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Part 2 「日本橋再生計画」 第2ステージの中核プロジェクトを追う 日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事

日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事

図版:日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事 地図

[工事概要]
日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業
(C・D街区)新築工事

発注者:
日本橋二丁目地区市街地再開発組合
設計:
日本設計・プランテック設計共同企業体
用途:
オフィス,商業施設など
規模:
S造一部SRC・RC・CFT造
(制震構造: HiDAX-R®
B5,32F 総延べ148,064m2
工期:
2014年12月~2018年6月

(東京建築支店施工)

図版:日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業(C・D街区)新築工事 地図

[再開発エリアの街区]
A街区-太陽生命日本橋ビル〈日本橋髙島屋S.C.東館〉
(他社施工)
B街区-髙島屋日本橋店〈日本橋髙島屋S.C.本館〉
(他社施工)
C街区-日本橋髙島屋三井ビルディング
〈日本橋髙島屋S.C.新館〉(当社施工)
D街区-防災備蓄倉庫(当社施工)
〈 〉内は,低層部商業施設名称

※東京メトロ「日本橋駅」からA街区につながる地下通路を整備し,歩行者ネットワークを構築(当社施工)

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地域の街づくりに貢献

現在,百貨店建築として初めて国の重要文化財に指定された髙島屋日本橋店を中心とした「日本橋二丁目地区第一種市街地再開発事業」が進められている。髙島屋,太陽生命保険,三井不動産を中心とした再開発組合が,商業・文化の拠点として発展してきた日本橋に,オフィス,商業,文化,観光機能などを備えた複合用途の建物を開発することにより,地域の街づくりに貢献することを目的とした事業だ。東京メトロ「日本橋駅」に直結する約2.6haの区域を4つの街区(A~D街区)に分け,複合ビル2棟の整備と髙島屋日本橋店(本館)の保存・改修を行う。

当社が施工を担当するのはC街区とD街区(防災備蓄倉庫)。主要部となるC街区〈日本橋髙島屋三井ビルディング〉は,約15万m2の複合ビルで,地下4階~地下2階に駐車場,地下1階~地上7階に商業施設〈日本橋髙島屋S.C.新館〉,9階~32階がオフィスとなる。当社が開発した世界最高水準のエネルギー吸収効率を誇る新世代の制震装置「HiDAX-R®」も導入されている。

写真:再開発エリア空撮(2018年6月19日撮影)

再開発エリア空撮(2018年6月19日撮影)

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常に挑戦する雰囲気を築く

7月2日,晴天のなか多くの関係者が出席し,日本橋髙島屋三井ビルディングの竣工式が行われた。現場を率いてきた斉藤栄一所長は安堵の表情を浮かべながら語った。「狭い場所に,深くて高い建物を造るのが,この現場の特徴。日々緊張の連続で,これまでは歓びを味わう余裕はなかったが,この瞬間を現場に関わった全ての人と分かち合いたい」。この言葉は,着工からの約4年が,様々な困難との対峙だったことを示す。

地下工事は,大深度かつ大規模なものだった。遮水性山留め壁(SMW連続壁)は深さ65m,掘削する深さは35mにもおよび,着工当初から全体工程への影響が大きいクリティカルパスが待ち構えていた。念入りな準備が必要となるが,工程から逆算すると地上と地下の施工を同時に進める逆打ち工法以外の選択肢はなかった。この地下工事に挑むにあたり,技術研究所,建築設計本部,東京建築支店,グループ会社のアルテス,各協力会社などからなるワーキンググループを結成。既存躯体の解体,資材の楊重を行う仮設開口,先行床の構築方法などについて,計画段階から効率化・合理化を徹底的に追求し,最大の山場を当社が持つ総合力で乗り切った。また,オフィス,商業,駐車場の各施設のプランや建物ボリュームが異なることから,柱のスパン割が施設毎に違い,その調整のため曲がった柱が必要だったことも施工を難しくした。特に曲がった構真柱をバランス良く吊り上げ,正確な位置に設置するための冶具を新たに開発するなど,様々な工夫を凝らしている。

写真:斉藤栄一所長

斉藤栄一所長

写真:地下1階の構真柱(施工中)

各施設のプランや建物ボリュームが異なることから,柱のスパン割が施設毎に違い,各所に曲がった柱が必要となる。写真は地下1階の構真柱(施工中)

「施工に関する技術的な課題だけでなく,海外調達やICTによる業務改善など,チャレンジすることが数多くあり,それが現場の皆のやりがいにつながった」と明るく話す斉藤所長。困難や難しいという言葉より“チャレンジ”という言葉を口にすることが多い。この前向きな姿勢が,所員・協力会社へ浸透し,あらゆる課題に常に挑戦する雰囲気が現場全体に築かれていった。

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若手にチャンスを与える

斉藤所長のモットーは“若手にチャンスを与える”ことである。その代表格が,入社11年目の小林嵩明工事課長代理だ。これまで埼玉県で,専門学校の校舎や廃棄物処理場などの施工管理を担当してきたが,入社以来,都心部で超高層建築を造ることに憧れていたという。希望が叶ったのは2016年7月だった。着任直後は,屋上工事を担当。その後,“ガレリア”と本館への連絡ブリッジの施工管理も任されることになった。ガレリアとは,B街区とC街区の間に整備される鉄骨とガラスの大庇である。新館の地上約40mに設置され,全長約100m,庇の跳ね出しは約20mもの規模だ。再開発エリアのシンボルであり,賑わいの核とされる。「象徴となるガレリア担当を告げられ,誇りに思うとともに,その責任の重さを感じました」(小林課長代理)。

