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「場」づくりが生む創造性

ともにつくる

社屋の新築や更新,業務改善などをきっかけに新たなワークプレイスを築く機会が生まれる。そこから実際に建物が完成し,運用されていくまでには,ワーカーや経営者などクライアント側とのやりとりが頻繁に行われる。要望やコンセプト,それに対するプランの提示など,数多くの議論を積み重ねていく「場」づくりのなかにも,創造的なプロセスを見いだすことができる。

デンカの通称で知られる化学メーカー,電気化学工業のイノベーションセンター(東京・町田市)。「オープンラボ」とのコンセプトのもとで敷地内にあった約40もの研究施設と150人の研究者の集約化を図り,建設された。

図版:イノベーションセンター

イノベーションセンター
Photo : 川澄・小林研二写真事務所 土戸雅裕

建物は敷地にもともとあった2mの高低差を積極的に用いて3層のスキップフロア構成とした。中央には中庭を配し,らせん状の回遊空間を形成,オフィス内が一体的に見通せ,研究者に適度な緊張感と開放感をもたらす「見る」「見られる」の関係をもった環境を創出,コンセプトが明快に具体化された。

また電気化学工業と当社では,高強度部材の「サクセム」を共同開発。エントランスの庇,南側ファサードのルーバーにそれを採用した。空間づくりだけでなく,実際の社屋建設においてもともにつくりあげる試みがなされた。

ワーカーの生産性や創造性を高めていく「場」は,空間の設えといったハード,そこでのワークスタイルやマネジメントなどのソフトの双方があいまって醸成される。場づくりそのものもまた,ワーカーや設計者の創造性を生む可能性を秘めている。

※超高強度繊維補強モルタル(SUQCEM(Super high Quallity CEmentitious Material))。高い圧縮強度に加え,鋼繊維の補強効果による高い引張強度,高靱性をもち,部材厚を薄くできる。庇は部材長さ7m,幅2mでありながら,先端の見付厚50mmを実現

改ページ

図版:中庭を囲み,スキップフロアにより回遊できる大きな一体空間となったデンカイノベーションセンター

中庭を囲み,スキップフロアにより回遊できる大きな一体空間となったデンカイノベーションセンター。部署ごとに分断されていた壁をなくし,自由度やスペース効率を向上させ,他フロアと「見る」「見られる」刺激ある関係をつくりだした 

図版:イノベーションセンター正面

イノベーションセンター正面。南側外壁に使われているのがサクセムを利用した日射遮蔽ルーバー。ブラインドレスで明るく省エネ対応を実現している 
Photo : 川澄・小林研二写真事務所 土戸雅裕

デンカイノベーションセンター

場所:
東京都町田市
発注者:
電気化学工業
受注者:
当社建築設計本部
用途:
事務所,研究施設
規模:
RC造一部S造 3F,PH1F 延べ6,140m2

2014年4月竣工(東京建築支店施工)

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