掘ったりする機会がなかなか無い子が多く,それが楽しいものとして行われたことで,作物の育ちや栽培への興味がぐんと深まったと思います。子どもたちは,いただいたジャガイモを一つ,自分で選んで持ち帰り,残りは給食のメニューに加えました。持って帰ったジャガイモを,ずっと握ったまま離さなかった子もいたそうです。家庭で調理し親子の話題にのぼったこと,園のみんなで振り返りながら味わえたことも,大きな意味がありました。
生ごみを堆肥にして菜園に利用することができるのであれば,それに子どもたちが少しでも取り組むことで,環境とごみ,循環について知るきっかけになると思います。また,たくさんの人と関わることは,多様性を知るいい機会でもあり,関わり方や公共の場でのふるまい方などを学ぶ場にもなります。
- #100%再生可能エネルギー使用
- #グリーンインフラ創出
- #ステークスホルダーをつなぐ
- #お湯割りがあう