写真:小林嵩明工事課長代理

小林嵩明工事課長代理

たくさんの笑顔のために

ガレリアは本体建物の施工中に,追加工事として発注されている。未だかつてない片持ちの超大型の庇であり,施工や安全性などに関する管理基準の策定が急務となった。主要な部材である鉄骨やガラスから仮設計画まで,念入りな検討が行われた。そして,小林課長代理には,それに基づき精度良く安全な施工管理が求められる。ガレリアの鉄骨は15ユニットに分割し,オフィスの屋上で地組。タワークレーンを使って約100m吊り降ろす。併せて各ユニットをつなぐ鉄骨やガラスなどを施工するための吊り足場,庇の吊り材となる鋼管と鋼製のロープを設置していく。「最初のユニットを本体建物に接合する時が,最も神経をすり減らしました。計画は万全だとはわかっていても,現場での施工は様々な条件が絡みます。協力会社とともに実証実験を重ねるなど慎重に準備を進めていきました」と小林課長代理は振り返る。ミリ単位の施工を成し遂げ,無事に接合を成功させる。

その後も,息を抜くことはできなかった。庇は,重要文化財である本館の特徴的なエレベータ機械室をかわすため曲線を描くなど施工を難しくする要因が幾多もあり,各ユニットの形状は少しずつ異なるからだ。当然,その後のガラス施工も複雑さを極めた。そして,2017年6月に始まったガレリア工事は,吊り足場の解体まで9ヵ月,目標とする精度を確保して無事に完了した。「難しい工事でしたが,任せてもらったことを光栄に思います。ここはメインストリートとなる場所。たくさんの笑顔を見に来るのが楽しみです」(小林課長代理)。

写真:鋼製ユニットはタワークレーンを使って約100m吊り降ろした

鋼製ユニットはタワークレーンを使って約100m吊り降ろした

写真:ガラスの取り付け作業

ガラスの取り付け作業

写真:ガレリア全景(2018年5月22日撮影)

ガレリア全景(2018年5月22日撮影)。重要文化財である本館の特徴的なエレベータ機械室をかわすため曲線を描いている

一人の現場マンとしての覚悟

池田豪職員は,現場に初めて常駐するIT担当として,日々奔走を続けてきた。着任したのは,着工して間もなくだった。「現場に身を置いて初めて,現場にとって何が必要かを理解できるようになりました。これまでITをとおして現場を支援してきたつもりですが,職長さんと会話をしたことはありませんでした。それでは本質は見えませんよね」と池田職員は話す。着任当初から,こう考えていた訳ではない。斉藤所長とスラブや配筋といった建築用語で現場のことを話していた時のことだ。「僕はIT担当なので,建築のことは良くわからないんです」と何気なく口にした言葉が,斉藤所長の表情を険しくした。「お前は現場にいるんだよ。一人の現場マンとしての覚悟を持て」。この言葉が,池田職員の仕事への姿勢を変えた。建築の専門書を読む時間を作り,自己研鑽の日々が続いた。視野が広がり,現場を見る目も変わってきた。協力会社への電話指示が多いと,認識に相違がでると感じ,社員と協力会社が共有できるSNSツールを導入。写真や動画を添付して正確な指示を促した。斉藤所長も社員全員へのiPad導入,職長へのスマートフォン移行を要請し,背中を押した。全社標準のICTツール展開に際しても,現場目線で有益な運用方法を徹底的に追求している。池田職員が重視したのは,職長会〈俺の職長会〉での講習会を都度開催することだ。「ICTツールは,業務の本質と合致し,皆に使ってもらい,役に立たなければ意味がない。ここで培ったノウハウを,他現場へ展開していくのが私の使命だと思っています」。ここにも,チャレンジ精神がしっかりと根づいていた。

※iPadは,米国Apple Inc.の登録商標です

写真:池田豪職員

池田豪職員

写真:内装仕上げ工事用の帽子

※俺の職長会
名づけ親は斉藤所長。協力会社とのコミュニケーションを重視するとともに,自主性と一体感を醸成したいとの思いが込められている。内装仕上げ工事用の帽子デザインは,その凝縮といえる

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New Spot 2018年9月25日「日本橋髙島屋S.C.新館(専門店)」がオープン

当社が施工を担当した日本橋髙島屋三井ビルディングの低層部(地下1階~地上7階)は「日本橋髙島屋S.C.新館(専門店)」として,9月25日にオープンする。

本館と調和したファサードデザインが印象的な専門店ゾーンは,“日本橋生活者のための場の提供”がコンセプト。日本橋エリアを生活拠点とし,暮らしを慈しみ楽しむ人々=「日本橋生活者」に職場でも家でもないサードプレイスとして心地よく過ごせる場所を提供する。日本初上陸や商業施設初出店を含め,計114店舗が出店予定だ(5月28日時点)。

屋上には,庭園が整備され,訪れる人々の憩いの場となる。連絡ブリッジで結ばれた本館と東館の緑化空間と合わせ,約6,000m2のオープンスペースが創出され,日本橋ガレリアとともにエリアの魅力を高め,回遊性の向上が図られる(本館屋上は2019年春完成予定)。

新館のオープンにより,本館・東館・ウオッチメゾンの4館体制で,約6万6,000m2の新・都市型ショッピングセンターが誕生する。

写真:新館オープン時の予想図

新館オープン時の予想図

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