南側俯瞰
(photo:新建築社写真部)
築33年を経た武蔵野市の清掃工場の建替え計画である。「ごみを通して社会の環境問題にふれる施設としての役割を果たす」という市の基本理念のもと,新施設の計画を行った。
この施設の最大の特徴はその立地にある。計画敷地は市役所に隣接し,周囲を住宅地にとり囲まれている。そうした立地に清掃工場を計画するにあたっての中心的なコンセプトが「清掃工場に見えない清掃工場をつくる」ことであった。
コンセプトの実現のために,ふたつのテーマに取り組んだ。ひとつは建物のボリュームをできるだけ小さくすること。そのために建物の容積の半分近くを地中化するとともに,プラント機器との厳しいレイアウト調整を経て,建物の主要ボリュームを約55m四方の平面と15mの高さに抑えた。これにより住宅地にあっても違和感のないスケールが実現できた。もうひとつは外観デザインの工夫だ。計画敷地の周辺には,コブシやケヤキ,シラカシといったかつての武蔵野の雑木林を特徴づける植生が見られる。そうした武蔵野の雑木林を想起させるものとして竪張りのテラコッタルーバーと壁面緑化を組み合わせた外装を採用し,地域の歴史と環境に馴染んだ建物となることを意図した。先述の抑えたボリュームに加え,建物全体の形状を凹凸のない矩形に整えること,そして建物全体を覆ったルーバーの背後に給排気口や配管類を隠すことで,一見して清掃工場に見えない外観をつくり出すことができた。
建物に隣接して設けた広場では市民のイベントが開催されるなど,従来の清掃工場をこえた施設のあり方が生み出されつつある。(早舩雅之)
南東側外観
(photo:石黒写真研究所)
連絡通路
(photo:石黒写真研究所)
ごみピットの様子を見学者通路からのぞくことができる
(photo:石黒写真研究所)
見学者通路(焼却炉室前)
(photo:石黒写真研究所)
見学者ホール
(photo:石黒写真研究所)
武蔵野クリーンセンター(東京都武蔵野市)
低炭素社会を実現するための拠点として地域に開放し,周辺の街づくりへと展開することを目指した武蔵野市のごみ焼却施設。2017年度グッドデザイン賞受賞(荏原環境プラント,武蔵野市,水谷俊博建築設計事務所と共同受賞)
原発注者:武蔵野市
発注者:荏原環境プラント
設計:当社建築設計本部
デザイン設計監修:武蔵野市,水谷俊博建築設計事務所
規模:工場棟—SRC造一部S・RC造 B2,3F延べ8,871m2
工期:2013年7月〜2017年3月竣工
(東京建築支店施工)
早舩雅之
(はやふね・まさゆき)
建築設計本部
グループリーダー
主な作品:
- 佐藤製薬
東京物流センター - 弘前航空電子 G棟
- パイオニア・
ディスプレイ・
プロダクツ山梨工場 1号棟 - 台湾特格新工場
- 北越銀行体育館
福永太郎
(ふくなが・たろう)
建築設計本部
チーフ
主な作品:
- 日本航空電子工業
昭島事業所
総合評価試験棟 - 三洋電機加西事業所
蓄電池棟