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Part 2 「日本橋再生計画」 第2ステージの中核プロジェクトを追う 日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区新築工事

日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業A地区新築工事

図版:日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事 地図

[工事概要]
日本橋室町三丁目地区第一種市街地再開発事業
A地区新築工事

発注者:
日本橋室町三丁目地区市街地再開発組合
デザインアーキテクト:
Pelli Clarke Pelli
Architects.Inc
ペリ クラーク ペリ
アーキテクツ ジャパン
ランドスケープデザイン:
ランドスケープ・プラス
基本設計・監理:
日本設計
実施設計:
当社建築設計本部
用途:
事務所,店舗,駐車場
規模:
S造一部SRC・RC・CFT造
(制震構造:HiDAX-R®)B3,26F,PH1F
延べ166,700m2
工期:
2015年12月~2019年3月

(東京建築支店JV施工)

歴史ある地区での大規模再開発

日本橋室町地区は,日本橋魚河岸や三井越後屋(現在の三越本店)発祥の地で,このあたりの一部は,十軒(じっけんだな)店の跡地としても知られている。十軒店とは,雛人形や五月人形などの人形店が軒を連ねていたとされる地だ。江戸時代は節句のたびに十軒もの店舗のほか通りに露店が出て多くの人で賑わったことから,この名がついたとも言われている。

写真:1フロアの専有部が4,000m<sup>2</sup>超のオフィスフロア(施工中)

1フロアの専有部が4,000m2超のオフィスフロア(施工中)

現在,国の重要文化財である三井本館,日本橋のランドマークである日本橋三井タワー(当社施工,2005年竣工)と並び立つ位置で施工しているのが,当プロジェクトだ。外装デザインは,日本橋三井タワーと同じペリ クラーク ペリ アーキテクツが担当。隣接する2棟に統一感を与えるファサードを形成し,日本橋の景観と調和して賑わいを創出する。中央通り沿いに並ぶ建物は,三井本館と同じ31mのスカイラインを意識して建てられ,歴史ある美しい街並みを創っている。

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地上26階,地下3階建ての建物には,地下1階~地上2階に商業施設,3階にはホール,5階から上層階にはオフィスが入る。地上1階には約1,500m2もの大規模な屋外広場空間が形成され,緑豊かな憩いの場を提供する。また,現在整備中の地下歩道を通じて,東京メトロ「三越前駅」とJR総武線快速「新日本橋駅」に直結し,利便性に優れた施設となる。

写真:現場全景(7月10日撮影)

現場全景(7月10日撮影)

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一人ひとりの心に響く工事

当工事は,1フロアの専有部が4,000m2を超えるハイグレードな再開発プロジェクトである。周辺の通りや高速道路からも存在感のある建物は,大型のタワークレーン3基で地上工事を進めていった。現在,敷地の南側では屋外広場となる上部に,跳ね出し長さが20mに及ぶ大きな庇を建設中だ。

すでに躯体工事がほぼ完了した地下空間には,地域のための電気と熱を供給するエネルギープラントが設置される(他社施工)。都心のビル内に発電所を造るため,限られた時間の中で効率的かつ高品質な施工計画が求められ,それに対し全社を挙げて挑んできた。

プロジェクトに計画当初から携わり,現場を率いる高橋佳之所長は,「新築工事の着工から,これまで8,500名もの作業員が工事に携わってきました。現在,一日あたり1,500名を超える作業員たちが工事の進捗にともない,日々,入れ替わりながら工事を進めています。発注者の想い,デザイナー・設計者の意図を作業に従事する一人ひとりの心に響かせることが私の流儀です」と語る。

写真:高橋佳之所長

高橋佳之所長

竣工15ヵ月前,もうひとつの竣工式

地下工事は,15棟の既存建物を解体し,1haもの広大な敷地を深さ約27mまで掘削する大工事である。延べ20万m3の掘削を行う中で,国道・地下鉄・JRなどの重要なインフラに影響を与えることは許されない。さらに,エネルギープラント工事を着実に進めるために,通常の二段打ち工法と併せて,掘削と同時に外周地下構造体を同時並行で構築する画期的な工法に取り組んだ。これは前例のないチャレンジとなった。

工事を進めていく中で,現場担当者は様々な難題に直面する。工事全般を担当する宇敷安敏副所長はこう語る。「地下工事の先行引渡しは,地域に大きく影響する部分であるため,目標よりもさらに早めることを常に意識していました」。工期短縮のため,地下に十分な作業空間を確保できるよう,構台と切梁受けを本設鉄骨に盛り替え,それらを支えていた仮設の構台杭と棚杭を撤去するという提案を行った。これが技術的に一番難しかったという。

盛替え完了後は,1階先行床を施工するのと同時に地下2階の床も先行し,地下の仕事を一気に進めることができた。引渡しは今年1月に無事完了した。これは1ヵ月早い工程で,全体竣工の15ヵ月前にあたる。「良い地下躯体ができたと自負しています。協力会社,所員一同の力を合わせて早期引渡しが実現しました。全体竣工前に,もうひとつの竣工式を終えた気持ちです」(宇敷副所長)。

写真:宇敷安敏副所長

宇敷安敏副所長

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写真:先行して引き渡した地下部分

先行して引き渡した地下部分。ここにエネルギープラントが設置される

写真:(左)構台杭・棚杭撤去前 (右)撤去後

構台杭・棚杭撤去前

撤去後

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鹿島の総合力

当工事の実施設計は当社建築設計本部が担当している。設計と施工の最適化を図りながら,より良い施工方法を考え全体工期にまとめあげたことは,まさに実施設計施工だからこそなし得た。また,「設計の他にも技術研究所の支援や,地下歩道工事を担当している東京土木支店との連携など,多くの関連部署と一体となって建物を造り上げています。まさに鹿島の総合力を結集させたプロジェクトです」と,工務全般を担当する藤井克司副所長は語る。これほど大きいプロジェクトとなると,社内のみならず発注者側も多くの部署が関わってくる。それらを見事にまとめあげ,信頼関係を築いた藤井副所長。7社ものデザイン会社の調整や,30名を超える施工図スタッフの統括のほか,現場外で製作している部材の製品検査などで日本各地のみならず東南アジアにも飛び回る。現場から見えないところでは,こうして複雑な調整や交渉などを行っている陰の立役者がいるのだ。

写真:藤井克司副所長

藤井克司副所長

6月14日,無事に上棟式を迎えることができた。今後は内装設備工事がメインとなり,来年3月の竣工に向けてラストスパートをかける。完成すると、ここは日本橋の北の玄関口として,賑わい形成の拠点となり,日本橋再生に貢献していく。

高橋所長は「現在,日本橋再生計画が進み,街全体の賑わいを取り戻そうとしています。私たちはお客様の想いを形にするために,お手伝いをしている最中です。日本橋は,伝統的,歴史的なものをきちんと残して引き継ぎながら,新しい魅力が加わりさらに賑わいの街になっていくと思います」と語る。

写真:上棟式の様子

上棟式の様子

日本橋再生の中核プロジェクトを担う2人の所長は,30代の頃「日本橋三井タワー」の施工に携わった。そこで当時の所長,副所長から多くのことを学び,その想いを引き継ぎ,今の工事に挑んでいる。その姿は,伝統を受け継ぎながらも,新たな価値を次世代へ残そうとする日本橋という街と重なるように見えた。

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図版:完成イメージ(地上1階の屋外広場空間)

完成イメージ(地上1階の屋外広場空間)

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