環境を守り、
次世代へつなぐ

「2050年温室効果ガス排出ゼロ」を呼びかける国際社会。
鹿島も2013年に「鹿島環境ビジョン トリプルZero 2050」を策定、「脱炭素」「資源循環」「自然共生」を軸に
環境配慮型社会の構築に取り組んでおり、海外事業においても、様々な挑戦を続けています。
今回はその中でいくつかの具体的な活動やプロジェクトを紹介します。
第1章 グリーンビルディング
グリーンビルディングとは、建設や運営にかかるエネルギーや水使用量の削減、施設の緑化等建物全体の環境性能が高まるよう最大限配慮して設計された環境配慮型建築を指します。グリーンビルディングに関する認証制度は世界各地で存在しますが、鹿島は各国各地域のプロジェクトでこれらの認証を獲得し、環境配慮型社会の構築に寄与しています。
各国の環境認証制度例

LEED
発祥地:米国
Leadership in Energy and Environmental Designの略で、米国グリーンビルディング協議会(USGBC)が主宰する建築と敷地利用についての環境総合性能評価指標。認証取得には、必須項目の要件を満たした上で、選択(加点)項目のポイントにより評価レベルが決められる。世界で最も広く利用されているグリーンビルディング評価システム。
Platinum / Gold / Silver / Certified

BREEAM
発祥地:英国
BREEAM(Building Research Establishment Environmental Assessment Method/建築物環境性能認証制度)は1990年に建築研究所(BRE)が発表した建築物や地域のサステナビリティを測定する国際的な指標であり環境認証の中で最も歴史が古い。世界90を超える国々で導入されている。
Outstanding / Excellent / Very good / Good / Pass

GBAS
発祥地:中国
2006年に中国住建部が発表した「緑色建築設計標識」で、中国の緑色建築(グリーン・ビルディング)の国家基準。
* 下記【コロナでの挑戰(中国)】にて弊社が取得した緑色建築設計証書をご覧ください。
3つ星 / 2つ星 / 1つ星

Green Mark
発祥地:シンガポール
2004年にシンガポール建築建設局(BCA)が策定した制度。シンガポールでは2030年までに全建物の80%でグリーンマーク取得を目標とするグリーンビルディング・マスタープランを構築している。
Platinum / Gold+ / Gold / Certified

CASBEE
発祥地:日本
2001年に国土交通省支援のもと、産官学共同プロジェクトとして建築物の総合的環境評価研究委員会が設立され策定された建築環境総合性能評価システム。
Sランク / Aランク /
B+ランク / B-ランク / Cランク
-
※ LEEDのワードマークはThe U.S. Green Building Councilが所有をしており、許可を得て掲載しています。
-
※ BREEAMはBRE(Building Research Establishment Ltd. Community Trade Mark E5778551)の登録商標です。 BREEAMのマーク、ロゴ、シンボルはBREの著作権であり、許可を得て複製しています。
-
※ CASBEEのロゴは適切な許可を得て掲載しています。
ZEBへの挑戦(シンガポール)
シンガポール国立大学(NUS)は、デザイン環境学部の新校舎「SDE4」の建設に当たり「ネットゼロエネルギービル(Net ZEB)」を目指した提案付き入札を公示しました。
この入札においてカジマ・オーバーシーズ・アジア(KOA)はKaTRIS(鹿島技術研究所シンガポールオフィス)と協調し、以下の提案を実施しました。
- 計画の分析や予測などのエンジニアリングサポート
- 実験・検証サポート
- 運用開始後の検証
- 次期計画へのフィードバックの実施
この提案が、NUSと設計者にとっての不安要素を大きく低減することから非常に高い関心を獲得し、本件を受注、2018年12月に完成引渡しを迎えています。
シンガポールは室温の設定が低く、冷房のエネルギー消費量が大きい傾向にありますが、本プロジェクトでは、最小限の空調と冷気を循環させるシーリングファンを組み合わせ、快適性を保つといったハイブリッド空調システムを採用しています。KaTRISでは上記の設計に対して豊富な実験・検証・評価能力で貢献し、ネットゼロエネルギーでありながら快適な環境を実現しています。また、このプロジェクトを契機にNUSと「建築と環境」分野での共同研究を行うこととなりました。
シンガポールでは2030年までに全建物の80%でのグリーンマーク取得を目標としておりますが、SDE4では、ZEBの達成に加え、グリーンマークの最高ランクであるプラチナ評価を取得しました。

