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未来の水素エネルギー利用をつなぐ 低炭素社会への地産地消型まちづくり しかおい水素ファーム

家畜ふん尿から水素をつくる世界初の実証事業

乳牛1頭が出す家畜ふん尿で,燃料電池自動車(FCV: Fuel Cell Vehicle)1台を走らせる──。北海道十勝地区の鹿追町に開設された「しかおい水素ファーム®」では,家畜のふん尿を原料にして水素をつくる世界初の実証事業が行われている。

低炭素な水素社会の実現へのモデルケースとして注目を集めるこの事業は,環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択された。水素をつくる,運ぶ,使う,という一連の仕組み(サプライチェーン)の構築をめざしている。その利用プロセスを鹿島が統括し,純水素燃料電池やFCV,FCフォークリフトの運用や今後の水素需要の調査・研究を担当する。

図版:しかおい水素ファーム

写真:しかおい水素ファームの全景

しかおい水素ファーム®の全景

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産官学アライアンス

サプライチェーンの構築は,鹿島を含む4社の共同事業者により運営されており,北海道庁,鹿追町,帯広市,北海道大学,帯広畜産大学などが,実証事業をバックアップしている。代表事業者であるエア・ウォーターは,製造プロセスを統括。日鉄住金パイプライン&エンジニアリングは水素ステーションを担当し,日本エアープロダクツは水素精製設備や水素ステーションに技術を提供している。

鹿島は,バイオガスプラントの設計・施工・維持管理に30年以上の実績を有しており,バイオガスプラントの普及を目的としたこのプロジェクトには,早い段階から参画してきた。産官学連携のアライアンスにより技術とノウハウを共有することで,世界初の実証事業が推進されている。

災害に強いエネルギー供給

家畜ふん尿から水素の生成までは3段階。❶家畜ふん尿を発酵させてバイオガスを発生(既存施設を活用),❷バイオガスからメタンガスを抽出,❸メタンガスと水蒸気から水素を発生,という流れとなる。

乳牛1頭が1年間に出すふん尿は約23t,そこから製造できる水素は約80kg。これでFCVが約10,000km走行でき,自家用車の平均的な年間走行距離に匹敵する。製造された水素はFCVやFCフォークリフトへの利用のほかに,純水素燃料電池のコージェネレーション技術によって電気と温水を供給する。電気や温水は,地域の酪農家や観光施設,チョウザメの養殖場で利用される。

機械化された現代の酪農では,自然災害による停電が発生した場合に,大きな被害が予想される。この課題に対し,水素は貯蔵と運搬が可能なため,有効な解決策となる。

人口約6,000人の鹿追町では,約2万頭の乳牛が飼育されている。地域資源を活用しながら,災害に強く,地産地消型のエネルギー利用を軸としたまちづくりの計画が,「しかおい水素ファーム®」でのアライアンスにより進められている。

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水素ファームの広域展開に向けて

鹿追町での事業の終了後は,乳牛2,000頭以上の規模の酪農地域を想定した広域展開モデルの実現をめざす。このモデルが展開できる地域としては,道内15ヵ所,全国30〜50ヵ所を想定。水素輸送の技術の発展によっては,地産地消だけでなく,道内あるいは本州の都市部などでの活用も視野に入れている。

家畜ふん尿を身近な資源へと変換するアライアンスによって,農業地域における水素社会の将来像が現実味を帯びてきた。このなかで鹿島の役割は,広域展開モデルの実現に向けた構想をとりまとめ,その実現に向けたロードマップを構築することにある。

昨年12月26日に政府が示した「水素基本戦略」では,地域資源を活用した低炭素なサプライチェーンの構築・普及を推し進める方針が示された。社会インフラを建設してきた豊富な経験を生かし,自治体や共同事業者の力を集約して,さまざまな課題を解決し,事業をかたちにする。多彩なプロフェッションが集うアライアンスでこそ,鹿島の総合的なマネジメント力が生かされる。

図版:水素をつくる,運ぶ,使うの一連の仕組み

水素をつくる,運ぶ,使うの一連の仕組み(画像をクリックすると拡大表示されます)

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