鹿児島県の北部・薩摩郡さつま町の鶴田ダムは、洪水調節や発電を目的とした多目的ダムで、1966年の完成から半世紀余りにわたって、川内川流域を洪水から守り、電力を供給してきました。2006年の洪水を機に2011年から再開発工事に着手。既存の堤体に放流管3本を増設し発電用取水管2本を移設する工事が行われています。ダム堤体に1度に5か所の孔を削孔するダム再開発工事は国内初であり、堤体削孔の長さ60m、最大水深65mでの作業も国内最大規模です。
平成29年度土木学会賞 技術賞(Ⅱグループ)
ダムを運用しながら堤体に孔をあけるために、ダム上流面に仮締切を設置することになりますが、仮締切工事は潜水作業が多く、特に、鶴田ダムではこれまでに例のない水深65mでの潜水作業を伴います。そこで鹿島と国土交通省九州地方整備局、(一財)ダム技術センター、日立造船は共同で「浮体式仮締切工法」を開発しました。扉体を浮体式とすることでこれまで水中で行っていた扉体同士の連結作業や台座コンクリート打設等の水中作業を大きく軽減することが可能な工法です。安全性の向上とともに工期やコストの低減、品質の向上に大きく貢献します。
浮体式仮締切工法概要
従来式
浮体式
関連情報
鶴田ダムでは5つの仮締切のうち、1か所を浮体式仮締切工法にて行い、仮締切内のドライアップ完了後、堤体を約6m角の矩形断面で掘削しました。その際も、既設構造物やゲート操作などに影響を与えないよう振動対策を万全に行い、無事貫通させました。こうして、2013年度に3本、2014年度に2本の堤体削孔を終え、2016年3月には、洪水調節能力が従前の1.3倍に増強され、運用開始されています。2018年4月現在、既設減勢工の改造工事が終盤を迎えています。既設減勢工の改造工事では、既設堤体の下流側にマットコンクリートを配置して耐震性能の向上を図っています。
鶴田ダムの再開発工事は2018年10月までの予定です。浮体式仮締切工法の初適用など、今後のダム再開発の大きな礎となるダム再生事業となることでしょう。
鶴田ダム施設改造工事
- 場所:
- 鹿児島県薩摩郡さつま町
- 発注者:
- 国土交通省九州地方整備局
- 工事内容:
- 基礎掘削220,000m3、減勢工コンクリート69,567m3、台座コンクリート3基、堤体削孔5条
- 工期:
- 2011年2月~2015年3月
(九州支店JV施工)
鶴田ダム増設減勢工工事
- 工事内容:
- 基礎掘削62,300m3、コンクリート打設107,600m3
- 工期:
- 2012年12月~2017年3月
(九州支店施工)
鶴田ダム既設減勢工改造工事
- 工事内容:
- 土工127,000m3、法面工904m2、ダムコンクリート143,840m3、
コンクリート構造物取り壊し29,700m3、仮設構台3,800m2、仮締切(鋼管矢板)1,630t、
電気設備仮設工一式 - 工期:
- 2014年11月~2018年10月
(九州支店JV施工)