未曾有の大被害をもたらした「阪神・淡路大震災」から20年が経つ。月報では,全社的支援体制で対応した復旧・復興支援活動を振り返りながら,自然災害における建設業が果たすべき役割について考えた。また,今も復興へ向け懸命な努力が続く東北地方の現況も伝えている。当社が,調査・測量・設計・施工などの総合的なマネジメントを担っている復興まちづくり事業では,宮城県女川町,岩手県宮古市田老地区で「まちびらき」が行われた。福島県富岡町では,放射性物質を含む廃棄物の処理が進む。当社が培ってきた技術と経験を,災害廃棄物処理,復興まちづくり,防災施設,インフラ,産業施設,文化財修復,そして原子力発電所など,様々な分野に活かしている。
日本列島は,これまでも巨大地震だけでなく,台風,豪雨,火山噴火,大雪,竜巻などにより,幾度も大きな被害を受け,その度に,私たちは,復旧・復興活動に尽くしてきた。まさに建設業の歴史は,自然災害との対峙の歴史ともいえる。1947年には,戦後間もない日本をカスリーン台風が襲う。関東地方で1,100人の死者を出した大災害で,当社(鹿島組)は,利根川大決壊の緊急締切工事の特命を受け,総動員体制で土堤を築いた。今年9月の「関東・東北豪雨」でも鬼怒川の堤防決壊への緊急支援に対応している。
そして,自然災害に対する絶え間ない研究開発も建設業の使命であり,責任でもある。地震国である日本に超高層ビルを実現した柔構造耐震技術,供用中の橋梁を免震化する技術,洪水被害を軽減するダム再開発技術など──。当社は,時代に先駆け数多くの技術を社会に送り出してきた。1985年には制震構造の研究開発を開始し,これまで様々な制震システムを開発・実用化している。それから30年という節目に,世界初となる地震エネルギーで揺れを止める制震装置「HiDAX-R(レボリューション)」を開発した。また,新宿三井ビルディング(1974年竣工)に,長周期地震動を抑える制震技術「D3SKY」を導入。4月,屋上に巨大な“振り子型のおもり”を設置する工事を終え,最新の超高層ビル並みの制震効果を実現した。