シンガポール国立大学
- 工事概要
-
- 発注者: シンガポール国立大学
- 設計者: Surbana Jurong, Serie+Multiply Consultants
- 施工者: カジマ・オーバーシーズ・アジア(シンガポール)
- 場所: シンガポール シンガポール国立大学ケントリッジキャンパス
- 建物概要:
教育施設、RC造 6F
延床12,270m2 - 工期: 2016年10月~2018年12月
動画:SDE4, net zero energy building
インランド・エンパイア広域
上下水道公社(IEUA)
水質研究施設新築 及び
チラー施設拡張プロジェクト(U.S.A.)
インランド・エンパイア広域上下水道公社(IEUA)は、カリフォルニア州の上下水道公社であり、廃水の再利用や、廃棄物からの堆肥生成、再生エネルギー事業等を手掛けています。
IEUAの既存の研究施設が手狭になったこと、既存施設は設備更新や耐震補強の必要があることから、本プロジェクトが発足され、Kajima U.S.A.傘下のThe Austin Company(TAC)が対応しました。TACは、既存施設の隣接地について、マスタープランの作成、約1,600m2の新研究施設の建築設計及びエンジニアリング設計を担当しました。
新たな研究施設は、有機質・無機質・水質の研究室や事務所、サポートスペース等が配置され、将来の需要の変化に応じてレイアウト変更が容易となるよう、設計上工夫しました。また、各個室はサンプル確認が円滑に進むよう、ワークフローを意識した配置としています。
本施設は、IEUAが有する5つのリサイクル施設、地下水涵養プロジェクトや、国家汚染物質排出防止システム([NPDES]連邦水質浄化法とペンシルバニア州水質浄化法によって確立された水質改善を目的としたシステム)に沿った汚染排水のモニタリングを行っています。また、工業廃水や生活排水のモニタリング事業への水質分析のサポートも行っています。本プロジェクトは、LEEDのGold認証を取得しました。

IEUA 新水質研究施設

内装
- 工事概要
-
- 発注者: インランド・エンパイア広域上下水道公社
- 設計者: The Austin Company(基本計画、建築設計、エンジニアリング設計)
- 施工者: Kemp Bros. Construction, Inc.
- 場所: カリフォルニア州チノ
- 建物概要: 研究所・チラー施設
- 竣工年: 2019年
Kajima U.S.A.傘下のKajima Building & Design Groupの取組みはこちらをご覧ください。
BREEAMエクセレント取得(ポーランド)
カジマ・ポーランドでは、LEEDやBREEAMの認証を多くのプロジェクトで取得しておりますが、2021年8月に完成した、パナトニ・シフィエボジンフルフィルメントセンター新築工事において、BREEAM産業施設部門のエクセレントレベルを取得しました。カジマ・ポーランドがBREEAMのエクセレントレベルを取得したのは初めてのことです。
本工事は、アメリカ資本の大手商業系デベロッパーパナトニ・デベロップメントとカジマヨーロッパ開発部門が発注主となり、インターネット販売最大手がテナントとして入居する配送センターです。
カジマ・ポーランドは、同テナント工事として2018年ボレスワビエツ配送センター、2019年ウッチ フルフィルメントセンターの施工実績があり、本件は3件目で、延床面積20万m2はポーランド最大級の規模となります。また、大規模に加え建屋全域が4階建となることも特徴的であり、大規模・短工期・複層構造への挑戦となりましたが、順調に工事を進め、お客様へ引渡しを完了しております。

BREEAM認定書

パナトニ・シフィエボジンフルフィルメントセンター
- 工事概要
-
- 発注者: カジマ・パナトニデベロップメントJV
- 設計者: BP; Client(Ferma Kresek), ED; KAJ(CiG)
- 施工者: カジマ・ポーランド
- 場所: ポーランド国シフィエボジン
- 建物概要:
物流施設、延床約200,000m2
地上4階、地下1階 - 工期: 2020年6月~2021年8月
コロナ禍での挑戦(中国)
リコーの中国広東省東莞市の新工場は、CO2の徹底的な削減に取り組むリコーグループの環境最先端工場として計画され、鹿島の中国現地法人、鹿島建設(中国)有限公司が設計施工を担当しました。工場では、太陽光発電設備や置換換気・空調システム、自然採光・自然換気などを積極的に採用しています。
工事では施工中に新型コロナウィルスが猛威を振るい、現場運営への影響が大きかったものの、ドローン等の最新ITシステムを駆使し、遠隔現場管理を実現、無事故無災害を達成しました。本計画では、中国環境認証最高位[緑色建築3つ星]の設計認証及び、LEEDのGold認証を取得しています。

