消失が危惧される藻場の再生・保全技術
地域固有の大型海藻類の種苗生産、ブルーカーボンの創出
全国の沿岸海域では海藻が消失する「海の砂漠化―磯焼け―」が進行しています。神奈川県三浦郡葉山町でも2020年、代表的な大型海藻であるアラメ、カジメが衰退し、特に浅場のアラメは消失してしまいました。
鹿島は、消失が危惧される藻場に生育する大型海藻の再生・保全を目指して、地域固有の大型藻類の配偶体を基にした種苗生産システムを確立し、藻場再生に適用しています。
港湾海域では、陸上施設で生産されたアラメの幼体を付着させた種糸をユニット型漁礁の外周に取付けることで、短期間でアラメの藻場を創ることが出来ました。藻場ではメバルの稚魚の成育場やイカの産卵場としての機能を確認しました。今後、港湾海域の藻場再生は洋上風力発電事業などにおける地域環境保全への適用が期待されています。
自然海域においては、近年の磯焼け対策として、地域漁業者による海藻養殖、地域ダイバーとの連携活動により、藻場を復活し、ブルーカーボン※の創出につなげています。
※ブルーカーボン:
海藻等が光合成により、海中のCO2を取り込み、生長の過程で難分解性物質として海底に貯留される炭素のこと。
特許登録済
第31回地球環境大賞 フジサンケイグループ賞 2023年

ユニット型漁礁の設置状況(2021年11月)

アラメの生育状況(2022年6月)

葉山海域の磯焼け状況(2020年11月)

カジメ場の再生状況(2023年1月)
- キーワード
- 藻場、海藻、磯焼け、配偶体、種苗生産
大型海藻の種苗生産技術・海藻養殖への展開
地域固有の藻場を持続させるために、海藻配偶体の単離、培養を行い、成熟促進させて藻体の大量生産を行います。
地域固有の配偶体は、少量での保存が可能であり、1年を通じて藻体の提供が可能です。
種苗生産したカジメやアラメなどの海藻種苗は、地域漁業者の協力により、海面における養殖を実施しています。ワカメ、コンブなどの食用海藻以外で一定規模での大型海藻類の養殖事例は全国でも珍しい取組みです。


室内で種苗生産された海藻種苗(種糸)

漁業者による海面養殖
ブルーカーボンの創出とネイチャーポジティブの取組み
鹿島は、地域の多様な主体(漁協、学校、ダイビングショップ)と連携した地域団体を2006年に結成し、藻場再生活動を18年間継続実施しています。地域の学校でのブルーカーボンの授業、漁業者とダイバーによるウニの駆除や藻場再生の取組みなど、地域連携による持続的な藻場再生は「葉山ブルーカーボンモデル」として注目を集めています。
その成果は、2022年に46.6t-CO2、2023年に49.7t-CO2のブルーカーボンがJBE(ジャパンブルーエコノミー研究組合)により認可されました。今後は、相模湾一帯への展開をはじめ、全国への展開が期待されます。

ダイバーによるカジメの苗の設置活動

海中でのカジメの観察

葉山町、湘南漁協葉山支部との藻場再生の協定

学校における出前授業
引き続き、地域の藻場再生や保全、教育活動などのネイチャーポジティブへの貢献の他、洋上風力発電事業他の事業者と共に、地域における藻場再生計画への本技術適用などを展開する計画です。

学会論文発表実績
- 「フリー配偶体由来のアラメ芽胞体を用いた藻場造成試験」,令和5年度日本水産学会春季大会,2023年
- 「消失が危惧される地域固有の大型褐藻類の再生 ─海のゆりかごからブルーカーボンの創出まで─」,環境浄化技術,2023年
- 「葉山町の多様な主体が連携した藻場保全活動」,全国漁業協同連合会シンポジウム「里海保全の最前線」,2023年
- 「フリー配偶体によるカジメ・アラメの種苗生産と海域における初期生長」,令和4年度日本水産学会春季大会,2022年
- 「アラメ、カジメのフリー配偶体を用いた藻場再生試験」,令和4年度日本水産学会秋季大会,2022年