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本誌2018年7月号の特集「鹿島働き方改革」では,
現場所長の声を通じて,
新たな働き方に取り組む現場を紹介した。
今月から「私たちの働き方」と題して,
改革に挑む現場を不定期で発信していく。

第1回
IHI新拠点建設工事

関係者の協力を得ながら,週休2日をやり遂げたい―― 沼尻 昭 所長

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[工事概要]

IHI新拠点建設工事

  • 場所:埼玉県鶴ヶ島市
  • 発注者:IHI
  • 設計:当社建築設計本部
  • 規模:民整備棟—S造 2F/
    事務所棟—S造 2F
    特高建屋棟—S造 1F/
    油脂庫—S造 1F
    総延べ約29,000m2
  • 工期:2018年11月~2019年8月
    (関東支店施工)
地図
図版:完成イメージ

完成イメージ

中期経営計画の基本方針の一つ「次世代建設生産システムの構築」では,生産性向上と働き方改革を両輪としている。それを体現しているのが「IHI新拠点建設工事」(埼玉県鶴ヶ島市)だ。着工は昨年11月,今年8月までに床面積約2万4,000m2もの民間航空エンジンを対象とした整備棟などを施工する。発注者のIHIにとっては21年ぶりの新拠点。成長著しい民間航空エンジン事業を拡大するための重要な位置づけとなり,2019年内の稼働開始を目指している。

10ヵ月という短工期を実現するための鍵となるのは,特集でも紹介した「フロントローディング」だ。工事に着手する数ヵ月前には,設計担当者ほか多くの関係者とともにBIMによる3Dモデルを完成させ,マスター工程を導き出した。施工上の特徴として,エンジン整備のための天井クレーンのほか,電気,空調,給排水,消防設備など,鉄骨から吊るものが多く,鉄骨の形状も複雑となることが挙げられる。現場を率いる沼尻昭所長は,鉄骨関連の市場を考慮すると着工後の発注では間に合わないと判断。顧客や協力会社からの理解を得て,着工前に鉄骨を先行発注することに漕ぎ着けた。早い段階から様々な課題を整理でき,関係者間のスムーズな合意形成につながったという。

現在,鉄骨工事を継続しながら耐火被覆や外装工事を進めている。4月からは内装工事にも着手した。ハイピッチで進む工事であっても,80日の閉所を掲げた。週休2日のペースだ。第1回は,この現場の取組みから,働き方改革のヒントと課題を探る。

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図版:現場状況(4月時点)

現場状況(4月時点)

鹿島働き方改革の実現に向けて

取組み1週休2日にプラスαを

当社では,特殊な条件の現場を除く全ての現場で2021年度末までに週休2日実施率100%を目指している。沼尻所長は,着工前のマスター工程作成時点で,80日の閉所を盛り込んだ。「フロントローディングにより着工前としては,かなり正確な施工計画も含めた工程を作成することができ,週休2日ペースの閉所が可能だと判断しました」。これまで計画どおり工事が進み,工期の短さを感じさせない落ち着いた雰囲気が現場にはある。もう一歩,踏み込んだ取組みも実践中だ。所員にもっと休みをとってもらいたいと,竣工の半年前から休日計画を策定し,全員で共有している。この取組みは,約5年前に中部支店の現場で副所長を務めていた時に発案して以来,着任した現場で実施してきた。「半年先であれば,仕事の調整もしやすいですし,何より家族との予定が立てやすいです」。今も単身赴任中の沼尻所長。家族との時間を大切にして欲しいという想いが滲みでる。

取組み2状況に合わせ最適ツールを選ぶ

魅力ある就労環境とは,休暇を取得できるだけではない。安全が守られ,安心して働けることも大切な要素だ。沼尻所長は,これまでも安全に関する周知・伝達を丁寧に,そしてスピーディに所員から最前線で働く作業員まで伝えることを心掛けてきた。しかし,作業員に対しては,口頭やプリントアウトした紙に限られ,本当に理解してもらっているのかフラストレーションがあったという。

そこで,今回の現場では,朝礼台に大型のスクリーンを設置。過去の災害事例や支店などで行われる安全衛生関連の会議での周知事項を,具体的なビジュアルや説明用パワーポイントを映し出している。周知メールを直接スクリーンで見てもらうこともある。多くの作業員が,スクリーンに集中しているのを見ると安全第一の姿勢が伝わっていると実感できるという。また,電子ホワイトボードも導入し,重機や資材の配置情報などのデジタルデータに対して,手書きで注意事項を書き込むなどの効率化も図った。さらに,ドローンによる現場パトロールも開始した。

「技術の進歩により,ツールの選択も増えました。これからも現場状況に合わせて最適な手法を選んでいこうと思います」。

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図版:朝礼台に設置した大型のスクリーンで過去の災害事例や対策を周知している

朝礼台に設置した大型のスクリーンで過去の災害事例や対策を周知している

図版:ドローンによる現場パトロール映像。現場事務所から作業状況を確認できる

ドローンによる現場パトロール映像。現場事務所から作業状況を確認できる

協力会社の声

協力会社の皆さんは,この現場での取組みをどう感じているのか。
週休2日とフロントローディングについて話を聞いた。

週休2日について

  • 若い人は休みが欲しいと思う人が多いようで,土曜休みを歓迎しています。
  • 家族と過ごす時間,趣味に使う時間が増え,生活が充実しました。
  • 他の現場は土曜稼働しているので,(所属する)会社から指示があれば出勤しているのが現状です。仕事場が複数になるのは,少し大変ですね。また,首都圏の現場だと工具などを車で運べないので,移動面での苦労もあるとの声も聞きます。
  • 30代,40代の人は,お金の面での心配もあります。労務単価が上がっていると聞きますが,まだ実感はありませんね。
  • 若い人も,休みより技術を身に着けたいと意欲的に働いてくれる人がいる一方で,暑さ寒さがない室内作業の方が良いと辞めてしまう人も多いです。ものづくりの楽しさを知る前に,この職から離れてしまうのは残念です。
写真

左から,クリマテック 増田成喜さん,きんでん 栗林覚さん,外久保工務店 佐藤宇市朗さん,
大木組 斉藤有範さん

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フロントローディングについて

  • 設備を担当していますが,施工品質や効率化を図るため,どの現場でも3Dモデルの作成を標準としています。通常は簡易な構造モデルを作成して,そこに設備情報を重ねていきます。
  • この現場では,着工前から精度が高い鉄骨の3Dモデルを用意してくれたので,2週間以上の作業が短縮されました。これは大きいです。
  • 工事の特徴上,設備が複雑で,電気,空調,衛生関連の会社が3社に分かれていますが,各社がデータを重ねていく作業についても早い段階から3Dモデルがあるのは有効で,関係者間の合意も早く,施工ミスを防ぐことができると思います。施工で使える製作図としての3Dモデルがあることが,非常に重要です。

写真

新日本空調
佐藤勇太さん

図版:3Dモデルの例

3Dモデルの例。見える化により,施工や意思決定,合意形成を支援している

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