リコー東莞工場

プロジェクトメンバー

緑色建築設計証書
- 工事概要
-
- 発注者: Ricoh Manufacturing (China) Ltd.
- 設計者: 鹿島建設(中国)有限公司
- 施工者: 鹿島建設(中国)有限公司
- 場所: 中国広東省東莞市
- 建物概要:
複合機・プリンター製造工場、
延床約96,000m2 - 工期: 2018年8月~2020年3月
第2章
脱炭素社会を実現する
プロジェクトへの参画
地球温暖化の大きな原因となっている温室効果ガスの排出を抑えるため、再生可能エネルギー、自然エネルギー、循環可能な資源への注目が益々高まっています。様々な企業が世界を舞台に取組みを進める中、鹿島も施工面にてプロジェクトに参画し、脱炭素社会の実現をサポートしています。
Project 1
シーメンス・ガメサ洋上風力発電
ナセル工場(台湾)
シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーは、40年間にわたり再生可能エネルギーのタービンを生産しており、世界で最も急速に成長している電源の1つである洋上風力タービンの世界的なリーダーカンパニーです。台湾にて同社アジア初となる洋上風力発電機ナセルの組立工場のプロジェクトが立ち上がり、鹿島の台湾の現地法人、中鹿營造股份有限公司は施工を担当しました。
ナセルとは、羽部分であるブレードから伝わる回転数を増速機で増やし、その回転を発電機で電気に変換する洋上風力の非常に重要なパーツです。本工場では約長さ16m、高さ9mのナセルを製造する拠点となります。
敷地は台中港埋立地にあるため、地盤改良として砂杭が採用されました。また、工場内部の天井クレーンを支えるため、東西両側に複層トラス構造システムが設計されています。工事は沿岸部のため北東モンスーンがもたらす塩と砂埃による影響に悩まされましたが、都度対策を徹底し、無事故無災害にてお客様へ引渡しました。

工場外観

ナセル部分

工事現場関係者
- 工事概要
-
- 発注者: シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー
- 設計者: 莊學能建築師事務所(AECOM)
- 施工者: 中鹿營造股份有限公司
- 場所: 台湾台中市龍井區(台中港工業区)
- 建物概要: (工場棟、事務棟)S造 地上1階 (警備室)RC造 地上2階
- 延床面積: 3,790m2
- 工期: 2020年2月~2021年5月
Project 2
水素液化・積荷基地プロジェクト
(オーストラリア)
日本政府と豪州政府、豪州ビクトリア州政府が支援を行う、液化水素国際間サプライチェーン構築実証試験とは、オーストラリアの大手エネルギー会社AGLエナジーと、川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅、住友商事6 社が手掛ける、世界で初めて褐炭から水素を製造し日本へ輸送するというプロジェクトです。実現すれば安価な水素が安定的に調達可能となり、脱炭素社会の実現に向けて、世界中から注目を浴びています。鹿島のオーストラリア現地法人カジマ・オーストラリア傘下のアイコン社は本プロジェクトにて、液化・貯蔵・出荷のための施設となる水素液化・積荷基地の施工を担当しました。
実証試験用の水素液化・積荷基地は、商用プラントと同等の高い品質管理が求められます。アイコン社の水素関連施設への取組みは初めてでしたが、これまでの製薬施設、研究施設の工事で培った配管接続などの品質管理能力を活かし、発注者の協力・指導を得ながら、無事に完工することができました。
2022年2月には、ビクトリア州ラトローブバレーの褐炭から製造した水素を、本施設で-253℃まで冷やして液化し、隣接する埠頭から積荷、神戸の液化水素荷役実証ターミナルまで輸送することに成功しました。この成果と共に、今後は水素サプライチェーン構築に必要な一連の技術実証を行い、2030年頃の商用化を目指しています。

基地全景(写真提供 HESC Project Partners)

アイコン社工事現場メンバー
- 工事概要
-
- 水素液化・積荷基地建設工事
- 発注者: Hydrogen Engineering Australia(川崎重工業株式会社の子会社)
- 設計者: 川崎重工業株式会社
- 施工者: アイコン
- 場所: ビクトリア州ヘイスティングス
- 建物概要: 延床面積700m2 S/ブロック壁造 1階建
- 工期: 2019年3月〜2020年6月
第3章
再生可能エネルギー施設
開発事業(ヨーロッパ)
鹿島は海外事業にて、環境認証の取得や環境対応プロジェクトの施工面の参画だけではなく、再生可能エネルギー施設関連事業に参画することで、持続可能な社会実現へ事業者としても関わっていきます。カジマ・ヨーロッパ(KE)はポーランドにおいて、再生可能エネルギー発電施設開発の先駆的デベロッパーであるPAD-RES(パドレス)社の過半持分(約70%)を取得し、再生可能エネルギー発電施設の開発事業に参画することとしました。
ポーランドは発電の約7割を石炭火力に依存しており、同国政府はエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに最低23%にする目標を掲げています。KEは、同国の再生可能エネルギー事業において、PAD-RES社を通じて、用地契約、風力・太陽光発電施設建設の許認可取得、電力販売契約及び風力・太陽光発電施設の建設まで行った上で、電力会社や投資ファンドに施設を売却していきます。
KEは本プロジェクトの他、再生可能エネルギー事業の先進国であるイギリスにおいても、Low Carbon Alliance社と合弁会社を設立し、用地選定、土地契約、送電網接続許可及び建設許可を取得後、建設可能となった段階で投資ファンドに売却するという、同事業の初期段階に特化した取り組みを行っております。今後もKEの知見を活かしながら、ノウハウを蓄積して参ります。

PAD-RES社が手掛けた再生可能エネルギー発電施設

Chris Gill
Projects & Investments Director
英国・ポーランドの再生エネルギー事業の
プラットフォーム構築で活躍。
英国大手インフラ会社で再生エネ事業に従事。
日本での環境への取組みは
こちらをご覧ください。
About Us
- ソーシャルメディア